PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第5弾 踊り明かそう

Two are friends(2人は友達)

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 バタバタ――、

 ターレーに乗ったクララがバックステージの地下通路の出入り口に近付くと、

「よっこらしょ――と」

 キャストの爺さん3人がターレー2台に大きなサボテンの鉢を積んでいた。

 農夫のコスチュームからして植栽しょくさいのキャストだ。

 タウンの植栽は地元の農家の爺さん婆さんの短時間のバイトだった。

 地元のクララにとっては近所の小煩こうるさい爺さん達だ。

(わわっ、手ぶらなのにターレーに乗ってきて怒られちゃう)

 クララは(シマッタ)と思ったが、

「あっ、ちょうど、えがっだぁ」

「鉢が多ぐでターレーが足らんがっだでよ」

「助がっだがよ~」

 怒られるどころか爺さん達に感謝された。


(ツイてる~。やっぱり、ダイダイ星人に遭遇するとラッキーってホントだったんだ~)

 クララは急にツキが回ってきたような気がしてスキップ加減でバックステージの建物に入った。

(誰かいるかな~)

 話す相手を探しにロビーから長い廊下を小走りして女子更衣室へ向かう。

 女子更衣室にはトイレもシャワーもロッカーもまとめて完備されているので誰かしら来るはずだ。

「あっ、ミーナ」

 遠目からでもそれと分かるナニー(乳母)のコスチュームのミーナが女子更衣室から出てきた。

 ミーナは託児所のある前方へ歩いていく。

「ミーナ、ミーナっ」

 クララは夢中で廊下を30メートルほど突進してミーナを呼び止めた。

「い、今ね、わたし、ダイダイ星人にポップコーン売ったのーっ」

 走りながら息咳いきせきって報告する。

「ええっ?」

 振り向いたミーナがビックリ顔した。

「ダイダイ星人が来たの?わたしが風船を売ったのを最後にずっと目撃されてなかったのに?」

 ミーナはタウンで風船売りのバイトをしていた2月にダイダイ星人のファミリーに風船を売ったことがあったのだ。

 ちなみに何故、ダイダイ星人がオレンジ星人ではなくダイダイ星人と呼ばれているかというと、

 10年前のオープンの頃にタウンで風船を買ったダイダイ星人のお祖母さんがゲストの多くは例外なくオレンジ色と呼ぶ風船を指して「橙色」と言ったからだと伝わっている。

「そうっ。わたしが風船を売った時にも『何色にしましょう?』と訊ねたらダイダイ星人の子供が『橙色』って答えたのよっ」

「やっぱり?やっぱり?」

 ミーナとクララは四つ手(相撲で向かい合ってお互いの両腕を掴む体勢)になってキャッキャッと飛び跳ねた。

(――ハッ――)

 クララは飛び跳ねながらハタと気付いた。

 ミーナとは気まずくて2ヶ月以上、口も利いていなかったということに。

 ダイダイ星人に遭遇した感激のあまりコロッと忘れていた。

(な、なんか恥ずかしい~)

 クララはとたんに飛び跳ねるのをやめて赤面してうつむいた。

「クララ、わたしが勝手にみんなにしゃべって怒ってるかと思ったから、フツーに話してくれて良かった」

 ミーナがニッコリした。

 根性のねじくれたクララが元に戻るのをミーナはずっと待っていたのだ。

「わ、わたし、自分ではみんなにホントのこと言えなかったから、ミーナにありがとうって言おうと思ってたの。そう、お礼のしるしにお菓子を作ろうと思ったのよ」

 クララはお礼が遅くなった下手な言い訳をした。

「え~、嬉しい~。クララの手作りのマシュマロ入りブラウニーと味噌バタークッキー、大好きなの」

 ミーナはちゃっかりと2種類もリクエストする。

「うん、マシュマロ入りブラウニーと味噌バタークッキーね。任せてよ」

 クララは笑顔でポンと胸を叩く。

 手作りのお菓子はバターのような高い材料をコスト度外視で使えるので本格的に料理を学んだクララが作れば市販品より何倍も美味しいものが出来る。

 その時、

「味噌バタークッキーって何っ?食べたことないんだけどっ」

 いきなり背後から声が。

「――え?」

 振り返るとクララの真後ろに立っていたのはメラリーだった。

 メラリーは早めの昼食にキャスト食堂へ向かう途中で耳が鋭くキャッチしたお菓子の話題に吸い寄せられてきたのだ。

「あ、メラリーちゃん、味噌バタークッキーはクララのオリジナルなのよ」

 ミーナは「甘いものが苦手なうちのパパも大好きなクッキーなの」と夫のロッキーの余計な情報まで入れる。

「クララさん、俺も味噌バタークッキー食べたいっ」

 メラリーは今まで一度しか話したことのないクララにお菓子をねだった。

「――え、だけど、メラリーちゃん、そんな親しくもないわたしの手作りのお菓子なんてイヤじゃないの?」

 クララは不可解そうに訊ねた。

 メラリーがルルの手作りのお弁当をはなはだしく迷惑そうにしていたのは知っている。

 いつもクララはキャスト食堂のガンマンキャストのテーブルの近くで聞き耳を立てていたからだ。

「全然っイヤじゃない。だって、ミーナさんが美味しいって食べるお菓子を俺が食べらんない訳ないしっ」

 メラリーはブンブンと首を振る。

「えと、じゃあ、わたしはメラリーちゃんに手作りのお菓子をあげるような友達ってこと?」

 クララはこれはラッキーチャンスと思った。

しょうを射んとほっすればまず馬を射よ』ということわざもあるではないか。

 ジョーを射止めるにはまずメラリーから射止めればいいのだ。

「うんっ。友達、友達♪」

 メラリーは満面の笑みでクララの両手を取ると、お遊戯でもするように左右に振った。

「うんっ。友達ね♪」

 クララも調子を合わせてメラリーと繋いだ両手を左右に振る。

 こうして、藪から棒にクララとメラリーによこしまな友達関係が成立した。
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