247 / 268
第三章「たくさん食べる女の子は嫌い?」
第245話 半分諦め、半分覚悟
しおりを挟む
双魔は店の外に出るとスマートフォンの画面をタップして耳に当てた。
「もしもし?」
『もしもし、双魔?今大丈夫?』
スマートフォンからは聞き慣れた鈴の音のような声、鏡華の声が聞こえてくる。
「ああ、大丈夫だ。どうした何かあったか?」
『何かあったかって…………双魔こそ何やあったんと違うの?イサベルはんとティルフィングはんに遺物科の議長はんの契約遺物と何処か行ったって聞いたんやけど…………』
双魔は言われてみると鏡華にも左文にも連絡をしていなかったことを思い出した。どうやら要らぬ心配をかけてしまったようだ。
「ん、悪いな……ちょっと立て込んでな」
『そ……しっかり連絡してくれへんとうちもティルフィングはんも左文はんも心配するんやからな?』
「ああ、次から気をつけるよ……」
『ほほほ、それならええわ。それで?もう帰ってくるん?お夕飯は?』
またまた鏡華に言われて気づいたが外は真っ暗だ。それにコートを羽織ってこなかったのでかなり寒い。
「ん、その遺物科の議長と飯を食うことになってな……夕飯は用意しなくても大丈夫だ……ごめんな」
『ううん、そんなら仕方ないよ。いつも話してる店?』
よく”Anna”についての話をするのだが鏡華はまだ連れてきたことが一度もなかった。
「ああ……今度、鏡華も連れてくよ」
『うん、楽しみにしてるわ……それじゃあ、気いつけて帰ってくるんよ?』
「ん……鏡華」
『……なあに?』
通話を切ろうとした鏡華を双魔は引き留めた。表情を見えないが長年の付き合いだ。鏡華は双魔が何かを決心したことを声で察した。その上で柔らかい声で双魔の言葉を待った。
「……帰ったら少し話したいことがある」
『そ、分かった。そしたら待ってるわ、しつこいようやけど、気いつけてな?』
「ああ、それじゃあ、また後でティルフィングと左文もよろしく言っといてくれ」
『うん、また後で』
通話が切れたことを知らせる無機質な音が耳を撫でたので双魔も通話を終了してスマートフォンをポケットにねじ込んだ。
「…………まあ、なるようになるか」
心なしか、鏡華の声も何かを察したような雰囲気があった。双魔も鏡華の思うところはある程度分かるのだ。
双魔は心を決め、夜空を見上げて確かに呟くと暖かい店の中に戻っていった。
ドアの鈴がカラコロとまたけたたましく鳴いた。
地上の光に当てられ控え目に空に浮かぶ細い月には一条の雲が掛かっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はむはむ…………もぐもぐもぐ…………ごくんっ……マスター、これ、おかわり」
「ああ、ピザパイだね。今、作ってもらってるから少し待ってくれ」
「うん、ありがとう」
双魔が出ていった後、ロザリンは変わらず黙々と食事を続けていた。
気のせいか食べる速度が増しているのは、今は双魔とゲイボルグの話には意識を割かず食事に集中しているからだろう。
「んっ……んっ……んっ……ぷはっ!……ふー……美味しい」
出された料理を全て平らげてしまったのでセオドアが新しく出してくれた烏龍茶を飲んで少し休憩時間だ。
「…………うん?どうしたの?」
グラスをカウンターの上に置くと同時にテシテシと軽く膝を叩かれたので下を向くとエールの白い泡を口の周りにたっぷりとつけたゲイボルグがこちらを見上げていた。
「どうだ?」
「…………どうだ、って?」
ロザリンは何を聞きたいのか判別のつかない聞き方をしてきたゲイボルグに聞き返しながらカウンターに置かれた紙ナプキンを数枚とって口元についた泡を拭き取ってやる。
「はい、ふきふきっと」
「……むぐ……悪いな。それで、双魔のことだよ、気に入ったか?」
「気に入ったか?って…………なんで?」
「カーッ!忘れたのか!スカアハにうるさく言われてただろうが!」
「…………おばばが?何だっけ?」
「…………ったく、お前ってやつは……もういいや、取り敢えず双魔はどうだ?」
「??よく分からないけど、後輩君はいい子なんじゃない?さっきも言ったけど」
露骨に呆れた表情のゲイボルグに不思議そうに首を傾げてロザリンは答えた。
「なら、しばらくアイツと一緒でも問題はないな?」
「…………私は別にいいよ?はい、おかわり」
ロザリンはセオドアに出してもらった新しい瓶からエールを注いでやる。シュワシュワとボウルが黄金と白い泡で満たされていく。
「そうか……後は双魔次第か…………頼むぜ」
ゲイボルグはふさふさとした尻尾でパタパタと床を叩くとじれったさを誤魔化すようにエールの注がれたボウルに顔を突っ込むのだった。
「もしもし?」
