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第12弾 ショウほど素敵な商売はない
Please tell me it (わたしにそれを教えて下さい)
しおりを挟むそうこうして、
騎兵隊オーディションの祝勝会も「インディアン料理、意外に美味しかったね~」「ホント、ホント~」という当たり障りのない感想だけを残し、お開きになると、
「――ええ~?アランも二次会に出ないの?この後、二次会はバックステージのゲストルームを借りてカラオケだっていうのよ?」
クララは不満もあらわに酒場『アパッチ砦』を出たメインストリートの端っこでアランに詰め寄った。
「うん、ホテルのバイトに呼ばれちゃってさ。ほら、大安吉日の日曜だから、ホテルも結婚式の二次会、三次会で忙しいんだよ」
アランは今夜もパーティー会場のバーカウンターでバーテンダーをやるのだ。
「もお~」
みながみな二次会に出ないのでクララはブスッと分かりやすく不貞腐れた。
マダムとアニタとバミーとバーバラはカンカンのダンスのレッスンがあるので祝勝会の途中で抜けてしまったし、
デボラとダイアナは猛烈にインスピレーションが湧き上がったので早く帰って趣味のBL漫画を描くと言って祝勝会にも出なかったし、
スーザンとチェルシーは何も予定はないけど祝勝会が終わると帰ってしまった。
ヘンリーとハワードは9時半からタウンのバイトがあるのでスーザンとチェルシーは自分達だけで二次会に出るような図々しさはないのだ。
「そしたら、わたしも二次会は諦めるわ――」
クララは泣きの涙で二次会の参加を断念した。
世を忍ぶ仮の彼氏のアランがバイトだというのに女のコが自分1人だけで二次会に出るほどの図々しさはクララとて持ち合わせてなかった。
そもそも、そんな図々しさがあったら6年も片想いの相手に何もアクションを起こさず陰に隠れてコソコソと盗み見したり、会話の盗み聞きしたりはしていないのだ。
(あああ、ジョーさんの音程のビミョーなカラオケ聴きたかった――)
カラオケではメラリーがまた『焼肉食べ放題の歌』を歌って、ジョーと、晴れて騎兵隊オーディションに受かった太田が目出度く「ヨーレイヒ~♪」をハモるに違いないというのに。
(あああ、またジョーさんとヨーレイヒ~♪をハモりたかった――)
クララはしょんぼりしてアランと共に薄暗い地下通路を進んでいった。
「それにしてもさ、俺、最初の頃はマーティさんを見て羨ましくて早く結婚したいと思ったのに、なんだか色々と幻滅しちゃったよな~」
アランは自分以外の騎兵隊キャストがこの場にいないのをいいことに大袈裟に嘆息した。
決して口に出しては言えないが、マーティの妻のエマのようにデブデブにデブって何食わぬ顔している女など耐え難い。
だいたいエマはマーティのためにミジンコほどの努力をする気もないのではないかと思った。
節約のためにマーティは弁当持参しているはずなのにエマは自分はあんなに肥えるほど余分に食べて食費を無駄に使っているとはどういうことか。
エマにもマーティに対して不満はあるのだろうがアランはいついかなる場合もマーティの味方だ。
「クララちゃん、俺達は理想的な夫婦になろうね?」
アランは横のクララに顔を向けてニッコリして言った。
「――理想的な夫婦って?」
クララはしかめっ面してアランと理想的な夫婦になる気はさらさらないという意思表示をしながらも一応は参考のために訊いてみる。
「そりゃあ、お互いに相手の理想を裏切らず、理想の自分を目指して、最善を尽くし、たゆまぬ努力を続けるような夫婦さ」
ずっと変わらず華奢な体型のままでオシャレで料理上手な可愛い奥さんといつまでもラブラブというのがアランの理想だ。
(――たゆまぬ努力――)
クララは(また努力か)と吐息した。
(そんなこと言ってもジョーさんの彼女になるためには何を努力したらいいの?)
ジプシー占いのクローディアに「努力次第で必ず結ばれる」と言われた言葉だけがクララの心の糧だったが、その努力が何かさっぱり分からなかった。
「あ、もう送迎バスが着いてる。じゃあね」
「うん」
クララはバス停留所へ走っていくアランに見向きもせずに素っ気なく手を振って、
(あああ、コーヒーでも飲んでから帰ろっと)
うなだれてバックステージのロビーへ入っていくと、
「――あ、クララさ~ん」
ロビーのソファーに座っているパティが大きく手を振った。
「パティ、こんな時間まで帰ってなかったの?」
「いえ、バイトの後に駅前のエステに行ってから戻ってきたんです。今、アンさんとリンダさんを待っているところなんです」
パティは意欲満々という表情で、
「うふふ、これから、ハニーの大先輩のお二人にジョーさんのハニーの心得を教えてもらう約束なんです」
張り切ってバッグから取り出したメモ帳とボールペンをテーブルに置いた。
(――なんですって?ジョーさんのハニーの心得?)
たちまちクララの目がギラリと光った。
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