12 / 86
壊れた心
しおりを挟む
「元気だったかい、姫君」
ジュリアーナの手が触れている部分の鏡面が水面のように揺れる。
すると鏡の向こうにいた青年魔女がその手を握り、鏡を通ってこちら側へとやってきた。
「ええ、お陰様で。特に本日は念願の第一歩を踏み出せましたから……。とても気分がよろしいです」
「そうか、それはよかったね。僕としては望みの為とはいえ君が僕以外と婚約をするのは複雑だけど……」
青年魔女の言葉にジュリアーナは何も返せなかった。
それというのも彼がどうしてそんな発言をするのか、その意図が分からないからだ。
(心配なさらなくてもちゃんと子供は産むという契約は果たしますのに……)
ジュリアーナくらいの年頃の乙女ならば美青年に意味深長な台詞を囁かれたら頬を染めるものだろう。だが、心が壊れかけているジュリアーナには何の感情も湧きやしない。ただ彼が自分の子を産む腹を奪われるのが嫌なのかと、何とも趣の無いことが頭に浮かぶ。
あの日、マーサを自分のせいで失った時からジュリアーナの心は徐々に壊れていった。
物事に対しての興味や関心が薄く、ダニエルへの復讐とマーサの蘇生に関することでしか喜びを見出せない。
青年魔女のような人ならざる美貌の青年から子作りを希望されたとしても恥ずかしがることなく、ただ淡々と受け入れたのもそのせいだ。やり直す前のジュリアーナであれば夫でもない殿方とそんなふしだらな真似を……と恥ずかしがったことだろう。だが、今のジュリアーナは何も感じない。それでマーサに再び会えるのなら自分の体をどうしてくれようと構わないという投げやりな気持ちで受け入れた。
「婚約したとはいえその男に触れさせてはいけないよ。君は僕のものになるのだからね」
「はい、勿論です。魔女様の御子を授かるための体を穢すような真似は致しませんわ」
「……愛を囁かれてもほだされないでね。その男、顔だけはいいようだから」
「ご安心を。もう他人の美醜に心動かされることはありません。見かけの美しさに目が眩んだ結果、大切な人を失ったのですから……」
客観的に見れば美青年が独占欲の強い台詞を囁くという乙女には垂涎ものの状況であるのに、ジュリアーナにあるのは“無”の感情のみ。返す言葉も無機質で色気もムードもないものばかりだ。
「相変わらずだね姫君は……。少しは反応してくれないと面白みに欠けるんだけどな?」
「それは申し訳ございません。しかしながらわたくしは貴方様の望むような反応はお返しできないかと」
青年魔女は何度かジュリアーナの元を訪れているが、彼女との距離は一向に縮まらない。
どれだけ甘い言葉を囁こうとも、どれだけ甘い微笑みを向けようとも、彼女が喜ぶ気配は見られない。
「冷めた性格というのも嫌いではないけどね。君は昔からその性格だった?」
「いえ……時戻りをしてからこうなりました。マーサを失ってから……何をしても心が動かされないのです」
「ふーん……なら、マーサとやらを蘇らせれば君の可愛い反応も見られるかな? なら、頑張らないとね……」
傷跡の残るジュリアーナの首元をそっと撫で、青年魔女は目を瞑る。
「……何度読み取ってもぐちゃぐちゃな術式だ。よくこれで時戻りが出来たものだと感心するよ……」
「いつも思うのですが触れただけでそんなことまで分かるものなのですか?」
「ああ、魔法を使用すると必ず痕跡が残る。といってもそれを読み取れるのは熟練の魔女だけだ」
どうやらジュリアーナの首元……マーサがつけたネックレスの痕を触るとどのような魔法が使われたかをこの青年は読み取れるようだ。何でもあの禍々しいデザインのネックレスが魔力の媒介とやらになっていたらしく、そこから痕跡を辿れるとか。なので、彼は何度もジュリアーナのもとへ訪れてはこうやって魔法の痕跡を辿っている。
「熟練の魔女様ですら難しい顔をしてしまうほどマーサが使用した魔法は複雑なものなのですね」
「いや……複雑というよりも、よくこれで成功したなというほど酷いものだ。正しいやり方が分からず色々試した結果こうなった、というようなもの。だからどの術式をどのように使用したかを一つ一つ紐解いていかなきゃならない」
「ああ……だから時間がかかるとおっしゃったのですね」
「そうだよ。まあ……それでも君が例の復讐を終えるまでには済ませておきたいと思っているよ。それで、そちらの準備はどうだい?」
「ええ、抜かりなく」
ジュリアーナは己の事情を全てこの青年に打ち明けている。
