魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第一章「叡智集会」

第220話 ”魔術聖黒竜”

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 ヴィヴィアンヌとマーリンの会話。そして、ヴィヴィアンヌのフルネーム” ヴィヴィアンヌ=ウィスルト=アンブローズ=マーリン”から分かるように彼女はマーリンの子孫である。

 色好みなマーリンはそこら中で子供を作ったので現代において真偽は兎も角マーリンの血統を主張する魔術の一族は多い。

 その中で、確実にマーリンの血を受け継ぎ、群を抜いて優秀な一族が二つある。

 一つは当代まで脈々とペンドラゴン王家の宮廷魔術師を務めてきたマーリンの魔術や役職をそのまま伝えてきた本家。

 そして、もう一つがヴィヴィアンヌの一族だ。

 ヴィヴィアンヌの先祖であるヴィヴィアンこそマーリンを封じ込めた張本人である。

 マーリンが異性として好みでなかったヴィヴィアンは彼を封印することで魔の手から逃れたはずだったのだが、どういうわけかマーリンの子を身籠ってしまった。

 生まれてくる子供に罪はない。ヴィヴィアンは身籠った子を産み、大切に育てた。

 しかし、マーリンへの嫌悪と憎悪は生涯消えることはなかった。

 それから時が経ち、代替わりすること二十余代、ヴィヴィアンヌ、その恨みは引き継がれ、ヴィヴィアンの子孫は皆、血統の性質として”マーリン”という存在を忌む。

 それがヴィヴィアンヌがマーリンを嫌う根本的な原因だった。

 「……………………」

 機嫌が直らないヴィヴィアンヌはグングニルに追加で持ってこさせたワインの瓶を手酌でグラスに注ぎ、そっぽを向いてぐびぐびと飲んでいる。

 『そう言えば……』
 「…………」
 「…………」

 再び我慢が出来なくなったマーリンが口を開きかけたのでヴォーダンと晴久が睨む。

 これ以上、ヴィヴィアンヌの機嫌が悪くなっては堪らない。如何な世界に名だたる大魔術師とて男である以上女の気持ちは理解しきれない。

 『………………何でもないよ』

 二人の冷たい視線を受けたマーリンは流石に居たたまれなくなったのか大人しくなった。

 丁度その時、晴久の右側の画面には巨大な影が映った。画面はすぐに鮮明になったがそこに映ったのは人ではなく巨大な何かだった。

 よく見ると黒い鱗に包まれた蜥蜴の鼻先のように見える。が、兎に角大きい。画面いっぱいに鼻の穴が映っている。

 『少し、遅くなったか?』

 そして、その画面から重厚で厳格さを感じさせる男の声が聞こえてきた。

 『時間は遅れてないけど、鼻しか見えてないよ?ジルニトラ』
 『む?これは失念した。少し待て』

 ”ジルニトラ”マーリンにそう呼ばれた画面の向こうの巨大な何かはシュルシュルとその身を縮めていく。
やがて、画面には一頭の竜がその頭を映した。

 竜だ。黒い竜。東洋の細長い龍ではなく、西洋の竜だ。頭から首は黒く堅牢そうな鱗に覆われ、後頭部にはねじれた猛々しい二本の角が生えている。

 顎には貫録を感じさせる髭のような体毛が鍾乳石の如く生えており、額には荘厳な魔術刻印が、角の後ろには畳んだ巨大な翼が見える。

 縮んでもなお大きい理知的な青い瞳が画面越しにこちらを見つめている。

 『これでよいか?』
 『ああ、バッチリさ!』
 『そうか、それならいい』
 「黒竜殿、ご壮健ですか?」
 『ああ、多少仕事に追われているがな』
 「ここにいる者は一人を除いて皆忙しいからのう?フォッフォッフォ!」
 『それ、僕のことだろ?僕だって好きでここにいるわけじゃないんだからね!』
 「自業自得よ!クズ!」

 ここぞとばかりにマーリンを罵ったヴィヴィアンヌの方に黒竜の視線が向いた。

 『ヴィヴィアンヌか。久しいな。息災か?』
 「ええ、お陰様で。でも生憎そこのクソ爺のせいで機嫌は良くないの」

 『そうか、それはまあ、仕方あるまい』

 この”叡智ワイズマン”の魔術師たちが集まる集会に顔を出した”ジルニトラ”と呼ばれる黒竜。
彼は魔術師ではないが魔術に深く関わる存在だ。

 ジルニトラは神聖ドイツ帝国の東部のとある場所に居を構える一頭の竜だ。またの名を”魔術聖黒竜”と称し、その名の通り古くより魔術を司る神聖ドイツ帝国における非常に強大な影響力を持つ存在だ。

 あらゆる魔術の知識、そして魔術師の技量を量る確かな眼を持っており、世界神秘連盟からの依頼で魔術協会の顧問の一席を担っている。

 さらに言うとだ、世界における魔術師の序列を決めているのはジルニトラである。

 ”叡智”の魔術師ではない彼がこの場に参加したとしても何ら不思議なことはないのだ。

 「さて、そろそろ時間ですが……」

 晴久はそう言ってヴィヴィアンヌの横に浮かんでいる画面をちらりと見た。

 約束の時間になったにもかかわらず、その画面に何者かが映る様子は全くない。

 「……まあ、彼の御仁は時間におおらかですからね……もう少し待つことにしますか」

 そう言って晴久は微苦笑を浮かべた。

 ヴォーダンとジルニトラも晴久と同じように微苦笑を浮かべ、ヴィヴィアンヌは相変わらず不貞腐れたままぐびぐびとワインを飲み続ける。

 『ナハハハハハハハハ!あの仙人はまた遅刻かい!ナハハハ!』

 マーリンは何が面白いのか腹を抱えて爆笑している。

 「まあ、その内来るじゃろう。先に世間話でもはじめるとするかの」
 『ああ、異論はない』
 『そりゃあ、名案だ!じゃあ、晴久君!何か面白い話してよ!日本は遠くてあまり見る機会がないからね!』
 「私ですか…………それでは、何をお話しますかね……」

 そうして、その気になれば神々の命さえも奪えるであろう剣呑な大魔術師たちの朗らかな歓談がはじまるのだった。

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