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第9弾 お熱いのがお好き?
Let's be dressed up(オシャレしよう)
しおりを挟む「ああ~あ~」
アランは頬杖を突いて嘆息していたが、
「――あ?よくよく考えたらクララちゃんと2人だけでタウンの外へ出掛けるなんて初めてだし、これってデートみたいなもんっすよね?」
ケロッと気を取り直し、能天気な笑顔になった。
「とことんポジティブな奴」
「だな」
トムとフレディが呆れ顔する。
「駅前の荒刃波病院なら帰りにクララちゃんとホテルアラバハの夜景の見えるラウンジでお茶なんかしちゃおうかな~」
ゴージャスなホテルの気取ったラウンジでデートする自分とクララを想像してアランはニマニマした。
「クララちゃん、今日も私服はミニスカートかなぁ」
そこでハッと気付いた。
「あああっ?俺、ジャージの上下だっ」
アランは「ガーン!」とショックの表情で自分のブルーのバッキーの柄のTシャツを見下ろす。
「ど、どうしよう。こんな格好じゃ――」
ゴージャスなホテルの気取ったラウンジなど場違いにも程がある。
今週はアランは馬当番でフロンティア砦の兵舎に泊まっていて自宅へは帰っていない。
それで騎兵隊のコスチューム以外はずっとジャージの上下で済ませていたのだ。
オシャレな自分が駅前の病院へお見舞いに行くのにもジャージの上下は有り得ない。
第一、タウンに遊びに来るゲストも歩いているであろう駅前を騎兵隊キャストで一番のハンサムと評判の自分がジャージの上下で歩く訳にはいかない。
『タウンのキャストは家に帰るまでがキャスト』
それがウェスタン・タウンのポリシーなのだ。
「だ、誰か、俺にオシャレな服を貸してっ」
アランは懇願する目で周囲をキョロキョロした。
しかし、貧乏な騎兵隊キャストと先住民キャストの貧乏臭い私服などは論外だ。
「ああ、俺の服、貸してやるぜ」
そう気安く応じたのはレッドストンだった。
たしかにレッドストンの私服は限りなくオシャレではある。
だが、いかんせんインディアン過ぎる。
「いや、気持ちだけ有り難く」
アランはやんわりと辞退する。
「じゃ、他にはジョーの服くらいしかねえよな?」
レッドストンはジョーに目を向けた。
「ああ、いいけどよ」
ジョーも私服はオシャレなほうだ。
だが、ジョーのウェスタンファッションはゴージャスなホテルの気取ったラウンジという雰囲気ではない。
そこへ、
「ダメダメ。ジョーちゃんの私服じゃチンピラみたいでガラが悪くって。アランちゃんにはわたしのスーツを貸してあげるわっ」
ゴードンが横から割り込んだ。
「ああ、ゴードンさんならアランと身長が同じくらいですしね」
太田が2人を見比べる。
顔の大きさや手足の長さはだいぶ異なるがゴードンもアランも同じ185cmだ。
「え、ええ。それじゃお願いします」
アランはゴードンにスーツを借りることにした。
ウェスタンのオールド・スタイルのスーツなのでサラリーマンのビジネススーツとは違ってオシャレ度は高い。
「じゃ、ちょっと部屋へ戻って何着か見繕って持って来たげるわ」
ゴードンはそうと決まればとキャスト食堂をいそいそと内股走りで出ていった。
バツイチで独り身のゴードンは一軒家のキャスト宿舎に住んでいるので巡回バスですぐに行き来が出来るのだ。
ウェスタン・タウンはバックステージも西部開拓時代の町並みを再現しているが、それらの建物はすべてキャストの住まいになっている。
そうこうして、
アランはコスチュームルームの試着室を借りてスーツに着替えることにした。
「アランちゃんにはブルーグレイが似合うわね」
「ええ。若いから軽い色合いのほうが映えるわ~」
ゴードンとタマラにそう勧められるまま、
ジャケットの襟とポケットに黒いレザーを施したデザインのブルーグレイのスーツを選んだ。
「わっ、こうして着てみると肌触りといい、着心地といい、めちゃくちゃ高そうな生地っすね」
ウールの厚みと柔らかい質感、落ち着いた光沢感はいかにも高級そうだ。
「そうね~。この普段着のスーツでも30万円くらいかしらね~」
タマラが何の気なしに言う。
「――30万円っ?」
アランは決してスーツを汚してはならないと肝に命じた。
「ゴードンさんみたいなループタイはジジ臭いからアランには華やかにシルクのスカーフを蝶結びが良いかしら~」
「ジジ臭いは余計よ」
タマラがコスチュームルームにあった紺色のスカーフを格好良く蝶結びにしてくれた。
スカーフを蝶結びなど初めてだか我ながらサマになっている。
アランは鏡に向かってニンマリした。
「すっごく似合うわ~。日本人離れした顔立ちだから貴公子っぽいファッションも無理がないのよね~」
タマラがパチパチと手を叩いて称賛する。
「――」
『日本人離れ』と言われてアランはやにわに気分を害したような顔になった。
そんなアランの表情の変化に気付くこともなく、
「いってらっしゃい~」
ゴードンとタマラは笑顔で手を振ってアランを送り出した。
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