これから彼女が何を成そうとしているのかを知るのは世界で唯一この青年だけだ。
「そうか。君の成功を祈るよ。しかし、僕に任せてくれたなら人間の一人くらい簡単に破滅させられるのに」
「いいえ、これはわたくしがやらなければならないことです。そうでないと気が晴れませんから」
ひょんなことから頼もしい存在を味方に出来たことは僥倖だが、マーサ以外の件について彼に何かをお願いするつもりはない。
やり直す前の自分は何でも周囲にやってもらうことが当たり前で自ら何かをしようと思わなかった。婚約相手について調べることも、嫁ぎ先の情報を得ようとも考えなかった自分が情けなく恥ずかしい。きちんと情報を収集しておけばマーサを失うことにもならなかったと猛省し、今後は率先して動くことにした。
思えばダニエルとの婚約は不可解な点が多すぎた。
その違和感を無視した結果がこれだ。だからやり直した今回はその不可解な点を事前に調べることにした。
王家はお抱えの密偵を所有しており、王族であればそれを自由に使うことが出来る。
他国に間者として潜入することも可能な彼等が他家に入り込むことなど造作もない。
こんな便利な存在がいたというのに、使うことすら思いつかなかった過去の自分が本当に恥ずかしい。
時戻りをしたジュリアーナは早々にオーガスタ辺境伯家へ王家の密偵を潜り込ませ、情報を収集させた。有難いことに密偵というのは主である王族の指示を忠実にこなし、余計な事も言わない。何故その情報が必要なのかについて尋ねることもないのは本当に助かる。まだ婚約者でもない相手の事を何故調べるのかについて問われても返答に困るから。
かくしてオーガスタ辺境伯家に密偵を潜り込ませた結果、時戻り前に分からなかったことがいくつも判明したのだった。
ジュリアーナの手が触れている部分の鏡面が水面のように揺れる。
すると鏡の向こうにいた青年魔女がその手を握り、鏡を通ってこちら側へとやってきた。
「ええ、お陰様で。特に本日は念願の第一歩を踏み出せましたから……。とても気分がよろしいです」
「そうか、それはよかったね。僕としては望みの為とはいえ君が僕以外と婚約をするのは複雑だけど……」
青年魔女の言葉にジュリアーナは何も返せなかった。
それというのも彼がどうしてそんな発言をするのか、その意図が分からないからだ。
(心配なさらなくてもちゃんと子供は産むという契約は果たしますのに……)
ジュリアーナくらいの年頃の乙女ならば美青年に意味深長な台詞を囁かれたら頬を染めるものだろう。だが、心が壊れかけているジュリアーナには何の感情も湧きやしない。ただ彼が自分の子を産む腹を奪われるのが嫌なのかと、何とも趣の無いことが頭に浮かぶ。
あの日、マーサを自分のせいで失った時からジュリアーナの心は徐々に壊れていった。
物事に対しての興味や関心が薄く、ダニエルへの復讐とマーサの蘇生に関することでしか喜びを見出せない。
青年魔女のような人ならざる美貌の青年から子作りを希望されたとしても恥ずかしがることなく、ただ淡々と受け入れたのもそのせいだ。やり直す前のジュリアーナであれば夫でもない殿方とそんなふしだらな真似を……と恥ずかしがったことだろう。だが、今のジュリアーナは何も感じない。それでマーサに再び会えるのなら自分の体をどうしてくれようと構わないという投げやりな気持ちで受け入れた。
「婚約したとはいえその男に触れさせてはいけないよ。君は僕のものになるのだからね」
「はい、勿論です。魔女様の御子を授かるための体を穢すような真似は致しませんわ」
「……愛を囁かれてもほだされないでね。その男、顔だけはいいようだから」
「ご安心を。もう他人の美醜に心動かされることはありません。見かけの美しさに目が眩んだ結果、大切な人を失ったのですから……」
客観的に見れば美青年が独占欲の強い台詞を囁くという乙女には垂涎ものの状況であるのに、ジュリアーナにあるのは“無”の感情のみ。返す言葉も無機質で色気もムードもないものばかりだ。
「相変わらずだね姫君は……。少しは反応してくれないと面白みに欠けるんだけどな?」
「それは申し訳ございません。しかしながらわたくしは貴方様の望むような反応はお返しできないかと」
青年魔女は何度かジュリアーナの元を訪れているが、彼女との距離は一向に縮まらない。
どれだけ甘い言葉を囁こうとも、どれだけ甘い微笑みを向けようとも、彼女が喜ぶ気配は見られない。
