魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

文字の大きさ
42 / 268
第五章「選挙開幕」

第42話 虹輝く偉丈夫

しおりを挟む
 アメリアのアナウンスを合図に第四ブロックの候補者たちが控え室からぞろぞろと出てくる。その様は傍から見ても異様な雰囲気だった。

 「…………おい、アッシュ」
 「うん……言いたいことは分かるよ」

 双魔は冷めた目で候補者たちを見つめ、アッシュも苦笑いする他ないようだ。他のギャラリーたちも概ねアッシュと同じ反応である。

 『ほえー、第四ブロックの候補者のみなさんは素晴らしい筋肉をしている人ばっかりっスねー!』

 アメリアがマイク越しに漏らした感想に同意した観客の生徒たちがうんうんと頷く。

 そうなのだ。第四ブロックの候補者たちの大半が何故か筋骨隆々とした大男ばかりなのだ。

 パツパツになった制服は大胸筋に押し上げられてボタンが悲鳴を上げている。それぞれの手には槌や斧、大剣といった如何にもな遺物が握られている。

 「おおー!ムキムキのやつばかりではないか!」

 ティルフィングもアメリアと感性が近いのか喜んでいる。

 アメリアの言葉に気をよくしたのか何人かはポージングを披露している。

 『おっと、舞台の修復が終わったようっスね。候補者のみなさんは舞台の上にどうぞっス!』

 総勢四十人を超える偉丈夫たちとその他の候補者たちが舞台の上に上がりそれぞれが構える。数人混じっている女子生徒たちは可哀想なことにプルプル震えている。

 (……第四ブロックじゃなくてよかった……これだけはクジ運に感謝だな)

 双魔はそう思わずにはいられなかった。何というか空気が濃い気がする。

 『では、第四ブロック…………始め!』

 アメリアの声で舞台の上の候補者たちは一斉に動き始める。まず初めに数少ない女子生徒たちが何かをすることもなく軽い当身を喰らわされて気絶。脱落していった。

 「…………みんな、紳士だね」
 「ん」

 アッシュの言葉通り。どうやら肉体を鍛え上げている奴に悪い奴はいないようだ。

 「「「ぎゃあああああー!」」」

 次に残っていた線の細い男子生徒が場外に為す術なく吹き飛ばされた。皆、一様に気絶して救護班に運ばれていった。

 そして、舞台の上に残るのが筋肉男たちのみになったその瞬間から修羅場が始まった。

 「フンッ!」
 「フンガァッ!」
 「ッシャ!オラァ!」

 槌と斧、剣、そして鍛えに抜かれた肉体と肉体が激しくぶつかり合う。交錯する剣気の余波で舞台にひびが入り徐々に壊れていく。

 複数人で戦うことなく皆一様に一対一の戦いを貫いている。その中で、一人他者を圧倒する男がいた。

 その二メートルを越える熊のような偉丈夫は虹色に輝く刃の大剣を背負い素手でライバルたちを蹴散らしている。

 「シッ!」
 「「グホッ!」」

 放たれた異常なほどに重い一撃で筋肉自慢が二人吹き飛んだ。

 「フッ!」

 今度は蹴り一撃で四人が吹っ飛んだ。

 「く、クソ!卑怯なのは好かないがここは協力するぞ!」
 「「「おう!」」」

 脅威を察したのか四人の候補者が一斉に攻撃した。流石にひとたまりもないかと観ている者たちは思った。しかし、攻撃を喰らったはずの男、フェルゼン=マック=ロイは眼鏡のレンズを輝かせて立っていた。

 振り下ろされた剣や斧はなんと片手で受け止められていた。そして、不思議なことに槌はフェルゼンの手前で地面にめり込んでいる。

 「ぐっ……動かん!」
 「な、何なんだこれは!」
 「くそっ!動け!……動けっ!」

 フェルゼンに攻撃を仕掛けた候補者たちは何とか逃れようとジタバタするが全く動くことはできない。彼らの様子を見てフェルゼンは一笑した。

 「フッ!俺の契約遺物の能力を知らずにかかってくるとは……愚かなり!」
 「「「ぐあああああああ!」」」

 そして五人をまたもや場外へと放り投げた。

 その様子にギャラリーの熱はかなり高まった。

 『フェルゼン=マック=ロイさん!まさに、まさに剛力無双!次々とライバルを投げ飛ばしていくっス!』

 放送席では堪え切れなくなったのかアメリアがマイクを手に立ち上がっている。

 「………あれはまさか重力を操っているのか?」
 「うん、カラドボルグさんは重力を操る能力を持っているんだ」

 双魔の疑問にアッシュが答える。なるほど、フェルゼンを注視すると身体全体が虹色の薄い膜のような剣気に覆われている。あれのお陰で怪力にさらに強化を加えたり、相手の攻撃を無力化しているのだろう。

 「では、そろそろ決めさせてもらおうか!」

 舞台に残る候補者たちがある程度減ったと判断したのだろう。フェルゼンは背負ったままだったカラドボルグに手を掛けた。

 その様子を見て残っていた候補者たちは身構える。

 フェルゼンはカラドボルグの柄を両手で握ると雄叫びと共に思いきり横に薙いだ。

 「オオオオオオオオオオオ!”虹輝く斥力セブンカラーズグラビティ・波濤《ウェーブ》”!!」

 カラドボルグから放たれた七色に輝く剣気の波は舞台上の候補者を吹き飛ばした。全員が声を上げる暇もなく場外に弾き飛ばされる。

 周りを見回し、立っているのが自分だけになったことを確認してからフェルゼンは握り拳を作って堂々と頭上に掲げた。

 『第四ブロックの覇者がここに決まったーーーーーー!圧倒的実力ですべてを吹き飛ばしたのは!三年生のフェルゼン=マック=ロイさんだああああー!』

 わああああああああああああああああああ!

 巻き起こった歓声を背にフェルゼンは悠々と舞台を去っていった。

 「…………さて」

 双魔は気だるげに立ち上がった。

 「ついに双魔の出番だね!僕と一緒に評議会役員をやるんだからね!」

 アッシュが鼻息を荒くする。それを見てアイギスが微笑んだ。

 「双魔がいると楽しそうね。私も応援してるわ。ティルフィング、必ず双魔を勝たせるのよ?」

 「むぐむぐむぐ……ごくん……うむ!我に任せておけ!」

 ティルフィングは口の中に詰め込んでいた最後のマドレーヌを飲み込むと立ち上がった。

 「んじゃあ、行くか。ティルフィング」
 「うむ!」

 双魔はティルフィングの手を引いて控室へと向かった。

 「頑張ってねー!」

 アッシュの声が階段を下りるまで後ろから聞こえていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...