『もしもし、双魔?今大丈夫?』
スマートフォンからは聞き慣れた鈴の音のような声、鏡華の声が聞こえてくる。
「ああ、大丈夫だ。どうした何かあったか?」
『何かあったかって…………双魔こそ何やあったんと違うの?イサベルはんとティルフィングはんに遺物科の議長はんの契約遺物と何処か行ったって聞いたんやけど…………』
双魔は言われてみると鏡華にも左文にも連絡をしていなかったことを思い出した。どうやら要らぬ心配をかけてしまったようだ。
「ん、悪いな……ちょっと立て込んでな」
『そ……しっかり連絡してくれへんとうちもティルフィングはんも左文はんも心配するんやからな?』
「ああ、次から気をつけるよ……」
『ほほほ、それならええわ。それで?もう帰ってくるん?お夕飯は?』
またまた鏡華に言われて気づいたが外は真っ暗だ。それにコートを羽織ってこなかったのでかなり寒い。
「ん、その遺物科の議長と飯を食うことになってな……夕飯は用意しなくても大丈夫だ……ごめんな」
『ううん、そんなら仕方ないよ。いつも話してる店?』
よく”Anna”についての話をするのだが鏡華はまだ連れてきたことが一度もなかった。
「ああ……今度、鏡華も連れてくよ」
『うん、楽しみにしてるわ……それじゃあ、気いつけて帰ってくるんよ?』
「ん……鏡華」
『……なあに?』
通話を切ろうとした鏡華を双魔は引き留めた。表情を見えないが長年の付き合いだ。鏡華は双魔が何かを決心したことを声で察した。その上で柔らかい声で双魔の言葉を待った。
「……帰ったら少し話したいことがある」
『そ、分かった。そしたら待ってるわ、しつこいようやけど、気いつけてな?』
「ああ、それじゃあ、また後でティルフィングと左文もよろしく言っといてくれ」
『うん、また後で』
通話が切れたことを知らせる無機質な音が耳を撫でたので双魔も通話を終了してスマートフォンをポケットにねじ込んだ。
「…………まあ、なるようになるか」
心なしか、鏡華の声も何かを察したような雰囲気があった。双魔も鏡華の思うところはある程度分かるのだ。
双魔は心を決め、夜空を見上げて確かに呟くと暖かい店の中に戻っていった。
ドアの鈴がカラコロとまたけたたましく鳴いた。
地上の光に当てられ控え目に空に浮かぶ細い月には一条の雲が掛かっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はむはむ…………もぐもぐもぐ…………ごくんっ……マスター、これ、おかわり」
「ああ、ピザパイだね。今、作ってもらってるから少し待ってくれ」
「うん、ありがとう」
双魔が出ていった後、ロザリンは変わらず黙々と食事を続けていた。
気のせいか食べる速度が増しているのは、今は双魔とゲイボルグの話には意識を割かず食事に集中しているからだろう。
「んっ……んっ……んっ……ぷはっ!……ふー……美味しい」
出された料理を全て平らげてしまったのでセオドアが新しく出してくれた烏龍茶を飲んで少し休憩時間だ。
「…………うん?どうしたの?」
グラスをカウンターの上に置くと同時にテシテシと軽く膝を叩かれたので下を向くとエールの白い泡を口の周りにたっぷりとつけたゲイボルグがこちらを見上げていた。
「どうだ?」
「…………どうだ、って?」
ロザリンは何を聞きたいのか判別のつかない聞き方をしてきたゲイボルグに聞き返しながらカウンターに置かれた紙ナプキンを数枚とって口元についた泡を拭き取ってやる。
「はい、ふきふきっと」
「……むぐ……悪いな。それで、双魔のことだよ、気に入ったか?」
「気に入ったか?って…………なんで?」
「カーッ!忘れたのか!スカアハにうるさく言われてただろうが!」
「…………おばばが?何だっけ?」
「…………ったく、お前ってやつは……もういいや、取り敢えず双魔はどうだ?」
「??よく分からないけど、後輩君はいい子なんじゃない?さっきも言ったけど」
露骨に呆れた表情のゲイボルグに不思議そうに首を傾げてロザリンは答えた。
「なら、しばらくアイツと一緒でも問題はないな?」
「…………私は別にいいよ?はい、おかわり」
ロザリンはセオドアに出してもらった新しい瓶からエールを注いでやる。シュワシュワとボウルが黄金と白い泡で満たされていく。
「そうか……後は双魔次第か…………頼むぜ」
ゲイボルグはふさふさとした尻尾でパタパタと床を叩くとじれったさを誤魔化すようにエールの注がれたボウルに顔を突っ込むのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
霊力ゼロの陰陽師見習い
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる