優しくしないで

やのつばさ

文字の大きさ
12 / 21

12

しおりを挟む
 入院……。入院かぁ。嫌だ。でもアパートに一人で居ても何も出来る気がしない。動けないんだもんな。

 病室はこんなに人がいっぱいだし、顔が上げられない。怖い。一人で居たいのに……看護師さんが来た……何か話かけられてるけど、どうしよう…全然頭に入ってこないよ……いやだ…怖いよ……落ち着かなきゃ。

 でも怖いよ……。

 あ。ご飯の時間なんだ。はぁ……食べれるかな……食べなきゃな……

 泣きそうになりながら、震える左手で、ぎこちなくスプーンを持って口に運んでも、やっぱりなかなか飲み込めない……。

 つらくて涙が滲んできた時。朗らかな救いの声が聞こえて、我慢していた涙がポロッと溢れてしまった。

 うそ……。また槙斗さんが来てくれた……。

 それから、どうしてくれたのか分からないけど、3人だけの病室に変わることが出来た。

 本当に入院の準備をしてくれたみたいで、大きな荷物も持っていた。



 「部屋も3人なら、少しはいいか?無理しないでしっかり食えよ、細っこくて心配んなるわ」

 お尻の下に丸い穴の空いたクッションを敷いてくれて、優しく起こしてくれて、僕はただ槙斗さんに全身を任せてるだけだ。

 「青葉は、利き手右だろ?あーんしてみ、俺が食わせてやる」

 槙斗さんがニヒッと歯を見せて笑った。

 「……大……丈夫……で、す……。じぶ。ん。で……」

 「いーから、いーから。せっかくの付き添いなんだから、任せなさいって!」

 

 「もー腹一杯?食えねーか?よし!まあまあ食えたか、頑張ったな」

 結局、断りきれず槙斗さんに食べさせてもらってしまった……申し訳ないし、緊張でドキドキするし、恥ずかしいし、よく分からない感情が渦巻く中頑張って食べた。

 本当は左手では難しくて食べられなかったと思うし、槙斗さん以外に食べさせられるのなんて絶対に無理だ。
今日だけでも、とてもありがたかった。
 最後に、ティッシュで優しく口元を拭かれ、大きな手が頭を撫でた。

 優しさにいちいち泣きそうだ。こんなに優しくされた事なんて無いから、全部に反応してしまって、槙斗さんに変に思われちゃう……。

 気をつけなくちゃな。

 僕はろくにお礼も言えずに俯くしか出来なかった。 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

処理中です...