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婚約の内容③
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「で、でも! ならば社交はどうするのです!? アリスティアは書類上とはいえ僕の妻になるのでしょう? 社交には夫婦で出席するのが当然では!?」
「安心しろ、お前が公妾の夫になることは社交界では周知されておる。ゆえにお前は妻以外の女性をパートナーにしても許される。……むしろ今夜もあの平民女をパートナーにしていたじゃないか?」
「う……それは……。で、ですが! アリスティアと婚約しても我が家に利益はないではありませんか!」
「あるに決まっているじゃないか。公妾の夫となった家には国から定期的に手当が出るんだぞ? しかも婚約したと時点からだ」
「え……手当?」
ポカンとされてらっしゃいますが、それも婚約時に説明があったはずですよ。
それに何の利益もないのに、子息を公妾の夫にする家なんてあるわけないじゃありませんか?
「当家の領地が災害のせいで経営が赤字続きだったことを知らぬのか? アリスティア様とお前が婚約した年より定期的に国から資金を貰え、そのおかげで領民が飢えずにすんでいるのだぞ?」
「そうですよ。お前がアリスティア様の書類上の夫となることで我が領民が救われたのです。貴族として何の義務も果たさず、嫡男としての教育もサボり平民の女と乳繰り合っているお前が出来る唯一のことなのですよ? 文句を言うこと自体罰当たりな行為です」
「そうだよ。それにアリスティアと婚約することで君はあの平民女と添い遂げることができるじゃないか? 貴族が平民を配偶者にするなら身分を捨てなければならない。だが君はそうしなくとも好いた女を堂々と傍における……素晴らしいことじゃないか! しかも仕事もせずにお金も貰えて……いいことづくめだらけだ。不満なんてないだろう?」
伯爵夫妻、そしてお兄様に詰められてラウロ様は二の句が継げないようです。
「ラウロ、私がお前に平民女と別れずともよいと言った意味が分かったか? 書類上の妻となるアリスティア様と夫婦関係を築くことは不可能だからだ。それにお前が勝手に破棄を叫ぼうが何の効力もないぞ。当主は私だからな、決定権は私にある」
「あ……僕は、アリスティアに触れては駄目なのですか……?」
「駄目に決まっとるだろう! 陛下の寵姫に触れるなど、首を飛ばしたいのかお前は!」
何故かラウロ様は縋るような目を私に向けてきます。
何なのです? 気持ち悪いですね……。
「では、婚約はこのまま続行。結婚式は予定通り、ということでよいなオレガノ伯爵?」
「勿論に御座います陛下。私の教育不足により愚息がこのような騒ぎを起こして誠に申し訳ございませんでした。アリスティア様、ヴァージル小侯爵も誠に申し訳ありませぬ。ご両親にも後日改めてお詫びに伺わせていただきます」
これで騒動は終了、ということでよろしいでしょうか。
なんだかラウロ様が変な顔をしているのが気になりますけども……。
「それでは我らは本日はこれで下がらせていただきます。ほら、帰るぞラウロ! 会場にそのままにしてある平民女もきちんと回収しておけ!」
「ち、父上……彼女は私の真実の愛の相手で……」
「そんなことはどうでもよいわ! 真実だろうが偽りだろうが好きにすればよいではないか! ……それに、あの女が着ていたドレスは到底平民が買える代物ではないな? それについても帰ってゆっくり聞かせてもらうぞ……」
ヒュッと悲鳴を飲み込む音がラウロ様から聞こえてきます。
確かに、あの女性が着ていたドレスは王都の有名店のものじゃありませんか?
よく買えましたわね。まあ資金はお手当金でしょうけども。
「では私も会場に戻らせていただきますので、御前失礼いたします。アリスティア、お前はどうする?」
「小侯爵、アリスティアは少し休ませてから向かわせる。先に行ってくれるか?」
お兄様の問いかけに、私が答えるよりも早く陛下がお答えになりました。
「畏まりました。それではアリスティアをよろしくお願いいたします」
お兄様が部屋を出ますと、室内には私と陛下だけとなりました。
「安心しろ、お前が公妾の夫になることは社交界では周知されておる。ゆえにお前は妻以外の女性をパートナーにしても許される。……むしろ今夜もあの平民女をパートナーにしていたじゃないか?」
「う……それは……。で、ですが! アリスティアと婚約しても我が家に利益はないではありませんか!」
「あるに決まっているじゃないか。公妾の夫となった家には国から定期的に手当が出るんだぞ? しかも婚約したと時点からだ」
「え……手当?」
ポカンとされてらっしゃいますが、それも婚約時に説明があったはずですよ。
それに何の利益もないのに、子息を公妾の夫にする家なんてあるわけないじゃありませんか?
「当家の領地が災害のせいで経営が赤字続きだったことを知らぬのか? アリスティア様とお前が婚約した年より定期的に国から資金を貰え、そのおかげで領民が飢えずにすんでいるのだぞ?」
「そうですよ。お前がアリスティア様の書類上の夫となることで我が領民が救われたのです。貴族として何の義務も果たさず、嫡男としての教育もサボり平民の女と乳繰り合っているお前が出来る唯一のことなのですよ? 文句を言うこと自体罰当たりな行為です」
「そうだよ。それにアリスティアと婚約することで君はあの平民女と添い遂げることができるじゃないか? 貴族が平民を配偶者にするなら身分を捨てなければならない。だが君はそうしなくとも好いた女を堂々と傍における……素晴らしいことじゃないか! しかも仕事もせずにお金も貰えて……いいことづくめだらけだ。不満なんてないだろう?」
伯爵夫妻、そしてお兄様に詰められてラウロ様は二の句が継げないようです。
「ラウロ、私がお前に平民女と別れずともよいと言った意味が分かったか? 書類上の妻となるアリスティア様と夫婦関係を築くことは不可能だからだ。それにお前が勝手に破棄を叫ぼうが何の効力もないぞ。当主は私だからな、決定権は私にある」
「あ……僕は、アリスティアに触れては駄目なのですか……?」
「駄目に決まっとるだろう! 陛下の寵姫に触れるなど、首を飛ばしたいのかお前は!」
何故かラウロ様は縋るような目を私に向けてきます。
何なのです? 気持ち悪いですね……。
「では、婚約はこのまま続行。結婚式は予定通り、ということでよいなオレガノ伯爵?」
「勿論に御座います陛下。私の教育不足により愚息がこのような騒ぎを起こして誠に申し訳ございませんでした。アリスティア様、ヴァージル小侯爵も誠に申し訳ありませぬ。ご両親にも後日改めてお詫びに伺わせていただきます」
これで騒動は終了、ということでよろしいでしょうか。
なんだかラウロ様が変な顔をしているのが気になりますけども……。
「それでは我らは本日はこれで下がらせていただきます。ほら、帰るぞラウロ! 会場にそのままにしてある平民女もきちんと回収しておけ!」
「ち、父上……彼女は私の真実の愛の相手で……」
「そんなことはどうでもよいわ! 真実だろうが偽りだろうが好きにすればよいではないか! ……それに、あの女が着ていたドレスは到底平民が買える代物ではないな? それについても帰ってゆっくり聞かせてもらうぞ……」
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「小侯爵、アリスティアは少し休ませてから向かわせる。先に行ってくれるか?」
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お兄様が部屋を出ますと、室内には私と陛下だけとなりました。
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