魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第三章「たくさん食べる女の子は嫌い?」

第254話 食いしん坊コンビ、初対面

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 「ソーマ、ヴォーダンに会いに行くのか?」

 時計塔の魔力動エレベーターに乗ったティルフィングは手を繋いでいる双魔の顔を見上げた。

 サロンに顔を出す人間は珍しいということをアイギスに教えてもらったのでそうだと思ったのだ。

 しかし、双魔はティルフィングの顔を見て首を横に振った。その表情は少し心配げだ。

 「ソーマ?」
 「ん?ああ……ティルフィングに会いたいって人がいるんだ……まあ、知らない人に会うのは苦手なのは知ってるけど……ちょっと我慢して欲しい」
 「……うむ……ソーマがそうして欲しいなら我は構わないぞ?」
 「……ありがとさん」

 双魔は口元に優しい笑みを浮かべるといつものようにくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。

 (ソーマのためなら我は我慢する……どのような者に会うのかは怖いが……うむ、ソーマのためだ!)

 撫でられながらティルフィングは心の中でやる気十分だった。大好きな双魔のためには苦手なことだって我慢できるのだ。

 「むふふ……ソーマくすぐったいぞ!」
 「嫌いじゃないだろ?」

 チーン!

 双魔とじゃれあっているとエレベーターのベルが甲高い音を出して扉が開いた。

 「んじゃ、行くか」

 双魔に手を引かれて降り立ったのは来たことのない階だった。そのまま双魔と一緒に歩いていくと見知った緑色の影が現れた。

 「ゲイボルグではないか!」
 「ヒッヒッヒ、来たか」

 廊下の突き当りにゲイボルグが寝そべっていた。ティルフィングに気づくと身体を起して軽く尻尾を振った。

 ティルフィングはその尻尾に抱き感触を楽しむ。いつも尻尾を触らせてくれるのでゲイボルグのことは好きだ。

 「うむ!今日ももふもふだな!」
 「お褒めに預かり光栄ってな。双魔も我儘聞いてもらって悪いな?ヒッヒッヒ!」
 「ん、付き合うと言ったからにはある程度義理は果たす。それで、ロザリンさんは?」
 「ああ、今着替えてるはずだぜ。先に食堂に行ってな」
 「そうか……分かった。例のロザリンスペシャルは頼んでおいた方がいいのか?」
 「そうだな……自分で頼むだろうからいいんじゃねぇのか?」
 「ん、分かった。ティルフィング、行くぞ」
 「うむ!」

 踵を返した双魔を追ってティルフィングは再びエレベーターに乗り込んだ。今度は下に向かうようだ。降りる間際に双魔と手を繋いで隣を歩く。

 「ソーマ、ロザリンとは誰だ?」
 「ああ、ゲイボルグの契約者だ。ティルフィングに会いたいってのはその人だ」
 「ゲイボルグの……」

 そう言えばアイギスの契約者であるアッシュやカラドボルグの契約者のフェルゼンとはよく会うがゲイボルグの契約者には会ったことがなかった。

 (むう……どんな者なのか……ゲイボルグの契約者か……むむむ……)

 ゲイボルグは好ましい人物?なので恐らくロザリンも酷い性格ではないかはずだ。

 少し歩くと双魔は広い部屋へと入っていった。人はあまりいないようだが、中からは美味しそうな匂いが漂っている。

 「ここは……なんだ?」
 「ん?ああ、食堂は初めてだったか。ここは飯を食うところだ。せっかくだから何か食べるか……ティルフィング、何がいい?」
 「おお!我は甘いものがいいぞ!」
 「ん、分かった……すいません」

 双魔が声を掛けるとカウンターの奥から中年の女性が出てきた。

 「いらっしゃい、ってあら!この間のお兄さんじゃないの!今日はロザリンちゃんと一緒じゃないのかい?」
 「ロザリンさんは後から来ると思いますよ……掛け蕎麦と……パンケーキ五枚を一つ」
 「パンケーキ?あら?」

 双魔はここに来たことがあるらしくこなれた様子で注文する。それを聞いて眉をひそめた女性の視線がティルフィングに向いた。

 「っ!?」

 突然見られたのに驚いて双魔の陰に隠れる。

 「あら?妹さん?」
 「まあ、そんなもんです」
 「可愛い子ねぇ!っとそんなこと言ってる場合じゃないね!受け取り口で待っていておくれ!」
 「ティルフィング、行くぞ」

 用は済んだようで先に進む双魔にとてとてとついていく。

 料理はすぐに出来たようでトレーを受け取った双魔はティルフィングを隣に座らせた。

 「ほれ、召し上がれ」
 「おおー!これは……」

 ティルフィングの目の前には五枚重ねられたきつね色のパンケーキがさらに鎮座していた。添えられたバニラアイスと生クリーム、上からかけられたメイプルシロップが食欲をそそる。

 「うむ!いただきますだ!む?」

 ティルフィングがフォークを持ったその時だった。ティルフィングの目にはまるで山のような料理を乗せたトレーを持ってこちらに向かってく人物が映った。その隣をゲイボルグが歩いてくる。

 「ん、来たみたいだな」
 「そ、ソーマ……あれが……」
 「ああ、ゲイボルグの契約者のロザリン=デヒティネ=キュクレインさんだ」

 双魔が動いている料理の山の向こうの人物の名前を教えてくれたのとほぼ同時に、料理の山がティルフィングと双魔の向かい側の席で止まった。

 「おはよー、後輩君……そっちの子がティルフィングちゃん?」
 「おはようございます……ええ、俺の契約遺物です」
 「そっかそっか、初めまして。私はロザリン=デヒティネ=キュクレイン。ロザリンでいいよ?よろしくね?ティルフィングちゃん」

 料理の山がテーブルに置かれるとやっと草原を吹く風のような声の主が顔を現した。

 ゲイボルグと同じく緑色が目につく綺麗な女の子だった。無表情で何を考えているのかはよく分からなかったが何となく気が合いそうな感じがある。

 ぐー………………

 会ったばかりのロザリンのお腹が盛大に鳴いた。ティルフィングは驚いて目を丸くしてしまう。

 「お腹減ったね……それじゃあ、食べながらお話しようか、ティルフィングちゃん。いただきます……はむっ……むぐむぐむぐ……」

 ロザリンが食事をはじめると見る見るうちに料理の山が低くなっていく。その様子を見て今度はティルフィングの口がポカンと開いてしまった。

 そのまましばらく固まっていると不意に頭を撫でられた。

 「……ソーマ」

 双魔の方を見るとティルフィングに優しい眼差しを向けてからロザリンを見て苦笑いを浮かべていた。

 「パンケーキ、冷めるぞ。とりあえずティルフィングもおやつだ。ほれ、アイスも溶けてるぞ」
 「ヒッヒッヒ!見りゃあ分かるがお前と一緒で食いしん坊だ!仲良くしてやってくれよ!」

 ゲイボルグもロザリンの隣の椅子に飛び乗っていつものように笑い声を上げる。

 「う、うむ!……ロザリンとやらよろしく頼むぞ!」
 「うんうん……もぐもぐもぐ……ごくんっ、よろしくね」

 これが食いしん坊コンビ後に学園の飲食店からの人気と恐怖を一手に集める食いしん坊コンビの初対面であった。
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