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第弍部 魔女狩り騒動顛末記
第玖章 “守り神さま”のお社
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身の丈に見合わぬ月弥の早足に四苦八苦しながらユームは訊いた。
「と云うかアンタはどこに行くんだい? どこか掃除に行くとか云ってたけど」
「うん、“守り神さま”のところ」
「“守り神さま”? 何の神様だい?」
「え……っと、地母神って云ってたかな? 台風が来ても日照り続きでも関係無く野菜や果物が善く育つから御利益はあると思う。物知りで面白いし僕は好きだよ。ただ、最近、よく“契約しろ”とか“願い事を三つ云え”ってしつこいから、そろそろ付き合い方変えようかなって思ってるんだ」
「契約? 本当に神様なのかい?」
「さあ? でももう十年以上も付き合ってるし、どうでもよくなっちゃってるから。それに僕が魔法で悪戯しようとすると、頭の中に直接聞こえる声でお説教してくるし、さっきも僕の事を止めてたし、悪い神様じゃないと思うよ」
“おや?”とユームは思った。
地母神? そう云えばアルウェンは、この山はクシモ様と決着をつけた場だと云っていなかったか? それにクシモ様は吸精鬼に貶められる前は、太古から崇拝されてきた強大な地母神であったと仰せだったと記憶している。
思い出した。『一頭九尾』に代表される魔王達はこれぞという実力者に契約を持ち掛けて直属の騎士とする事があると聞いた事がある。
その際、騎士となった者は俗世を捨てて魔界の住人とならなければならぬ為、未練を断ち切らせるように、また魔王に忠誠を誓わせるように、契約の見返りとして三つの願いを叶えてやらなければならぬのだとか。
こうして魔王に忠誠を誓った騎士達は世界を、人類を裏切った騎士であるとの自嘲を込めて『フェアラートリッター』と名乗っているという話だ。
まさか、この子の云う”守り神さま”とはクシモ様なのか?
この子の強大な魔力に目を着けたのか、アルウェンに対する当て付けなのか、或いはその両方か、ご自分の復活に月弥を利用しているのではあるまいか。
ユームは知らず唾を飲み下すと、精霊達を引き連れて行く背中に声を掛けた。
「アンタは願い事をしたのかい?」
「うん、お試しで一つ、“修行を投げ出したり、修行で得た力を悪い事に使わないように見守って下さい”って頼んだよ?」
振り返り、コテンと首を傾げる月弥にユームは苦笑した。
コレは難敵だ。クシモ様もさぞ頭を抱えたに違いない。
月弥に欲が無いからと云って、これ幸いと喜ぶ事は出来ないのである。
“見守って下さい”“容易いことだ”と本当に頷いては魔王として沽券に関わるのだ。
それというのもフェアラートリッターの願いをどういう形で叶えたのかというのが魔王達にとって一種のステータスとなっているからだ。
“女が欲しい”と願ったから“器量、家柄共に申し分の無い娘を世話してやった”
“強くなりたい”と願ったので“余が自慢とする武器の一つを下賜した”
“永遠に若く美しくありたい”と乞われたので“肉体を改造してやった”
などと他の魔王達に、自分は我が騎士の為にコレだけの事をしてやったのだ、貴様達にソレが出来るか、と誇ると同時に、騎士には自分はこうするだけそなたの事が必要なのだと示しているのだ。
そういう風潮の中で“見守って下さい”と云われたから“はい”と返したとなれば、魔王同士、露骨に見下す事は無いだろうが陰で何を云われるか知れたものではない。
クシモ様としては“強くなりたい”なり“何々が欲しい”なり云って欲しかったのだろうが、どうも月弥は“願いは自分で叶えるもの”という確固たる信念があるようだ。
「僕、チートって大っ嫌い。人から貰った力で強くなって何が愉しいのさ?」
ユームは漸く月弥の為人が分かってきた気がした。
