5 / 24
第一章 謎の男
第五話 しっかり者、ユウキちゃんの推理
しおりを挟む
わたしと向き合うようにソファへ座り直したユウキちゃんが、リストラ説を話し始めた。
「毎日区役所へ来てお弁当を食べるってことは、他に行くところがないからでしょ」
そこが一つのポイントなのよね。
やっぱ会社には行ってないってことなのかな。
「しかもコンビニ弁当だし。奥さんの手作りなら愛されてるなぁって感じだけど、家に帰っても相手にされてないんだよ」
「そうだよね、きっと」
そう考えるのが普通だよなぁ。
答えとしては、つまらないけれど。
ん? また不満そうにしている人が一人いるみたい。とりあえず無視しておこう。
「サラリーマンみたいな服装にわざわざ途中で着替える訳ないから、家からその格好で出掛けてるはず。きっと奥さんにはリストラされたことを話してないんだね」
「やっぱ、話してないのかぁ」
あの人が家を出るときの哀愁漂う後姿が目に浮かぶ。
ここからユウキちゃんとのトークが盛り上がってきた。
「仕方なく、会社に行く振りして家を出る」
「行くとこもないから、ぶらぶらして過ごすんだ。ずっと山手線に乗ってたり」
「何周もするの!? マジそれはないわ」
「お昼くらい、ゆっくり座って食べたくなるよね」
「ファミレスじゃお金が掛かっちゃうから、コンビニで買うんだ」
「区役所ならただで座れるし」
「あの台ならテーブル代わりに出来るし」
「ひょっとしたら、N〇Tをリストラされたのかも! だから電話が置いてあった台にこだわってるんだよ」
「えー、それってマジに可哀想すぎるー」
「そのうち奥さんにもバレちゃうよね……」
「どうするんだろう……」
悲哀に満ちた孤独なあの人へ、わたしたちが思いを馳せたところで一段落。
「面白くはないけど、これが正解なのかなぁー」
ソファの背にもたれて両手を上げ、伸びをした。
そこに立っているおじさんと目が合う。
「せっかくの推理に水を差すようだけど、トイレを使いに来た件は?」
お、また探偵っぽいことを言ってる。
「あれはたまたまなんじゃない? 毎日、五時頃に来るわけじゃないし」
「わたしもそう思うな」
ユウキちゃんも同意してくれた。
「トイレを借りに来た時刻が意味を持つとしたら?」
トイレに来た時間に意味なんてあるの?
したくなったから来たんでしょ。なんか思わせぶりだなぁ。
おじさんは何か言葉を待つようにあごをくいっと上げた。
「何、そのドヤ顔。ヤな感じー」
思わず目を細めて視線をおじさんへ向ける。
まさか……。
「えっ、ひょっとしておじさん、分かっちゃったの?」
ユウキちゃんも何か感じたのか、座ったまま身を乗り出した。
まさかね。
わたしが知ってたことなんて、あれだけしかなかったのに。
売店のおばさん達とも色々考えて分からなかったのに、こんなすぐにあの人の正体を当てられるはずがない。
「うん、俺なりの推理はしたよ。あとは区役所付近の地図を確認して――ぇげっ!」
「ちょっと待ったぁーっ! まだ推理は尽くされてないよ」
腹パンした勢いをそのまま、立ち上がる。
そんな簡単に答えが出ちゃったら面白くない。
「まさか異世界の住人だったとはね。やっぱりあそこは異世界へのゲートだったのよ!」
こうなったら、わたしの妄想パワーを見せつけてやるさ。
心の中でそっと呟いた。
「毎日区役所へ来てお弁当を食べるってことは、他に行くところがないからでしょ」
そこが一つのポイントなのよね。
やっぱ会社には行ってないってことなのかな。
「しかもコンビニ弁当だし。奥さんの手作りなら愛されてるなぁって感じだけど、家に帰っても相手にされてないんだよ」
「そうだよね、きっと」
そう考えるのが普通だよなぁ。
答えとしては、つまらないけれど。
ん? また不満そうにしている人が一人いるみたい。とりあえず無視しておこう。
「サラリーマンみたいな服装にわざわざ途中で着替える訳ないから、家からその格好で出掛けてるはず。きっと奥さんにはリストラされたことを話してないんだね」
「やっぱ、話してないのかぁ」
あの人が家を出るときの哀愁漂う後姿が目に浮かぶ。
ここからユウキちゃんとのトークが盛り上がってきた。
「仕方なく、会社に行く振りして家を出る」
「行くとこもないから、ぶらぶらして過ごすんだ。ずっと山手線に乗ってたり」
「何周もするの!? マジそれはないわ」
「お昼くらい、ゆっくり座って食べたくなるよね」
「ファミレスじゃお金が掛かっちゃうから、コンビニで買うんだ」
「区役所ならただで座れるし」
「あの台ならテーブル代わりに出来るし」
「ひょっとしたら、N〇Tをリストラされたのかも! だから電話が置いてあった台にこだわってるんだよ」
「えー、それってマジに可哀想すぎるー」
「そのうち奥さんにもバレちゃうよね……」
「どうするんだろう……」
悲哀に満ちた孤独なあの人へ、わたしたちが思いを馳せたところで一段落。
「面白くはないけど、これが正解なのかなぁー」
ソファの背にもたれて両手を上げ、伸びをした。
そこに立っているおじさんと目が合う。
「せっかくの推理に水を差すようだけど、トイレを使いに来た件は?」
お、また探偵っぽいことを言ってる。
「あれはたまたまなんじゃない? 毎日、五時頃に来るわけじゃないし」
「わたしもそう思うな」
ユウキちゃんも同意してくれた。
「トイレを借りに来た時刻が意味を持つとしたら?」
トイレに来た時間に意味なんてあるの?
したくなったから来たんでしょ。なんか思わせぶりだなぁ。
おじさんは何か言葉を待つようにあごをくいっと上げた。
「何、そのドヤ顔。ヤな感じー」
思わず目を細めて視線をおじさんへ向ける。
まさか……。
「えっ、ひょっとしておじさん、分かっちゃったの?」
ユウキちゃんも何か感じたのか、座ったまま身を乗り出した。
まさかね。
わたしが知ってたことなんて、あれだけしかなかったのに。
売店のおばさん達とも色々考えて分からなかったのに、こんなすぐにあの人の正体を当てられるはずがない。
「うん、俺なりの推理はしたよ。あとは区役所付近の地図を確認して――ぇげっ!」
「ちょっと待ったぁーっ! まだ推理は尽くされてないよ」
腹パンした勢いをそのまま、立ち上がる。
そんな簡単に答えが出ちゃったら面白くない。
「まさか異世界の住人だったとはね。やっぱりあそこは異世界へのゲートだったのよ!」
こうなったら、わたしの妄想パワーを見せつけてやるさ。
心の中でそっと呟いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる