魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第四章「新しい恋敵?の気配」

第260話 乙女二人の作戦会議

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 十分と少し後、イサベルはカフェテリアの日当たりがいい窓辺の二人席に腰掛けて、ぼんやりと外を見つめていた。

 「…………」
 「お待たせ、ささっ、食べよか!イサベルはんは評議会あるんやからささっと食べてお話しよ」

 トレーを持った鏡華がやってきて机の上に置くとイサベルの前に腰掛けた。

 トレーの上にはイサベルが頼んだ野菜とハムのサンドウィッチとコーヒー、そして、鏡華が頼んだらしきハンバーグとトマト、レタスにベーコン、チーズをバンズで挟んだ分厚いハンバーガーと緑色の飲み物が載っていた。

 「あ、ありがとうございます……鏡華さん、ハンバーガーとか食べるんですね……」

 イメージとは少し違ったメニューのセレクトに驚きを隠せなかったイサベルを見て鏡華は楽しそうに笑った。

 「ほほほ、やっぱり意外やった?うち、こういうのも好きなんよ、飲み物は抹茶ラテ。ここのカフェは留学生向けに色々あるから最近のお気に入り」
 「そうなんですか……」
 「さっ、とりあえず食べよ。お話はそれから。いただきます」
 「あっ、そうですね……いただきます」

 イサベルは胸の靄が晴れず、味もよく分からないサンドウィッチを口に運んではコーヒーで流し込んでいく。

 一方、鏡華は大口を開けてハンバーガーに齧りつくと言ったことはせずに少しずつ、美味しそうに齧っていた。

 (…………食べ方はイメージ通りね)

 鏡華のことをまた一つ知ったイサベルはいつの間にかサンドウィッチを食べ終わっていたことに気づいた。

 「ごめんな、イサベルはん……うち、食べ終わるまでもう少し掛かるさかい……よかったら先に話聴かせてくれへん?」

 まだハンバーガーを三分の一ほどしか食べ終わっていない鏡華が申し訳なさそうに言った。

 「い、いえ……私が早く食べてしまっただけですから……お言葉に甘えて……実は……」

 イサベルは時々淀みながら、終始自信なさげに、自虐的に双魔への恋しさと余計なことを考えて開放しきれない望みのことを赤裸々に話した。

 それと、最近どこか疲れが抜けきっていないような双魔に何かしてあげたいが何をしたら双魔が喜んでくれるのか分からないということも包み隠さず。

 これは相手が同じ男を思う鏡華であり、互いに認め合ったから素直に話せたことであって、もし、相手が梓織やアメリア、愛元だったならばほんの少しの意地と保身が働いてここまで素直にはなれなかっただろう。
 どんよりと暗く沈んだイサベルとは対照的に話を聞く鏡華はハンバーガーをちまちまと齧りながら、時折笑みを浮かべていた。

 「ふー……ご馳走様。イサベルはんもお話、聴かせてくれておおきに」

 丁度、鏡華の手からハンバーガーが無くなったタイミングでイサベルの八割が己に対する愚痴である話も終わった。

 「いえ……食事をしながら私のくだらない話を聞いてもらって……何だか申し訳ないです…………」
 「ほほほ、そんなことあらへんよ?イサベルはんが双魔のこと、心の底から慕ってるの、よく分かったさかい」
 「っ!それは……その、寸分も間違ってはないですけど……」

 イサベルも顔がボッと燃えるように赤くなった。

 自分の心中で双魔のことを想っているときは特に感じないが、人に指摘されると恥ずかしい。

 「そ、それで!私はどうすればいいと思いますか!?」

 恥ずかしさを誤魔化すように少し大きな声を出して身を乗り出す。

 そんなイサベルを見て、鏡華はまた楽しそうに笑った。

 「ほほほほ……イサベルはんはほんまにかあいらしい人やね!双魔から聞いてたのとは全然違うわ」
 「…………双魔君は……私のことをどんな風に言ってたんですか?」
 「聴きたい?」
 「……お願いします」
 「ほほほ、安心し。変なことは何も言ってへんかったよ?才気に溢れて、何事も卒なくこなすし、人当たりもいい。すこーし、危なっかしいところはあるけど魅力的な子やって……」
 「…………そうですか」

 (…………双魔君……そんなことあまり言わないけど……私のことそんな風に思ってたんだ……)

 双魔は優しさや気遣いは見せるがあまり口の多い方ではない。だからこそ、たまに本心を漏らされると嬉しいのだが、人伝に聞くのはまた違ったこそばゆさがあった。

 「ああ、話がずれた。何やったっけ?あ、そうそう、イサベルはんがどうしたらええかって話」
 「へっ?あっ、はい!そう、そうですね!」
 「ほほほ、大したことは言わへんけど、きっと大切なことやから覚えとき」
 「………はい」
 「イサベルはん、難しいこと考える必要はあらへんよ。ただ、イサベルはんのしたいようにするのが一番、双魔もきっとそれを望んでるとうちは思うよ?」
 「……私の……好きなようにですか?」