この子は誇り高いのだ。人より成長が遅くとも、力が弱くとも自らを鍛えれば才能が無かろうとも強くなれるのだと証明したいのだろう。
そういう意味では火属性を無効化する体質も有り難迷惑に感じているらしい。
そんな信念を持つ月弥に悪魔がどのような甘言を用いようと耳を貸す道理は無い。
まあ、初対面の人間に対してナメられぬ為に締めようとする傲慢というか怖い部分もあるが、それは先程の自分が迂闊であった所もあるし、今後もアルウェン夫婦に育てられ、そこに自分も加われば改善されていくだろう。
問題はクシモ様だ。
我々、魔女達は魔界に与し魔王を崇めるが、何も知らぬ幼い子供を騙して己が復活する為の一助とするというのであれば黙ってはいられない。
しかも、ソレがアルウェン夫婦に対する当て擦りであるのなら、たとえ魔王様が相手であろうと、否、魔界の眷属であるからこそクシモ様をお諫めしてこの子を守護らねばならない。
そう覚悟を決めると、ユームは月弥との同行を申し出たのであった。
ユームは目の前の光景に目が点になった。
“守り神さま”の像が雨晒しでは可愛そうだから社を作ってあげたと月弥は云っていたが、一人で作ったにしては立派に過ぎた。
宮大工の手とは比べるべくもないが、外壁は丁寧に朱に塗られ屋根には瓦が葺いてあって日本文化に馴染みの無いユームをして厳かな気持ちにさせられたものだ。
「おはようございます!」
月弥が社の扉を開け放つと、そこにあったのは左手で股間を隠し右腕で乳房を隠す女性のようなフォルムをした岩であった。
ユームはその岩から感じ取れる魔力に封印されたクシモであると確信した。
「じゃあ、みんなお願いね。僕は“守り神さま”を綺麗にしちゃうから」
精霊達は銀髪の少女から箒や布巾を受け取ると社の内外で掃除を始める。
月弥はというと、両手の人差し指と中指を立てて岩に向けていた。
「はーい、今から美人にしてあげるからね」
ユームは卒倒しそうになる。
何故なら指先から高熱にして高圧の蒸気が噴き出して岩に当てているからだ。
恐らく火と水の魔力を合わせて蒸気を作り、風の魔力で圧縮しているのだろう。
そんなものを石と化しているとはいえ魔王に噴き着けているのだ。
しかも月弥が“守り神さま”と呼び慕っている存在にである。
「アンタ、何をやってるんだい?!」
「何って蒸気で汚れを浮かせてるんだよ。洗剤が要らないから経済的だよ」
殺菌にもなるし――布巾で浮いた汚れを拭き取りながら月弥は云う。
「ちなみに火属性が効かない存在にも熱ダメージを与えられるから面白いよ。さっき云った火の上位精霊にやったら、熱いって顔を抑えて悶えてたもの」
「本当に容赦のない子だねェ」
目や鼻、口の無い石像の顔に頬を引き攣らせたクシモを幻視しながらユームもまた頬を引き攣らせた。
「ちなみにその魔法には名前をつけているのかい?」
「そのまま『スチームジェット』ってつけたよ。凝り過ぎて後で“これって何の魔法だったっけ?”ってなっても間抜けだし」
「然もありなん。こういうのはシンプルで良いんだよ。以前、アルウェン達に対抗意識を燃やしていた別の勇者がいたんだけど、そいつがエターナルなんたらかんたらって無闇矢鱈に長い名前の必殺技や魔法を好んでいてねェ。しかも技の前に大仰な見栄を切るものだから隙だらけになっちまって、善くクシモ様の眷属やフェアラートリッターに返り討ちにあっていたものだよ」
ああ、知ってるよ――クシモの像に汚れが残って無いかチェックしがら答える。
「お父さんも云ってたよ。手柄を押し付け……じゃなくて、譲ってあげて名声を上げさせて王侯貴族からの煩わしいお誘いをみんなその勇者に受けて貰ってたって。ソレに合わせて魔界からのヘイトも引き受けてくれたから自分達は効率良く魔王討伐の旅をする事が出来たって感謝していたよ」
「そうだったね。アンタもオソロシイけど、そりゃあの男の子供だものねェ」
