魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第六章「東方の英雄」

第119話 彼方の朋友

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 これは、自分の記憶なのだろうか。おそらく、ここにはない筈の自分の記憶なのだろう。

 目の前には数千の軍勢、自分の背後にも同じく数千の軍勢が控えている。

 空はどこまでも晴れ渡り、陽の下に、一羽の猛禽の甲高い声が響き渡る。

 『首長、出てきました!奴です!奴が…………”鬼神”です!』

 傍らに控えた同胞が耳打ちをしてくる。

 『あれが…………』

 目の前の、敵の軍勢の中央が割れて一本の道を作り出す。

 そこを、一人の男が歩いてくる。遠目に見ても、目を瞠るほどの偉丈夫。

 錦の服の上にいかにも堅牢な鎧を身に纏う。腰に佩くは簡素ながら実に凛とした雰囲気を纏う一振りの刀。あれが、同胞たちから”鬼神”と畏れられる男で間違いない。

 『…………スウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーー…………』

 偉丈夫が軍勢の先頭に立つ。そして、上半身が反り、胸が膨らむほど大きく息を吸う。

 『吾が名はぁ!坂上ぇ!田村ぁ!麻呂ぉ!!阿弖流為ぃ殿とぉ!お見受けするぅ!尋常にぃ!勝負いたそう!!……そぅ…………ぅ…………ぅ…………』

 吸った空気を全て出し切るほどの大音声(だいおんじょう)が戦場に鳴り響く。

 体躯長身、屈強、顔中に伸びきった髭、まるで熊のような男、否、人間のような熊だ、と阿弖流為はそう思った。

 それが、後に自分の生涯の好敵手であり、朋友となる偉大なる男。大将軍、坂上田村麻呂との出会いだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 場面はすぐに移り変わる。

 今度は目の前に田村麻呂が立っている。その身体は満身創痍だ。

 そして、自分も同じく満身創痍。されど、自分は身動きのとれぬように縛られ、地面に転がされていた。

 顔を上に最後まで上げることが出来ず、田村麻呂の熊のような顔を見上げることは出来ない。

 見えるのは、田村麻呂の周りに立っている敵の将や参謀たちの侮蔑や敵意を露にした表情だけだ。

 『将軍!この場で首を刎ねるべきです!』
 『そうです!多くの同胞がこの男のせいで命を落としました!』

 馬鹿をいうな。自分の中に怒りの炎が点る。

 そもそも先に仕掛けてきたのは奴らの方だ。同胞たちの土地に無断で踏み込み、ただ従えと高圧的に言い、女子供や老人を一方的に殺した。

 自分も争いを好むわけではなかったが、乞われてやむなく立ち上がった。

 そして、敗れてこの様だ。自分を見下ろすこいつらが、力及ばなかった自分が憎い。

 はらわたが煮えくり返ったせいか止まりかけていた血が傷口から溢れ出す。

 『しょ、将軍?何を!?』

 ふと、身体に影が掛かった。そして、次の瞬間、ゆっくりと丁寧に身体を起こされる。

 『…………?』

 自分を見下ろしていた将たちの顔が困惑と恐怖に染まる。その様を見て溜飲が少しだけ下がる。だが、目の前にいたはずの田村麻呂はいない。

 (…………何処に?)

 そう思っていると、自分を起こしたものが縄の結び目に手を掛けた感触がある。

 寸刻のうちに縄は解かれた。

 『……………………』

 傷を庇いながら立ち上がる。それを見て腰を抜かす者や後ずさりする者がいる。腰の刀に手を掛ける者もいたが一睨みしてやると縮みあがって腰を抜かす。実に滑稽だ。

 自分を戒めから解き放った者の顔を見ようと振り返る。

 『…………な!?』

 阿弖流為は絶句した。自分を縛る縄を解いた者、その者こそ、田村麻呂だった。

 『な、なぜ?』

 困惑する阿弖流為を見て、田村麻呂はニカッと満面の笑みを浮かべた。

 『阿弖流為、其方ほどの大丈夫だいじょうふを殺すのは惜しい!盃を酌み交わそう!』

 実に楽しそうに田村麻呂はそう言った。この時から二人は無二の友となった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 また場面が切り替わる。

 今度は田村麻呂とくつわを並べて道を行くところだ。

 田村麻呂は彼の仕える王のために自分を京に連行せねばならない、されど京に行けば其方は処刑されるだろう。それは実に忍びないのだ。と、泥酔した時に漏らした。

 田村麻呂は降伏した自分たちにとてもよくしてくれた。

 彼の部下が蝦夷の部族に対して盗みや暴行を働いたときは問答無用で下手人を処刑し、頭を地に打ちつけて謝ってくれたほどに。

 阿弖流為はすっかり意気投合した良き友のために、京へと赴くことにした。

 『陛下に奏上し、其方のことは必ず助けて見せる!』

 田村麻呂は熱意の籠った言葉と真剣な眼差しで約束してくれた。

 道中、友と共に見たことないものや食べたことのないもの、聞いたことのない音色などを楽しみつつ馬を進めた。

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