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突然だが。俺はじいちゃんを尊敬してる。
考えが。生き様がカッコいい。
じいちゃんは若い頃に、自分で会社を起こした。
妻を誰よりも幸せにする為に。
ばあちゃんはいい所のお嬢さんだったそうだ。
ある日。じいちゃんは、ばあちゃんに一目惚れした。
ばあちゃんが被っていた帽子が風で飛ばされて、じいちゃんが拾ってあげたのだが、帽子を渡した時の、ばあちゃんの見せた笑顔が、心の中に眠る、何かを呼び覚まされた様な、すごい衝撃を受けたんだと言う。
それからは、あれこれ手を尽くして、アプローチをする毎日。
自分が結婚する人はこの人だって確信が有ったんだって。
だけど、昔はまだ家柄が大事にされていた時代だ、ばあちゃんの両親は大反対。
でもじいちゃんも引けない。何せ自分のこれからの人生がかかっている、結婚するなら、ばあちゃん以外考えられない。
だから
「社長になる。社長なってお金を稼いで、ばあちゃんに貧しい思いはさせない。毎日笑っていられる様に、自分と結婚して良かったと思って貰える様に、何よりも大切にします」
と駆け落ち同然で連れ出したそうだ。
会社が軌道に乗るまでは、失敗ばかりで、寝る時間も無い生活がずっと続いた。会社経営を学んだわけでも無い、ただの素人だ。
バカにされたり、騙されたり。
とにかく沢山の困難が有ったが、家に帰ってばあちゃんの顔を見ると、やっぱりこの人と結婚出来て良かった。自分は幸せだ。
と思える。
いくらでも力が湧いて頑張れたって。
子どもも産まれて、気持ちも新たに、更に寝る間を惜しんで働いた。気づけば従業員も100人を超えるほどの会社になった。
それでも止まる事無く、会社を大きくしていった。
沢山の人と出会い、助けられ、支えられ、良いライバルにも恵まれ、じいちゃんの勢いは更に増して、いつの間にか、日本で10本の指に入る程の会社になった。
その頃には、もうばあちゃんの両親とも、わだかまりは解けていた。
ばあちゃんのいつも幸せそうな姿を、遠くから見ていたそうだ。
ずっと走って来た人生、これからは、少しゆっくりばあちゃんとの時間を持とう。
そう思っていた矢先、ばあちゃんが体調を崩した。
ガンだった。
「ほんとうは、私もあの時一目惚れしていたのよ。この人が旦那様だわ。って。不思議とわかったの。あの時あなたに出会えて良かった。あなたと一緒になれて毎日幸せだった。私を愛してくれてありがとう。また来世でも私を見つけてね」
ばあちゃんの最期の言葉だ。
じいちゃんは会社からキッパリと退いた。
会社は息子である、俺の父親が引き継いだ。
いつだったか、ばあちゃんが
小さいお料理屋さんを二人でやりたいわ。
って言っていたのを思い出しての行動だった。
ばあちゃんが思い描いていた料理屋を、こうしてオープンさせもう10年か……。
『ことり』とはそんな思いの詰まった店なのだ。
考えが。生き様がカッコいい。
じいちゃんは若い頃に、自分で会社を起こした。
妻を誰よりも幸せにする為に。
ばあちゃんはいい所のお嬢さんだったそうだ。
ある日。じいちゃんは、ばあちゃんに一目惚れした。
ばあちゃんが被っていた帽子が風で飛ばされて、じいちゃんが拾ってあげたのだが、帽子を渡した時の、ばあちゃんの見せた笑顔が、心の中に眠る、何かを呼び覚まされた様な、すごい衝撃を受けたんだと言う。
それからは、あれこれ手を尽くして、アプローチをする毎日。
自分が結婚する人はこの人だって確信が有ったんだって。
だけど、昔はまだ家柄が大事にされていた時代だ、ばあちゃんの両親は大反対。
でもじいちゃんも引けない。何せ自分のこれからの人生がかかっている、結婚するなら、ばあちゃん以外考えられない。
だから
「社長になる。社長なってお金を稼いで、ばあちゃんに貧しい思いはさせない。毎日笑っていられる様に、自分と結婚して良かったと思って貰える様に、何よりも大切にします」
と駆け落ち同然で連れ出したそうだ。
会社が軌道に乗るまでは、失敗ばかりで、寝る時間も無い生活がずっと続いた。会社経営を学んだわけでも無い、ただの素人だ。
バカにされたり、騙されたり。
とにかく沢山の困難が有ったが、家に帰ってばあちゃんの顔を見ると、やっぱりこの人と結婚出来て良かった。自分は幸せだ。
と思える。
いくらでも力が湧いて頑張れたって。
子どもも産まれて、気持ちも新たに、更に寝る間を惜しんで働いた。気づけば従業員も100人を超えるほどの会社になった。
それでも止まる事無く、会社を大きくしていった。
沢山の人と出会い、助けられ、支えられ、良いライバルにも恵まれ、じいちゃんの勢いは更に増して、いつの間にか、日本で10本の指に入る程の会社になった。
その頃には、もうばあちゃんの両親とも、わだかまりは解けていた。
ばあちゃんのいつも幸せそうな姿を、遠くから見ていたそうだ。
ずっと走って来た人生、これからは、少しゆっくりばあちゃんとの時間を持とう。
そう思っていた矢先、ばあちゃんが体調を崩した。
ガンだった。
「ほんとうは、私もあの時一目惚れしていたのよ。この人が旦那様だわ。って。不思議とわかったの。あの時あなたに出会えて良かった。あなたと一緒になれて毎日幸せだった。私を愛してくれてありがとう。また来世でも私を見つけてね」
ばあちゃんの最期の言葉だ。
じいちゃんは会社からキッパリと退いた。
会社は息子である、俺の父親が引き継いだ。
いつだったか、ばあちゃんが
小さいお料理屋さんを二人でやりたいわ。
って言っていたのを思い出しての行動だった。
ばあちゃんが思い描いていた料理屋を、こうしてオープンさせもう10年か……。
『ことり』とはそんな思いの詰まった店なのだ。
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