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第7弾 明後日に向かって撃つな!
Brownie with marshmallow(マシュマロ入りブラウニー)
しおりを挟む一方、
ここはウェスタン・タウンの裏の緑の牧草地の先にポツンとある赤い三角屋根の建物。
クララの自宅のパン工場『サンサンパン』だ。
2階のオレンジ色のギンガムチェックでカーテンとベッドリネンを揃えたカントリー調の部屋では、
「ふんふん♪」
クララが朝から作っていたマシュマロ入りブラウニーをラッピングしているところだった。
昨日今日と仕事は休みなのだ。
(メラリーちゃんとミーナとアニタとチェルシーとスーザンとデボラとダイアナと、一応、アランにも渡さなきゃね)
クララは付け足しのように(アランにも)と思ったとたんに照れてポッと頬が赤らんだ。
かりそめとはいえ彼氏のためにお菓子を作るとはクララの人生始まって以来の珍事。
思わずハミングが出るほどウキウキしてしまう。
(だって、アランみたいに身長185㎝のものすごいハンサムでモテモテの彼氏が出来て嬉しくない女のコなんているかしら?)
クララもそこは素直に認めていた。
だが、しかし、
(あくまでも本命はジョーさんだけどっ)
そう意気込んで不敵な笑みを浮かべる。
恋する乙女クララはいつも何かと戦っていた。
その何かが何かは謎だったが、ウェスタン・タウンというワイルドな舞台がクララに野性の狩猟本能を掻き立てるのだ。
チェストの上には1枚の写真が飾られている。
それはクララとジョーのツーショット。
ウェスタン・タウンのキャラクタートリオの絵の台紙付きで年月日は5年前、クララが17歳の頃だ。
ショウのキャストのグリーティング(ご挨拶)でゲストは列に並んで自分の番になれば、もれなく撮って貰えるという特別でも何でもない記念撮影。
だが、この写真を撮った65分ほど前、クララはウェスタン・ショウでガンマンデビューしたジョーの姿を初めて観て、ビビビッと全身に電流が走ったのだ。
(――わたし、このヒトの彼女になる――っ)
そう心に決めた。
まさに運命の日の記念写真。
クララはチェストの上の写真を手に取った。
恋する乙女の恥じらい笑顔の17歳のクララの横でジョーはといえば、あからさまにキメキメの営業スマイルだ。
(ふふっ、この無理くり強引に作ったスマイル、ジョーさんらしい)
クララは写真のジョーの営業スマイルを好ましげに見つめた。
女子大生になってタウンでバイトを始めてからも、タウンの正社員になってからも、バックステージで見るジョーはだいぶクララの理想とは違っていたが、――はっきり言うとスケコマシだったが、クララの心は何故かまったく変わらなかった。
5年間、ずっと想い続けてきたのだ。
(今さら後には引けないのよっ)
クララはグッと拳を握り締めてドレッサーの鏡の前でファイティング・ポーズを取る。
プルル♪
ふいにケータイが鳴った。
表示を見るとアニタからだ。
「アニタ、どしたの?あ、今、オヤツ休憩?そこ、キャスト食堂?なんか騒がしいけど」
クララはいつものようにアニタがバイトの後に駅前の甘味処で一緒にクリームあんみつでも食べようと言うのかと思ったが、
「――えっ?ホテルアラバハで?今晩6時から?」
それは地元で一番ゴージャスなホテルアラバハでの歓談の宴という思い掛けない誘いだった。
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