「そう云えばその勇者の末路って聞いてないや。どうなったか知ってる?」
「まあ、お莫迦ではあったけど腕は立つし根は善人だったからね。最後はアルウェン達とも打ち解けて共に最終決戦に挑んでいったよ。自分はライバルでもあったクシモ軍最強の騎士を引き受けてアルウェンらにクシモ様を追わせたそうだよ。最後はその騎士に打ち勝ったまでは良かったけど、その傷が元で死んじまったのさ」
あれま、と返す月弥にユームは、軽いね、とジト目になった。
「まあ、そう見せ掛けてアタシが二人を匿って遠方の国に逃がしたんだけどね」
「逃がした? その心は?」
「二人は惹かれ合っていたんだよ。けど、片や勇者、片や魔界に忠誠を誓ったフェアラートリッター、許される恋じゃない。まあ、アタシとしてはアルウェンの仲間だし世話にもなったからねェ。それに二人とも話せば好感の持てる気持ちの良い奴らさ。だからちょいと『月の大神』様に頼んで目溢ししてもらってね、逃がしたワケさね」
今じゃ五人の子を立派に育て上げた肝っ玉母さんだよ、とユームは笑った。
「クシモ様を追ってこの異世界に来ちまったアルウェンには彼女がその後どうなったか知る由もなかったから、無事だった事に安堵していたよ。笑えたのは旦那共々あの自称ライバルの勇者が女の子だって知らなかったようで吃驚していた事だねェ」
「あー、お父さんもお母さんもその人の事を『彼』って云ってたね、そう云えば」
「地元を支配していた貴族がエラい好色で毎年、年頃の娘を行儀見習いとして差し出せってお触れを出しては摘まみ喰いしていた最低なヤツでね。それから逃れる為に男として育てられたせいで自分を『俺』と云ったり無頼な言葉を遣っていたから無理も無いけど、善く見れば骨格が明らかに女だって解るだろうにねェ」
余談だが、後に月弥と引き合わされた彼女は異世界における月弥の第二の母として、第三の師として世話をする事になるのだが、“男ならテッペンを取れ。一国一城の主になれ”だの“仲間を裏切るな。友を疑うな”だの“敵の罠を畏れるな。愉しめ”だのといった男前な言葉をかけ、強大な敵を畏れずに打ち勝って自身の背中をまざまざと見せ付ける事で月弥に多大な影響を与える事になる。
「と云うかアンタはどこに行くんだい? どこか掃除に行くとか云ってたけど」
「うん、“守り神さま”のところ」
「“守り神さま”? 何の神様だい?」
「え……っと、地母神って云ってたかな? 台風が来ても日照り続きでも関係無く野菜や果物が善く育つから御利益はあると思う。物知りで面白いし僕は好きだよ。ただ、最近、よく“契約しろ”とか“願い事を三つ云え”ってしつこいから、そろそろ付き合い方変えようかなって思ってるんだ」
「契約? 本当に神様なのかい?」
「さあ? でももう十年以上も付き合ってるし、どうでもよくなっちゃってるから。それに僕が魔法で悪戯しようとすると、頭の中に直接聞こえる声でお説教してくるし、さっきも僕の事を止めてたし、悪い神様じゃないと思うよ」
“おや?”とユームは思った。
地母神? そう云えばアルウェンは、この山はクシモ様と決着をつけた場だと云っていなかったか? それにクシモ様は吸精鬼に貶められる前は、太古から崇拝されてきた強大な地母神であったと仰せだったと記憶している。
思い出した。『一頭九尾』に代表される魔王達はこれぞという実力者に契約を持ち掛けて直属の騎士とする事があると聞いた事がある。
その際、騎士となった者は俗世を捨てて魔界の住人とならなければならぬ為、未練を断ち切らせるように、また魔王に忠誠を誓わせるように、契約の見返りとして三つの願いを叶えてやらなければならぬのだとか。
こうして魔王に忠誠を誓った騎士達は世界を、人類を裏切った騎士であるとの自嘲を込めて『フェアラートリッター』と名乗っているという話だ。
まさか、この子の云う”守り神さま”とはクシモ様なのか?
