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第1弾 黄色いリボン
Old soldiers never die, they only fade away. (老兵は死なず, ただ消え去るのみ)
しおりを挟むピンポンパンポン♪
スピーカーからアナウンスが流れた。
『――本日のウェスタン・ショウは雨天のため中止になりました』
「あ~~っ?また雨キャンかよ~~っ」
ジョーが怒ったように叫んだ。
「ええ~、コスチューム着ける前に降って欲しいっすよね」
メラリーは吐息して面倒臭そうにドレスの裾をパタパタと振った。
地下通路。
タウンの施設はすべて地下通路で繋がっている。
ショウのキャスト達はバックステージまで地下通路を戻っていく。
パッ。
パッ。
歩きながらハットを脱いで、コスチュームのスタッフの持つカゴに放り込む。
バサ。
バサ。
ピュンピュンと飛び込むハットをスタッフが慣れた手付きでキャッチする。
バッコ。
ボッコ。
ボッコ。
バッコ。
キャラクタートリオまで不機嫌そうな足音を鳴らし戻っていった。
一方。
騎兵隊キャストの詰め所。
「――はい」
ダンが無線を切る。
「――はぁぁ」
騎兵隊キャスト達がガックリと脱力して嘆息した。
「……」
ダンが無念そうに雨空を見上げる。
「……」
マーティは気の毒そうにダンを見つめた。
撤収後の騎兵隊キャスト詰め所。
「……」
キュ。
キュ。
今日もダンはカレンダーの日付の上に赤ペンで×印を付ける。
「――?」
ヒトの気配を察し、振り向くと戸口にゴードンが立っていた。
バックステージのロビー。
窓際のテーブルでゴードンとダンが向かい合ってコーヒーを飲んでいた。
「……」
ダンが顔を横に向けて、雨粒の当たる窓ガラスを凝視する。
「――あと、2日よね」
ゴードンがボソッと口を開いた。
「――このまま引退するのは――」
ダンがテーブルに視線を落とす。
「そりゃあ心残りでしょう」
「天気を恨んでも仕方ありませんが」
「……」
雨キャン続きでショウに出られないまま退職を迎えてしまうのはあまりに寂しい。
「……」
ゴードンとダンは窓ガラスの外の雨空に目をやって、お互いに吐息した。
「あ~ぁ、よく降るね~。もうウンザリ~」
「天気予報じゃ今月いっぱい、ず~っと雨なんだってよっ」
「梅雨時よりも今くらいのが降水量が多いんだってね~」
休憩のキャストの女のコ3人がペチャクチャと話しながら2人の後ろ側のテーブルにやってきた。
今月いっぱい、ず~っと雨。
「……」
ダンとゴードンはどんよりと顔を曇らせた。
ホワ。
ホワ。
厨房の奥から焼きたてパイの香ばしいニオイが漂ってくる。
「――あ、アップルパイ?食べたくなる~ぅ」
「あっ?やっぱり?アップルパイなんだってばっ」
「や~ん、またデブるぅ。でも、食べちゃう~」
女のコ達の話題はたちまちコロッとオヤツに変わっていた。
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