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第四章「遺物の力と評議会役員選挙」
第28話 決着
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サリヴェン=ベーオウルフはフルンティングの剣気を放ちながらほくそ笑んだ。予想に反して一瞬といえども自分を圧倒した遺物科の半端者はもうすぐで押し潰れるだろう。
サリヴェン=ベーオウルフは何よりも勝利を渇望する。彼の生い立ちがそうさせるのか。とにかく勝利を望む。それ以外は何もかもが気に食わない。
評議会で胡坐をかいている学科のトップの連中も、自分より弱いクラスメイトも、自身の契約遺物も、一族の大人たちも、そして自分自身も。だから、全てに抗うように貪欲に勝利を求める。
「くたばりやがれェ!」
サリヴェンは己の勝利を確信し、緑に仄暗く光る瞳をギラつかせ、最後の咆哮を上げた。これで、予期せぬ障害を完膚なきまでに打ち破った。はずだった。
「おおおおおおお!」
雄々しい雄叫びと共にギリギリまで追い詰められていた紅い剣気が再び爆発した。
双魔は瞳を紅く染めて一心不乱にティルフィングを振り、全てを凍てつかせる紅の斬撃を幾重にも繰り出す。剣を振るうごとに、双魔の黒髪が白銀に染まり、瞳が金色に、強く輝いた。
「ッぐ!オラァ!」
サリヴェンは負けじとフルンティングの剣気の勢いをさらに強めた。一瞬、両者の放つ剣気は拮抗し、衝撃波が生まれる。ビキビキという音と共に舞台の壁にひびが入る。
アイギスはアッシュの前に出ると両手から障壁を出して衝撃はを防ぐ。
「アイ……あれは」
「ええ、双魔とあの子、ティルフィングが共鳴しているわ」
双魔の黒髪は白銀に染まり切った。そして。
「シッ!」
鋭い声を合図にティルフィングから紅の奔流が放たれた。パキパキと音を立てて空気中の水分が凍てつき、辺りを紅氷の欠片が乱舞する。
「ッぐうぅううううううう!がああぁあああああああああ!」
力の拮抗は破られ剣気と毒気の濁流は為すすべなく飲み込まれた。
その瞬間、サリヴェンの脳裏には思い出したくもない記憶が呼び起こされた。
ボロボロになり、地に伏した自分の身体。離れた場所に跳ね飛ばされた木剣。
そして、冷ややかな目で自分を見下ろす老人。
『……やはり、期待するまでもなく、お前は役立たずだ』
身体は凍気に苛まれ、熱を奪われているはず。それでも、脳裡に焦げついたその記憶は炎の如く熱を放って止まない。
(クソが………クソがぁぁあああああ!)
言葉にならない咆哮を氷にその身体を封じられる中で叫んだ。
やがて、紅の奔流が収まるとその場には氷山の一角といっても差し支えないほど巨大な紅氷とその中で剣気を纏ったまま白目を剥いて気絶した氷漬けのサリヴェンが姿を現した。
「……ふう」
双魔がそれを見て一息つくと纏っていた紅の剣気が霧散する。瞳も蒼に戻り、髪も元の黒と銀の二色に戻った。
「ん……こりゃあ……やりすぎたな」
こめかみをグリグリしながらぼやく。更なる面倒の気配を感じた。
「双魔―!」
アッシュが駆け寄ってくる。
「ん、まあ……なんだ?この通りだ」
双魔は片目を瞑ってバツが悪そうに氷塊を親指で指した。
「無事でよかったけどやりすぎだよ!」
「いや、初めてだったし……久しぶりに必死だったから加減とか分からなかったんだよ」
「それにしたってやりすぎだよ!」
アッシュの剣幕に押されているとティルフィングが人間態に戻り抱き着いてきた。
「ふふん!どうだ?ソーマ?我、すごいだろう!」
よほど興奮しているのか鼻の穴が広がっている。
「ん、そうだな」
くしゃくしゃと頭を撫でてやるとくすぐったそうに身を捩る。
「で、自分でやっといてなんだがアイツは大丈夫なのか?」
氷漬けのサリヴェンに視線を送る。
「あまり見たことはない状況だけれど……剣気を纏ったままみたいだし、命に別状はないと思うわ。それにしても……フフッ、双魔、貴方とんでもない遺物と契約したわね」
アイギスが可笑しそうに笑った。
「アイ!笑い事じゃないよ!ほら、双魔は顔出して!」
そういうとアッシュはポケットからハンカチを取り出した。双魔が視線で拒否するも「いいから!」と有無を言わせぬ雰囲気だったので折れて屈むとアッシュは埃まみれの双魔の顔をゴシゴシと拭って、どこから取り出したのか頬の傷に絆創膏を張り付けた。
「もう学園長には報告してあるからね。ハシーシュ先生が来てくれるって。ベーオウルフは学園長がどうにかしてくれるらしいから、先生が来るまで待機だよ」
「ん、分かった」
しばらく、巨大な氷塊をボーっと眺めているとハシーシュと一人の男性、隣のクラスの担当講師がやってきた。二人は穴だらけになった舞台やひび割れた壁、そして巨大な紅色の氷塊を見るといくつかの言葉を交わす。そして、ハシーシュだけが双魔たちの方にやってくる。
いつものような身体を引き摺るような動きではなくスタスタと素早く歩いてきた。