 イサベルは鏡華の言葉に面食らってしまった。色々と考えてしまうイサベルにとっては中々たどり着かない答えだった。

 「まあ、もっと言うと双魔は不器用やから。自分から誘ってくることなんかほとんどないんよ。せやから、こっちからどんどん攻めなあかんよ?攻められたら、流石に双魔も察してくれるさかい」
 「…………そうですね」

 思い返してみると確かに、手を繋いだ時はしっかりと握り返してくれたし、抱きついた時も優しく抱き留めてくれた。

 「……好きなように……ぜ、善処します!」

 (でも……恥ずかしいし…………うー…………)

 「ほほほ、その意気、その意気……せやけどイサベルはんには難しいかもしれへんね」
 「……鏡華さんには……敵いませんね……」

 イサベルの心中をすかさず見抜いた鏡華はおもむろにスマートフォンを取り出して、操作しはじめた。

 「せやから、今回はうちが手助けするさかい」
 「手助け……ですか?」
 「そ、手助け……あ、もしもし双魔?今大丈夫?」

 鏡華はスマートフォンを耳に当てると通話をはじめた。相手は双魔らしい。

 「うん……うん……今日なんやけど、早く帰って来れる?五時くらい……うん、最近、ご飯一緒に食べてへんから食べたいなー思うて…………うん…………うん……分かった!そしたら家で待ってるさかい……うん…………あ、そうそう、帰って来るときは正門通るようにしてな?それじゃあ…………ふう、こんなもんやね」
 「…………その、今のが手助けですか?」
 「そ、今のが手助け。まあ、うちも久々に双魔と一緒にいたかったし、ついで。今日は評議会が終わったら帰るって。イサベルはんは正門で待ち伏せ、うちは家で待ち伏せ。なかなかいい作戦やと思わない?」
 「ありがとうございます……私、頑張ります!」
 「ほほほ、頑張りや……唇までやったらええんとちゃう?」
 「唇までって……き、キスですか!?きょ、鏡華さん!」
 「ほほほ、また、赤くなった。冗談や、冗談。まあ、さっきも言うたけど、イサベルはんの好きなようにするのが一番……あら?そろそろ時間?」
 「えっ?あ、本当!鏡華さん、付き合ってくださってありがとうございました!」
 「ほほほ、気にせんといて。また、今度ゆっくりお茶でもしよ?買い物もええかもね」
 「はい!是非!失礼しますね!」

 腕時計を確認したイサベルは席を立つと慌ててカフェテリアから去っていった。

 窓際の席には鏡華一人が残る。

 「…………うちも、双魔が寝てるときにこっそりとはしたことあるけど……接吻、したことないなぁ……そろそろちゃんとさせてもらおうか?なぁんて……ふふふふ、イサベルはんの真っ直ぐさに当てられてしもたかな?ふふふふふ……」

 思わず双魔との甘い瞬間を想像してしまい、火照った顔を鏡華は窓の外を見ながら手ではたはたと扇ぐのだった。

 一方、カフェテリアを後にして魔術科の評議会室に向かうイサベルは大変なことになっていた。

 「……………………」

 考え事をしながらつかつかと足早に通路を進んでいく。

 「あ、あれガビロールさんよね…………」
 「本当だ……ひっ!…………」
 「…………何かあったのかしら……あんな顔しているなんて……」

 偶然すれ違ったクラスメイトが小さく悲鳴を上げるほどイサベルの眉間には皺が寄っていた。

 普段はクールな印象のイサベルが明らかに苛立っているのだ。怖がられるのも仕方ない。

 が、イサベルの心中は表情とは正反対に甘い甘い、ただ甘いことになっていた。

 (きっ……キスっ……あの時は感極まったのと、双魔君に気持ちを伝えるので精いっぱいだったけどキス!したのよね!私!?ああ、もう信じられない!でも……でもでも……もし、双魔君からキス……してくれたら…………)

 『……ん……まあ、その、なんだ?……イサベル、こっち向いて……目を瞑ってくれ……』
 『そ、双魔!こんなとろで……駄目っ……』
 『……嫌……か?』
 『い、嫌じゃないけど…………』

 想像の中の双魔はイサベルを優しく抱き寄せ、イサベルの顎に手をやって軽く上向きにする。

 『……イサベル……』

 (あーーー!って私ったら何考えてるのかしら!?いつの間にか評議会室に着いてるし!)

 妄想を暴走させている間に身体が勝手に動き目的地に辿り着いていたようだ。

 (と、兎に角!今は仕事に集中しなきゃ……)

 「失礼します、イサベル=イブン=ガビロール入りますっ!」

 イサベルはちらりと腕時計で時間を確認すると評議会室に入った。

 言わずもがな、本日の業務にイサベルが集中できるはずはなかった。
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