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第7弾 明後日に向かって撃つな!
Strawberries squash easily.(苺は潰れやすい)
しおりを挟む「ねえ?ジョーちゃん、もう帰らない~?」
「んあ~」
アンが生返事のジョーの腕を掴んで出入り口に引っ張っていった。
(――帰るって?駅前で解散?そんな訳ないわよね?ジョーさんの部屋にアンさんも行くのよね?)
クララは呪わしげに2人の後ろ姿を睨んだ。
ジョーとアンはお互いの腰に手を回して密着して歩いていく。
アンは身長168cmだが、ハイヒールで175cmになっているので188cmのジョーと並んでも見栄えがする。
お似合いの高身長カップルに見える。
クララは158cmで平均的だが、ジョーと並んだら30cmも身長差があるのだ。
いまだに並んだこともないが。
思えば今までクララが勝手にイメージしていたジョーと自分がカップルになった姿はだいぶ美化されていた。
グラマー美女のアンに現実を見せ付けられてクララはコテンパンに打ちのめされた気分になった。
しかも、アンのほうではクララのことなどまったく眼中にないようだ。
「……」
マダムは気を遣って知らん顔してプチトマトを摘まんでいる。
「……(ボリボリ)」
クララはあからさまに仏頂面なのだが、努めて平静を装おってスティックのニンジンを齧り続けた。
一方、
タウンへ戻ってきたメラリーはショウのコスチュームのドレスから一張羅のウェスタンシャツとラングラーのジーンズに着替えて、ウェスタンブーツを履いてカウボーイハットを被った。
「メラリー?何で今頃そんな格好すんだよ?」
「練習すんじゃなかったのか?」
トムとフレディはショウのカウボーイのコスチュームからいつもどおりにジャージの上下に着替えた。
「……」
メラリーはやはり無言のまま更衣室を出ていく。
「くあ~、何でメラリーの奴、しゃべらねんだよ。調子狂うなっ」
「だなっ」
2人はメラリーの不可解な行動にイライラを募らせる。
メラリーがずっとメラリーというキャラクターの着ぐるみになっているので口を利かないことなどトムとフレディには分かるはずもない。
ガン!
ガン!
メラリーは黙々とウィンチェスターライフルでクレー撃ちの練習をしている。
「――あっ、分かったっ。動きやすいジャージの上下で練習だと本番のコスチュームとは加減が違うからな、それでジーンズでウェスタンブーツにハットなんじゃね?」
「あっ、そっか。ハットを被ってるのと無いのとじゃ射撃するのに大違いだよな」
トムとフレディは妙に納得した顔で、
「よしっ。俺等も明日からは練習でも本番と同じような格好でやろうぜっ」
「おおっ」
そう意気込みを見せた。
「……」
実はメラリーはショウのキャラクターになりきるためにコスチュームと同じような服装をしただけで、そこまでは考えてなかった。
ガン!
ガン!
ガン!
ガン!
それでも、今日は練習では絶好調で最初から13発12中もした。
ガンマンデビューでのボロボロの13発2中が嘘のようだ。
「おお?メラリー、調子良いじゃん」
「集中力が増したのかもな。今まで俺等もジャージの上下で気が弛んでたかもしれねえよな」
「本番さながらのコスチュームの効果かっ」
トムとフレディはいちいちメラリーの練習を意味付けする。
たしかにメラリーというキャラクターになりきることで雑念を無くすことが出来たのかも知れない。
その日、メラリーがキャラクターのメラリーという着ぐるみを脱いだのは練習後のシャワーから出たとたんだった。
「――あ~、さっぱりしたっ。練習したら小腹が空いちゃったな。――あ、クララさんから貰ったクッキーがある。食べよっと~」
メラリーはジャージの上下に着替え、いつものバックステージでのメラリーに戻ってルンルンとロッカーから味噌バタークッキーの袋を取り出した。
「――?」
トムとフレディは(何だ?コイツ?)という顔でメラリーを見ている。
「何で食いしん坊の俺が昨日のうちにクッキーを食べなかったかって~?焼き菓子は焼きたてより1日以上置いてから食べるのが鉄則だし~」
メラリーは今まで黙っていた反動か1人でペラペラとしゃべって、「コーヒー、コーヒー~♪」と連呼しながら足取り軽くキャスト食堂へ向かった。
「なんか知らねえけど、いつものメラリーだな」
「だな」
トムとフレディは呆気に取られてメラリーの後から廊下を歩いていった。
勿論、自分達もいつもどおりにメラリーに「俺等にもクッキーよこせよ」と要求してクッキーをたらふく食べるつもりだ。
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