PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

文字の大きさ
181 / 297
第9弾 お熱いのがお好き?

Let's be dressed up(オシャレしよう)

しおりを挟む


「ああ~あ~」

 アランは頬杖を突いて嘆息していたが、

「――あ?よくよく考えたらクララちゃんと2人だけでタウンの外へ出掛けるなんて初めてだし、これってデートみたいなもんっすよね?」

 ケロッと気を取り直し、能天気な笑顔になった。

「とことんポジティブな奴」

「だな」

 トムとフレディが呆れ顔する。

「駅前の荒刃波あらばは病院なら帰りにクララちゃんとホテルアラバハの夜景の見えるラウンジでお茶なんかしちゃおうかな~」

 ゴージャスなホテルの気取ったラウンジでデートする自分とクララを想像してアランはニマニマした。

「クララちゃん、今日も私服はミニスカートかなぁ」

 そこでハッと気付いた。

「あああっ?俺、ジャージの上下だっ」

 アランは「ガーン!」とショックの表情で自分のブルーのバッキーの柄のTシャツを見下ろす。

「ど、どうしよう。こんな格好じゃ――」

 ゴージャスなホテルの気取ったラウンジなど場違いにも程がある。

 今週はアランは馬当番でフロンティア砦の兵舎に泊まっていて自宅へは帰っていない。

 それで騎兵隊のコスチューム以外はずっとジャージの上下で済ませていたのだ。

 オシャレな自分が駅前の病院へお見舞いに行くのにもジャージの上下は有り得ない。

 第一、タウンに遊びに来るゲストも歩いているであろう駅前を騎兵隊キャストで一番のハンサムと評判の自分がジャージの上下で歩く訳にはいかない。

『タウンのキャストは家に帰るまでがキャスト』

 それがウェスタン・タウンのポリシーなのだ。


「だ、誰か、俺にオシャレな服を貸してっ」

 アランは懇願する目で周囲をキョロキョロした。

 しかし、貧乏な騎兵隊キャストと先住民キャストの貧乏臭い私服などは論外だ。

「ああ、俺の服、貸してやるぜ」

 そう気安く応じたのはレッドストンだった。

 たしかにレッドストンの私服は限りなくオシャレではある。

 だが、いかんせんインディアン過ぎる。

「いや、気持ちだけ有り難く」

 アランはやんわりと辞退する。

「じゃ、他にはジョーの服くらいしかねえよな?」

 レッドストンはジョーに目を向けた。

「ああ、いいけどよ」

 ジョーも私服はオシャレなほうだ。

 だが、ジョーのウェスタンファッションはゴージャスなホテルの気取ったラウンジという雰囲気ではない。

 そこへ、

「ダメダメ。ジョーちゃんの私服じゃチンピラみたいでガラが悪くって。アランちゃんにはわたしのスーツを貸してあげるわっ」

 ゴードンが横から割り込んだ。

「ああ、ゴードンさんならアランと身長が同じくらいですしね」

 太田が2人を見比べる。

 顔の大きさや手足の長さはだいぶ異なるがゴードンもアランも同じ185cmだ。

「え、ええ。それじゃお願いします」

 アランはゴードンにスーツを借りることにした。

 ウェスタンのオールド・スタイルのスーツなのでサラリーマンのビジネススーツとは違ってオシャレ度は高い。

「じゃ、ちょっと部屋へ戻って何着か見繕って持って来たげるわ」

 ゴードンはそうと決まればとキャスト食堂をいそいそと内股走りで出ていった。

 バツイチで独り身のゴードンは一軒家のキャスト宿舎に住んでいるので巡回バスですぐに行き来が出来るのだ。

 ウェスタン・タウンはバックステージも西部開拓時代の町並みを再現しているが、それらの建物はすべてキャストの住まいになっている。


 そうこうして、

 アランはコスチュームルームの試着室を借りてスーツに着替えることにした。

「アランちゃんにはブルーグレイが似合うわね」

「ええ。若いから軽い色合いのほうが映えるわ~」

 ゴードンとタマラにそう勧められるまま、

 ジャケットの襟とポケットに黒いレザーをほどこしたデザインのブルーグレイのスーツを選んだ。

「わっ、こうして着てみると肌触りといい、着心地といい、めちゃくちゃ高そうな生地っすね」

 ウールの厚みと柔らかい質感、落ち着いた光沢感はいかにも高級そうだ。

「そうね~。この普段着のスーツでも30万円くらいかしらね~」

 タマラが何の気なしに言う。

「――30万円っ?」

 アランは決してスーツを汚してはならないと肝に命じた。

「ゴードンさんみたいなループタイはジジ臭いからアランには華やかにシルクのスカーフを蝶結びが良いかしら~」

「ジジ臭いは余計よ」

 タマラがコスチュームルームにあった紺色のスカーフを格好良く蝶結びにしてくれた。

 スカーフを蝶結びなど初めてだか我ながらサマになっている。

 アランは鏡に向かってニンマリした。

「すっごく似合うわ~。日本人離れした顔立ちだから貴公子っぽいファッションも無理がないのよね~」

 タマラがパチパチと手を叩いて称賛する。

「――」

『日本人離れ』と言われてアランはやにわに気分を害したような顔になった。

 そんなアランの表情の変化に気付くこともなく、

「いってらっしゃい~」

 ゴードンとタマラは笑顔で手を振ってアランを送り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...