この子の強大な魔力に目を着けたのか、アルウェンに対する当て付けなのか、或いはその両方か、ご自分の復活に月弥を利用しているのではあるまいか。
ユームは知らず唾を飲み下すと、精霊達を引き連れて行く背中に声を掛けた。
「アンタは願い事をしたのかい?」
「うん、お試しで一つ、“修行を投げ出したり、修行で得た力を悪い事に使わないように見守って下さい”って頼んだよ?」
振り返り、コテンと首を傾げる月弥にユームは苦笑した。
コレは難敵だ。クシモ様もさぞ頭を抱えたに違いない。
月弥に欲が無いからと云って、これ幸いと喜ぶ事は出来ないのである。
“見守って下さい”“容易いことだ”と本当に頷いては魔王として沽券に関わるのだ。
それというのもフェアラートリッターの願いをどういう形で叶えたのかというのが魔王達にとって一種のステータスとなっているからだ。
“女が欲しい”と願ったから“器量、家柄共に申し分の無い娘を世話してやった”
“強くなりたい”と願ったので“余が自慢とする武器の一つを下賜した”
“永遠に若く美しくありたい”と乞われたので“肉体を改造してやった”
などと他の魔王達に、自分は我が騎士の為にコレだけの事をしてやったのだ、貴様達にソレが出来るか、と誇ると同時に、騎士には自分はこうするだけそなたの事が必要なのだと示しているのだ。
そういう風潮の中で“見守って下さい”と云われたから“はい”と返したとなれば、魔王同士、露骨に見下す事は無いだろうが陰で何を云われるか知れたものではない。
クシモ様としては“強くなりたい”なり“何々が欲しい”なり云って欲しかったのだろうが、どうも月弥は“願いは自分で叶えるもの”という確固たる信念があるようだ。
「僕、チートって大っ嫌い。人から貰った力で強くなって何が愉しいのさ?」
ユームは漸く月弥の為人が分かってきた気がした。
この子は誇り高いのだ。人より成長が遅くとも、力が弱くとも自らを鍛えれば才能が無かろうとも強くなれるのだと証明したいのだろう。
そういう意味では火属性を無効化する体質も有り難迷惑に感じているらしい。
そんな信念を持つ月弥に悪魔がどのような甘言を用いようと耳を貸す道理は無い。
まあ、初対面の人間に対してナメられぬ為に締めようとする傲慢というか怖い部分もあるが、それは先程の自分が迂闊であった所もあるし、今後もアルウェン夫婦に育てられ、そこに自分も加われば改善されていくだろう。
問題はクシモ様だ。
我々、魔女達は魔界に与し魔王を崇めるが、何も知らぬ幼い子供を騙して己が復活する為の一助とするというのであれば黙ってはいられない。
しかも、ソレがアルウェン夫婦に対する当て擦りであるのなら、たとえ魔王様が相手であろうと、否、魔界の眷属であるからこそクシモ様をお諫めしてこの子を守護らねばならない。
そう覚悟を決めると、ユームは月弥との同行を申し出たのであった。
ユームは目の前の光景に目が点になった。
“守り神さま”の像が雨晒しでは可愛そうだから社を作ってあげたと月弥は云っていたが、一人で作ったにしては立派に過ぎた。
宮大工の手とは比べるべくもないが、外壁は丁寧に朱に塗られ屋根には瓦が葺いてあって日本文化に馴染みの無いユームをして厳かな気持ちにさせられたものだ。
「おはようございます!」
月弥が社の扉を開け放つと、そこにあったのは左手で股間を隠し右腕で乳房を隠す女性のようなフォルムをした岩であった。
ユームはその岩から感じ取れる魔力に封印されたクシモであると確信した。
「じゃあ、みんなお願いね。僕は“守り神さま”を綺麗にしちゃうから」
精霊達は銀髪の少女から箒や布巾を受け取ると社の内外で掃除を始める。
月弥はというと、両手の人差し指と中指を立てて岩に向けていた。
「はーい、今から美人にしてあげるからね」
ユームは卒倒しそうになる。
何故なら指先から高熱にして高圧の蒸気が噴き出して岩に当てているからだ。
恐らく火と水の魔力を合わせて蒸気を作り、風の魔力で圧縮しているのだろう。
そんなものを石と化しているとはいえ魔王に噴き着けているのだ。
