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第5弾 踊り明かそう
Rival in love(恋敵)
しおりを挟む「一緒にお昼なんて久しぶりよね~」
「ホントに~」
クララとミーナもキャスト食堂へやってきた。
出入り口の横の蛇口が5つある洗面台で並んで手を洗う。
「ね?クララ?これ、出たいわよね~?」
ダンス大会のポスターは洗面台の鏡の横にも貼られていた。
「う、ん。ミーナはロッキーさんと出るの?」
「ダメダメ。誘ったんだけど、ダンスなんてする顔じゃないから恥ずかしいって言うの」
「わたしもダメ。恋人以外の男のヒトとダンスなんて気持ち悪いもの。あ~、だけど、こんなドレス着て踊るの夢よね~」
ポスターには西部開拓時代のファッションでダンスをするカップルの絵が描かれている。
「――(ぽ~~)」
クララの夢見がちな目にポスターの絵のカップルと自分とジョーの姿がダブって見えてきた。
〈クララのイメージ〉
タウンの広いホールでガンマンのコスチュームのジョーと白いヒラヒラのフリルのドレスのクララが踊っている。
「……」
美化されて二枚目風な笑顔のジョー。
「……」
美化されて淑やかな笑顔のクララ。
熱く目と目を見交わしながら優雅に踊る2人。
「――はぁ~」
クララは両手を頬に添えた乙女のポーズでうっとりと吐息した。
「レバニラ定食、大盛り下さ~い」
だしぬけのミーナの声。
「――っ?」
クララはハッと我に返った。
洗面台の前でうっとりしているクララをほったらかしてミーナはとっくに配膳台まで進んでいる。
「や、やだっ。現実に引き戻さないでよ。レバニラっ?」
クララは焦って小走りして自分も配膳台に並んだ。
「だって、鉄分しっかり摂らなきゃね。クララも鉄分、摂ってる?若くっても血色悪いと台無しよ」
ミーナはクララより2歳上で子持ちの人妻だというのに見た目は同い年で通用するほどお肌ピチピチだ。
「わ、分かった。わたしもレバニラ定食、大盛り下さい~」
クララも負けじとレバニラ定食を注文した。
「あ、そういえば、カレンちゃんは?」
クララはいつもどおりにガンマンキャストの後ろ側のテーブルに着いてから気付いた。
託児所の保母になってからのミーナは娘のカレンとお弁当を食べていたのだ。
「ああ、カレンがウルフくんと一緒に食べたいって言うからマダムが連れてってくれたの。――ほら」
ミーナが指した窓際のテーブルを見ると、マダムとカレン、ウルフとロバートが一緒にお弁当を広げている。
その時、
「ふぅん、マリーちゃんたら、ウルフくんをダシに使ってロバートに迫る魂胆かしらね~」
唐突にポソッと呟いたのはクララの隣に座っていたコスチューム担当のタマラだった。
「え?そんなんじゃないですよ。マダムはウルフくんが来る前から託児所によく来て手伝ってくれてたし、ホントに子供好きなんです」
ミーナはムキになってマダムの肩を持つ。
「あ、あら、やだ~」
タマラはうっかり口から出た独り言を聞かれたバツの悪さに赤面して「ご、ごちそうさま~」と慌てて席を立っていった。
(へええ、タマラさんってロバートさんのこと好きだったのかしら?)
クララは恋敵に対して憎まれ口を言ってしまうタマラに自分と似た者同士のようなシンパシーを感じた。
タマラはスレンダーで背がスラリと高く、漫画のポパイのオリーブのような色気のないタイプだ。
色っぽいグラマー美女で料理上手と完璧なマダムには勝ち目がないと最初から諦めている節がある。
(うん、どうせミーナはマダムの味方だし、せめて、わたしだけでもタマラさんを応援しよう。何も出来ないけど気持ちだけ)
クララは(タマラさん、頑張って)と配膳台の返却口にトレイを返しているタマラの背に向けて念を送った。
一方、
「そうそう、ロデオ大会があるんですよね」
太田は自分には関係のないダンス大会よりもロデオ大会に興味津々だった。
「お~、ロデオ大会。俺、出ちまおうかな?荒馬、乗りこなすなら自信あるしよ」
ジョーは俄然、乗り気になる。
「俺もロデオやってみたかったんですよ。メラリーちゃんは?」
「え~、フツーの馬だってビビッて乗ってるのに、暴れ馬なんか絶対にヤダ」
メラリーはブンブンと首を振る。
「それよりダンスだよなっ?」
「だな。ロデオなんか女のコは参加しないしよ」
トムとフレディが横から話に割り込む。
「あら、ロデオは昼で、ダンスは夜なんだから、どっちも参加すればいいでしょ?ダンス大会だってカンカンのコ達は全員参加だから男だけで来たって誰か踊ってくれるから大丈夫よ」
ゴードンはなるべくなら盛り上げ要員としてショウのキャストは全員参加させたい意向だ。
「ひゃっほ~♪カンカンと踊り放題~?」
「やた~♪」
トムとフレディは歓声を上げる。
「俺も出るっ」
メラリーもフレンチカンカンの踊り子とダンスと聞いて即決した。
「え~、メラリーが出るなら俺も一応は出るけどよ。ダンスはパス。衆人環視の中で女のコと抱き付いて踊るなんざ考えただけでこっ恥ずかしいじゃん。絶対、無理っ」
ジョーはブンブンと首を振る。
後ろ側のテーブルではクララが聞き耳を立てていた。
(ジョーさん、誰とも踊らないんだ。良かった~)
クララはホッと安堵した。
なにしろジョーはクララの半径5メートル以内には近付かないのでクララとは踊るはずがないのだ。
「ねっ?踊らなくても参加するだけはしない?ドレス着たいものね?」
ミーナがクララをせっつく。
「うんっ」
クララは大きく頷いた。
自分のドレス姿を5メートル先からでもジョーに見せたいと思った。
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