魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第一部『紅と黒の少女』エピローグ

第56話 目が覚めると……

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 謎の力によって当人以外のほとんどが知らない死闘を制した一週間後。双魔は学園長室で机の前に立っていた。

 目の前には椅子に腰掛けて好々爺然として笑顔を浮かべているヴォーダンと傍に控えるグングニールが立っている。

 そして、横にはアッシュ、フェルゼン、シャーロットの三人が姿勢を正して立っている。

 「…………」

 居心地の悪さを感じてか双魔は無意識に片目を閉じてこめかみをぐりぐりした。

 この現状は双魔にとってかなり不本意なものなので仕方がないと言えば仕方がない。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 舞台の上で意識を失ってから双魔が目を覚ましたのは実に五日後のことだった。

 「…………ん」

 ゆっくりと目を開くと霞んだ視界には見慣れない天井が映った。その視界の端には見慣れた小袖の袖が揺れている。

 「…………左文……か?」
 「っ!?坊ちゃま!お目覚めですか!?」

 段々ぼやけた視界が鮮明になっていく。左文の白い顔が目の前にあった。

 「ん………………んん…………」

 身体に力を込めて起き上がる。身体中に気怠さが充満していてユラユラと揺れてしまうが何とか上半身を起こした。ここは、どうやら錬金技術科棟の地下にある病室のようだ。

 「っ!?おっと!」

 目覚めた双魔を見て感極まったのか目に涙を浮かべた左文がいきなり抱き着いてきた。

 「坊ちゃま!よくぞ……よくぞご無事で!もう五日も目を覚まさないので……もしものことがあったらと!」

 (五日か……結構長く眠ってたんだな)

 そんなことを考えていると、ふわりと、甘い香りが双魔の鼻腔をくすぐる。優しく抱きしめられる久方振りの感触に安心感が湧いてくる。

 「ん……心配かけたな」

 左文の背中に腕を回して撫でてやる。左文はそのまましばらく泣いていた。

 「……申し訳ございません、お恥ずかしいところを……ズズッ!」

 左文は泣き止むと双魔から身体を離した。目は真っ赤になって、鼻水が少し垂れている。

 「……ほれ」

 傍に置いてあったティッシュ箱から何枚かティッシュを取って左文に差し出す。

 「……ありがとうございます」

 左文はティッシュを受け取ると盛大に鼻をかんだ。そして深呼吸をして興奮を収めている。

 「落ち着いたか?」
 「はい……お恥ずかしいところを……」
 「んにゃ、それだけ心配かけたってことだろ?礼を言うのは俺の方だ」
 「坊ちゃま……」
 「まあ、話はあとでゆっくりと聞く。それより……入ってきたらどうだ?」

 双魔は先ほどから廊下でソワソワと落ち着かない空気を出している複数の気配に声を掛けた。

 ガラッ!大きな音を立てて引戸が開くと凄まじい速さで黒い小さな影が双魔の胸元に飛び込んできた。

 「ソーマ!」
 「グフッ!」
 「ぼ、坊ちゃま!?」

 ティルフィングが朝起こしにくるときのように抱き着いてきた。が、如何せん病み上がりの双魔にはきつかった。嬉しさを感じながらも悶えてしまう。

 「双魔!よかった!元気……そう……だね……アハハ」

 続いて入ってきたアッシュがその光景を見て苦笑いを浮かべた。

 さらにその後ろには魔術科の三人組とイサベルが立っていた。

 「ご無事なようでなによりですなー」
 「伏見くん!心配したッスよ!」
 「思ったより元気そうね」

 三人はそれぞれいつも通り声を掛けてくる。

 「伏見君、貴方は存外人騒がせですね…………心配したんですから」

 イサベルもいつも通りだったが尻すぼみで最後の方は何を言っているのか聞こえなかった。

 「…………梓織しおりどの?」
 「はー……本当に素直になれない子よね、そこが良さなのかもしれないけれど」

 梓織は口元に手を当てて優しいような、意地悪なような笑みを浮かべた。

 「お嬢、可愛いっス!」

 三人娘はキャイキャイとはしゃいでいる。

 「これ……作ったのでよかったらどうぞ」

 イサベルは手に持っていた籠を左文に差し出した。

 「まあ!ありがとうございます!後で坊ちゃまに食べていただきますね!」
 「ん、悪いな」

 礼を言われたイサベルはなんだかしどろもどろしていた。顔も少し赤い気がする。

 「そ、それでは用は済んだので私はこれで失礼します!」

 そう言うや否やイサベルは引き留める間もなく足早に病室から出ていってしまった。

 「まあ、頑張った方かしら?」
 「お嬢―!待ってくださいっスー!」
 「お騒がせしましたーであります。また授業でお会いしましょー」

 イサベルを追うように三人も出ていった。その場にはアッシュだけが残った。
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