しかも月弥が“守り神さま”と呼び慕っている存在にである。
「アンタ、何をやってるんだい?!」
「何って蒸気で汚れを浮かせてるんだよ。洗剤が要らないから経済的だよ」
殺菌にもなるし――布巾で浮いた汚れを拭き取りながら月弥は云う。
「ちなみに火属性が効かない存在にも熱ダメージを与えられるから面白いよ。さっき云った火の上位精霊にやったら、熱いって顔を抑えて悶えてたもの」
「本当に容赦のない子だねェ」
目や鼻、口の無い石像の顔に頬を引き攣らせたクシモを幻視しながらユームもまた頬を引き攣らせた。
「ちなみにその魔法には名前をつけているのかい?」
「そのまま『スチームジェット』ってつけたよ。凝り過ぎて後で“これって何の魔法だったっけ?”ってなっても間抜けだし」
「然もありなん。こういうのはシンプルで良いんだよ。以前、アルウェン達に対抗意識を燃やしていた別の勇者がいたんだけど、そいつがエターナルなんたらかんたらって無闇矢鱈に長い名前の必殺技や魔法を好んでいてねェ。しかも技の前に大仰な見栄を切るものだから隙だらけになっちまって、善くクシモ様の眷属やフェアラートリッターに返り討ちにあっていたものだよ」
ああ、知ってるよ――クシモの像に汚れが残って無いかチェックしがら答える。
「お父さんも云ってたよ。手柄を押し付け……じゃなくて、譲ってあげて名声を上げさせて王侯貴族からの煩わしいお誘いをみんなその勇者に受けて貰ってたって。ソレに合わせて魔界からのヘイトも引き受けてくれたから自分達は効率良く魔王討伐の旅をする事が出来たって感謝していたよ」
「そうだったね。アンタもオソロシイけど、そりゃあの男の子供だものねェ」
「そう云えばその勇者の末路って聞いてないや。どうなったか知ってる?」
「まあ、お莫迦ではあったけど腕は立つし根は善人だったからね。最後はアルウェン達とも打ち解けて共に最終決戦に挑んでいったよ。自分はライバルでもあったクシモ軍最強の騎士を引き受けてアルウェンらにクシモ様を追わせたそうだよ。最後はその騎士に打ち勝ったまでは良かったけど、その傷が元で死んじまったのさ」
あれま、と返す月弥にユームは、軽いね、とジト目になった。
「まあ、そう見せ掛けてアタシが二人を匿って遠方の国に逃がしたんだけどね」
「逃がした? その心は?」
「二人は惹かれ合っていたんだよ。けど、片や勇者、片や魔界に忠誠を誓ったフェアラートリッター、許される恋じゃない。まあ、アタシとしてはアルウェンの仲間だし世話にもなったからねェ。それに二人とも話せば好感の持てる気持ちの良い奴らさ。だからちょいと『月の大神』様に頼んで目溢ししてもらってね、逃がしたワケさね」
今じゃ五人の子を立派に育て上げた肝っ玉母さんだよ、とユームは笑った。
「クシモ様を追ってこの異世界に来ちまったアルウェンには彼女がその後どうなったか知る由もなかったから、無事だった事に安堵していたよ。笑えたのは旦那共々あの自称ライバルの勇者が女の子だって知らなかったようで吃驚していた事だねェ」
「あー、お父さんもお母さんもその人の事を『彼』って云ってたね、そう云えば」
「地元を支配していた貴族がエラい好色で毎年、年頃の娘を行儀見習いとして差し出せってお触れを出しては摘まみ喰いしていた最低なヤツでね。それから逃れる為に男として育てられたせいで自分を『俺』と云ったり無頼な言葉を遣っていたから無理も無いけど、善く見れば骨格が明らかに女だって解るだろうにねェ」
余談だが、後に月弥と引き合わされた彼女は異世界における月弥の第二の母として、第三の師として世話をする事になるのだが、“男ならテッペンを取れ。一国一城の主になれ”だの“仲間を裏切るな。友を疑うな”だの“敵の罠を畏れるな。愉しめ”だのといった男前な言葉をかけ、強大な敵を畏れずに打ち勝って自身の背中をまざまざと見せ付ける事で月弥に多大な影響を与える事になる。
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