「…………はあ」
そして、ため息を一つつくとポケットから煙草を出して咥える。
「まあ、私の部屋に来い」
それだけ言うと踵を返してスタスタと歩き始める。双魔とアッシュは顔を合わせて苦笑するとハシーシュの後を追った。
サリヴェン=ベーオウルフは何よりも勝利を渇望する。彼の生い立ちがそうさせるのか。とにかく勝利を望む。それ以外は何もかもが気に食わない。
評議会で胡坐をかいている学科のトップの連中も、自分より弱いクラスメイトも、自身の契約遺物も、一族の大人たちも、そして自分自身も。だから、全てに抗うように貪欲に勝利を求める。
「くたばりやがれェ!」
サリヴェンは己の勝利を確信し、緑に仄暗く光る瞳をギラつかせ、最後の咆哮を上げた。これで、予期せぬ障害を完膚なきまでに打ち破った。はずだった。
「おおおおおおお!」
雄々しい雄叫びと共にギリギリまで追い詰められていた紅い剣気が再び爆発した。
双魔は瞳を紅く染めて一心不乱にティルフィングを振り、全てを凍てつかせる紅の斬撃を幾重にも繰り出す。剣を振るうごとに、双魔の黒髪が白銀に染まり、瞳が金色に、強く輝いた。
「ッぐ!オラァ!」
サリヴェンは負けじとフルンティングの剣気の勢いをさらに強めた。一瞬、両者の放つ剣気は拮抗し、衝撃波が生まれる。ビキビキという音と共に舞台の壁にひびが入る。
アイギスはアッシュの前に出ると両手から障壁を出して衝撃はを防ぐ。
「アイ……あれは」
「ええ、双魔とあの子、ティルフィングが共鳴しているわ」
双魔の黒髪は白銀に染まり切った。そして。
「シッ!」
鋭い声を合図にティルフィングから紅の奔流が放たれた。パキパキと音を立てて空気中の水分が凍てつき、辺りを紅氷の欠片が乱舞する。
「ッぐうぅううううううう!がああぁあああああああああ!」
力の拮抗は破られ剣気と毒気の濁流は為すすべなく飲み込まれた。
その瞬間、サリヴェンの脳裏には思い出したくもない記憶が呼び起こされた。
ボロボロになり、地に伏した自分の身体。離れた場所に跳ね飛ばされた木剣。
そして、冷ややかな目で自分を見下ろす老人。
『……やはり、期待するまでもなく、お前は役立たずだ』
身体は凍気に苛まれ、熱を奪われているはず。それでも、脳裡に焦げついたその記憶は炎の如く熱を放って止まない。
(クソが………クソがぁぁあああああ!)
言葉にならない咆哮を氷にその身体を封じられる中で叫んだ。
やがて、紅の奔流が収まるとその場には氷山の一角といっても差し支えないほど巨大な紅氷とその中で剣気を纏ったまま白目を剥いて気絶した氷漬けのサリヴェンが姿を現した。
「……ふう」
双魔がそれを見て一息つくと纏っていた紅の剣気が霧散する。瞳も蒼に戻り、髪も元の黒と銀の二色に戻った。
「ん……こりゃあ……やりすぎたな」
こめかみをグリグリしながらぼやく。更なる面倒の気配を感じた。
「双魔―!」
アッシュが駆け寄ってくる。
「ん、まあ……なんだ?この通りだ」
双魔は片目を瞑ってバツが悪そうに氷塊を親指で指した。
「無事でよかったけどやりすぎだよ!」
「いや、初めてだったし……久しぶりに必死だったから加減とか分からなかったんだよ」
「それにしたってやりすぎだよ!」
アッシュの剣幕に押されているとティルフィングが人間態に戻り抱き着いてきた。
「ふふん!どうだ?ソーマ?我、すごいだろう!」
よほど興奮しているのか鼻の穴が広がっている。
「ん、そうだな」
くしゃくしゃと頭を撫でてやるとくすぐったそうに身を捩る。
「で、自分でやっといてなんだがアイツは大丈夫なのか?」
氷漬けのサリヴェンに視線を送る。
「あまり見たことはない状況だけれど……剣気を纏ったままみたいだし、命に別状はないと思うわ。それにしても……フフッ、双魔、貴方とんでもない遺物と契約したわね」
アイギスが可笑しそうに笑った。
「アイ!笑い事じゃないよ!ほら、双魔は顔出して!」
そういうとアッシュはポケットからハンカチを取り出した。双魔が視線で拒否するも「いいから!」と有無を言わせぬ雰囲気だったので折れて屈むとアッシュは埃まみれの双魔の顔をゴシゴシと拭って、どこから取り出したのか頬の傷に絆創膏を張り付けた。
「もう学園長には報告してあるからね。ハシーシュ先生が来てくれるって。ベーオウルフは学園長がどうにかしてくれるらしいから、先生が来るまで待機だよ」
「ん、分かった」
しばらく、巨大な氷塊をボーっと眺めているとハシーシュと一人の男性、隣のクラスの担当講師がやってきた。二人は穴だらけになった舞台やひび割れた壁、そして巨大な紅色の氷塊を見るといくつかの言葉を交わす。そして、ハシーシュだけが双魔たちの方にやってくる。
いつものような身体を引き摺るような動きではなくスタスタと素早く歩いてきた。
「…………はあ」
そして、ため息を一つつくとポケットから煙草を出して咥える。
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