真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?

わらびもち

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まずはお義父様に許可を貰ってください

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 しがない伯爵家の娘である私、ビアンカ・オードリーは18の歳で格上の公爵家に嫁ぎました。

 お相手は10以上年上の、初恋拗らせまくった公爵子息。

 結婚初夜からお決まりの台詞『お前を愛することはない!』をかました香ばしい男でございました。
 ええ、娯楽小説でお馴染みのアレです。

 娯楽小説ではそこから妻を溺愛するパターンが多いですけれど、私達の間にはそれはございませんでした。
 というのも、お馴染みのソレを実際目にした私が『何この人気持ち悪い』とドン引きし、以来役目だけこなして夫婦としての歩み寄りゼロの姿勢でいたからです。

 だって……ねえ? 
 三十路過ぎた男が一回り以上年下の女に対して『愛することはない』って……。
 何でそんな上から目線なんですの? と引いてしまいますわよ。

 いえね、外見はとても美しい方ですよ。
 でも言動があまりにも子供っぽいを通り越して頭おかしい人では、ねえ?

 歩み寄るどころか、出来れば近寄りたくない人種でしたし、当然閨も共にしていないですし、夫婦というより単なる同居人でしたね。

 そんな夫から珍しくお茶の誘いがあったと思ったら、何と離婚を申し出てきました。
 
 ……お茶を飲みながらする話じゃないでしょう?

「リリアーヌが戻ってくるんだ! 嗚呼……私の真実の愛! 今度こそ離さないと心に決めたのだ、どうか私と離婚してくれ!」

 リリアーヌとは数年前に隣国に嫁いでいった我が国の王女殿下のお名前です。
 そういえば旦那様はリリアーヌ王女殿下と恋仲だったと聞いたことがありますね。
 当時の私はまだ子供だったので、詳しいことは分かりませんけども。

 その嫁いでいった王女殿下が戻ってくる?
 離婚されたってことですか?

 政略で嫁いだ王女が戻されるって、余程のことをやらかさない限りないと思うんですが?
 いったい何をして離婚されたのでしょうか?

 そう聞きたくても、舞台俳優さながらに、いかに自分が彼女を愛しているかを語る旦那様では詳しい事情は知らなそうですね。

「旦那様、事情はよく分かりましたが、離婚は無理です。御当主であるお義父様がお許しにならないでしょう」

 気持ち悪い夫と離婚できるなら喜んでしたいのですが、現当主であるお義父様がお許しになるとは思えません。
 
 何の瑕疵もない正式な妻である私と、隣国から『返品』された瑕疵ありの王女、お義父様がどちらを嫁として認めるかなんて考えるまでもありませんよ?

「はっ! そんなこと言って、本当は私の妻の座が、次期公爵夫人の座が惜しいのだろう? しかしもとはといえばその座はリリアーヌのものだったのだ! 君はそれを横から攫った立場だということを理解しているのか!?」

 あ、この方話が通じない人種でした。うっかり普通に反論してしまいましたね。
 
 今の突っ込み満載な台詞、本当ならば「攫ったといいますが、貴方の妻兼次期公爵夫人の座は長年空席だったじゃありませんか? 王女への恋心を拗らせすぎて嫁が中々こないから仕方なく私に白羽の矢が立ったんですけど? そうじゃなければ誰が貴方みたいなナルシスト中年に嫁ぎますか!」くらい言ってやりたいです。

 でも言ったところで言い争いは泥沼化しそうですし、ここはグッと堪えて一旦引きましょう。

「……旦那様、まずは当主であるお義父様に許可をもらってください。話はそれからですわ」

「駄目だ! 分からず屋の父上が許可なんて出すわけない! それよりも君から身を引く形であれば、父上だって納得せざるをえないはずだ!」

「どうして私が身を引かねばなりませんの? 貴方の正式な妻は私ですのに」

「私が愛しているのは君じゃない、リリアーヌ唯一人だけなんだ! 私の真実の愛は彼女にのみ注がれている! 愛し合う者同士が夫婦になるのは当然だろう!?」

「旦那様が誰を愛していようがどうでもいいですわ! アルシア公爵家が認めた正式な妻はこの私であり、そこに貴方の愛は何の関係もないです! とにかく、当主であるお義父様が認めない限りは私は離婚など致しませんからね!」

 しつこく他の女への『愛』を叫ぶ夫を無視し、私はその場を立ち去りました。

 あんないい歳して夢見がちな男と離婚できるのは嬉しくてたまりませんが、その始末を私にさせようとするのが非常に腹が立ちます。

 父親に許可をもらうくらい自分でおやりなさいよ!
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