魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第一章「各々の悩み」

第139話 二枚の封筒

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 「はいはい、分かったわ…………玻璃も最近、すこーしうるさなってきて…………ああ、こっち来たの何でか言うたらね?」

 鏡華はムスッとしながらも滔々と事情を話しはじめた。

 「まあ、ブリタニアに行きたいとはずっと言ってたんよ?知ってる思うけど、閻魔宮での仕事も覚えなあかんから、普通の学園の方は留年してしもてるし」

 鏡華は日本の冥界を司る閻魔王の孫だ。通常の遺物使いが学ぶことの他に、身につけなければならないことも多いし、むしろそちらの方が優先度が高いと言ってもよい。

 日本の皇立魔導学園に在籍していても滅多に登校できていないらしい。

 「それなら、尚更ブリタニアになんて来てる場合じゃないだろ?」

 話を聞く限りどうして鏡華がこちらに来たのかが分からず、双魔は困惑の表情を浮かべた。

 それを見た鏡華は満面の笑みを浮かべ、自信満々に言いきった。

 「安心し、おじい様に教わることは粗方やけど全部教わってきたから」
 「は?」

 双魔は間抜けな顔で真偽を確かめようと浄玻璃鏡の方を向いた。

 鏡華が教わることと言えば死者の裁判の流れと刑場の把握、そして膨大な数の判例だ。俄かには信じられない。

 「…………」

 しかし、浄玻璃鏡は無言でこくりと頷くだけだ。

 「…………本当に?」
 「うん、もちろん!これも愛の力やね!」

 鏡華は頬に手を当てて身体をくねらせている。その様子を見て、いつも無表情な浄玻璃鏡が少し困ったような顔をした。

 「それを……前提に…………しても…………大王は……反対……した……のだが」

 浄玻璃鏡はゆっくりと鏡華がブリタニアに留学することになった経緯を語りはじめた。

 浄玻璃鏡が独特なテンポで語った内容を要約すると以下の通りだ。

 鏡華は自分でも言っていた通り、ブリタニアへの留学を以前から希望していたらしい。

 しかし、閻魔王は己の後を継ぐ者としての修行を理由に断固として認めなかった。と言ってもそれは半分建前で、可愛い孫を自分の手元に置いておきたかったらしい。

 が、閻魔王の目論見は外れてしまった。

 鏡華の才気は凄まじく、一つ教えれば十覚えてしまい、あっという間に教えることがなくなってしまったのだ。

 あとは経験を積むだけだが、まだ齢二十にも満たない少女には荷が重い。

 これを隙と判断した鏡華はもう片方の祖父であり、閻魔王の補佐官をしている野相公や浄玻璃鏡、その他閻魔宮で働く役人たちを抱き込んで閻魔王に自分の留学を認めるよう署名を叩きつけたらしい。

 錚々そうそうたる重鎮たちの名の羅列に流石の閻魔王も唸り声を上げたが、身内のこととなるとムキになる質なのか断固として認めようとしない。

 そこで、耐えかねた鏡華は切り札を出したらしいのだが…………。

 「あれは……此方の……口……からは…………言い……かねる」

 そう言って浄玻璃鏡の表情が更に渋くなる。

 「…………何をしでかしたんだ」

 ここまでの話でもかなりのものだがこれ以上があるのかと双魔の顔は少し青くなった。

 「なんてことないよ?”許してくれへんのやったら、もうおじい様とは口きかへん!おじい様なんて嫌い!”言うたら、すぐに許してくれたわ!ほほほ」

 そう言って鏡華は笑い声を上げたが、この場にいる本人とよく分かっていないティルフィング以外は唇の端をひくつかせて引いていた。

 実にえげつない。祖父の自分への愛情を盾に取るとは末恐ろしいと思わざるを得ない。

 「で、条件を一つだけ出されたんやけど、うちも全然嫌やなかったから、ブリタニアに行くことが決まったんよ」

 興奮しているのか鏡華の顔は少し赤みを帯びている。対照的に話を聞いていた双魔の顔は未だに少し青いままだ。

 「…………条件ってのは?」
 「そう、それがここに住む言うた理由。おじい様が双魔の部屋に一緒に住むなら構わへんって」
 「は?」

 話の繋がりが良く見えない。普通なら可愛い孫娘が同年代の男と同じ部屋に暮らすことを容認するとは思えない。閻魔王でなくても普通の父親でさえそうだろう。

 「それ……に……ついて…………だ……が」

 そこで再び浄玻璃鏡が補足してくれた。

 閻魔王と野相公が言うには鏡華が男と同棲していれば悪い虫も寄ってこない。また、もし、万が一、何かの間違いがあったとしても、少し時期が早まるだけでなんの問題もないからということらしい。

 容易に想像できるが、野相公が提案し、なんとか閻魔王を説得したのだろう。

 そう説明をしながら浄玻璃鏡は双魔に二通の封筒を差し出した。

 中身は鏡華の両祖父から双魔に向けて書かれたメッセージらしい。

 封筒から発せられる謎の圧力で受け取る瞬間、手が震えたのを双魔は誰にも察せられないようにするのが大変だった。

 「というわけで、今日からここでお世話になるさかい、よろしゅうな、双魔!」
 「あ、ああ…………わかった…………」

 有無を言わせぬ鏡華の笑顔を前にして、またここまで外堀を埋められていて双魔が断れるはずもない。

 「部屋は……」
 「二階の坊ちゃまの部屋の向かいの空き部屋を片付けておきました。お休みになるときはお布団で良いとのことでしたので、後は家具についてですが…………」

 双魔を待っている間に左文と色々と話を済ませていたらしい。

 最早、双魔が口出しすることはなかった。

 身体から力が抜けて背もたれに寄り掛かった。丁度、浄玻璃鏡と目が合う。

 「婿……殿…………よろしく…………頼む」

 尚も申し訳なさそうにしている浄玻璃鏡に双魔は苦笑を浮かべて「ん、いいよ」と短く答えるしかなかった。

 この日の夜は鏡華が引っ越してきた祝いということで近所のレストランで食事を摂った。

 鏡華も疲れていたのか帰宅して風呂に入った後はろくに言葉も交わさずに床につき、睡蓮のように眠りについた。

 双魔はと言うと受け取った二通の封筒の内、野相公からの方だけを空けて読んだ。

 内容は冗談に富んだものだったが、概ねは「鏡華をよろしく頼む」とのことだった。

 もう一通、閻魔王からの手紙は圧が強すぎて読む気になれず、取り敢えず机の引き出しに押し込んだ。

 そのまま、ベッドに潜り込み、机の中からの圧力に抗いながらなんとか眠りについた。

 翌日、二人で登校した時のことなど噂が一瞬で広がったらしく、面倒過ぎて思い出したくもなかった。
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