「冷めた性格というのも嫌いではないけどね。君は昔からその性格だった?」
「いえ……時戻りをしてからこうなりました。マーサを失ってから……何をしても心が動かされないのです」
「ふーん……なら、マーサとやらを蘇らせれば君の可愛い反応も見られるかな? なら、頑張らないとね……」
傷跡の残るジュリアーナの首元をそっと撫で、青年魔女は目を瞑る。
「……何度読み取ってもぐちゃぐちゃな術式だ。よくこれで時戻りが出来たものだと感心するよ……」
「いつも思うのですが触れただけでそんなことまで分かるものなのですか?」
「ああ、魔法を使用すると必ず痕跡が残る。といってもそれを読み取れるのは熟練の魔女だけだ」
どうやらジュリアーナの首元……マーサがつけたネックレスの痕を触るとどのような魔法が使われたかをこの青年は読み取れるようだ。何でもあの禍々しいデザインのネックレスが魔力の媒介とやらになっていたらしく、そこから痕跡を辿れるとか。なので、彼は何度もジュリアーナのもとへ訪れてはこうやって魔法の痕跡を辿っている。
「熟練の魔女様ですら難しい顔をしてしまうほどマーサが使用した魔法は複雑なものなのですね」
「いや……複雑というよりも、よくこれで成功したなというほど酷いものだ。正しいやり方が分からず色々試した結果こうなった、というようなもの。だからどの術式をどのように使用したかを一つ一つ紐解いていかなきゃならない」
「ああ……だから時間がかかるとおっしゃったのですね」
「そうだよ。まあ……それでも君が例の復讐を終えるまでには済ませておきたいと思っているよ。それで、そちらの準備はどうだい?」
「ええ、抜かりなく」
ジュリアーナは己の事情を全てこの青年に打ち明けている。
これから彼女が何を成そうとしているのかを知るのは世界で唯一この青年だけだ。
「そうか。君の成功を祈るよ。しかし、僕に任せてくれたなら人間の一人くらい簡単に破滅させられるのに」
「いいえ、これはわたくしがやらなければならないことです。そうでないと気が晴れませんから」
ひょんなことから頼もしい存在を味方に出来たことは僥倖だが、マーサ以外の件について彼に何かをお願いするつもりはない。
やり直す前の自分は何でも周囲にやってもらうことが当たり前で自ら何かをしようと思わなかった。婚約相手について調べることも、嫁ぎ先の情報を得ようとも考えなかった自分が情けなく恥ずかしい。きちんと情報を収集しておけばマーサを失うことにもならなかったと猛省し、今後は率先して動くことにした。
思えばダニエルとの婚約は不可解な点が多すぎた。
その違和感を無視した結果がこれだ。だからやり直した今回はその不可解な点を事前に調べることにした。
王家はお抱えの密偵を所有しており、王族であればそれを自由に使うことが出来る。
他国に間者として潜入することも可能な彼等が他家に入り込むことなど造作もない。
こんな便利な存在がいたというのに、使うことすら思いつかなかった過去の自分が本当に恥ずかしい。
時戻りをしたジュリアーナは早々にオーガスタ辺境伯家へ王家の密偵を潜り込ませ、情報を収集させた。有難いことに密偵というのは主である王族の指示を忠実にこなし、余計な事も言わない。何故その情報が必要なのかについて尋ねることもないのは本当に助かる。まだ婚約者でもない相手の事を何故調べるのかについて問われても返答に困るから。
かくしてオーガスタ辺境伯家に密偵を潜り込ませた結果、時戻り前に分からなかったことがいくつも判明したのだった。
1,642
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?
雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。
理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。
クラリスはただ微笑み、こう返す。
「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」
そうして物語は終わる……はずだった。
けれど、ここからすべてが狂い始める。
*完結まで予約投稿済みです。
*1日3回更新(7時・12時・18時)
【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる