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番外編

ラウロの婚約と勘違い

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 オレガノ伯爵家の嫡男として生まれた僕には年の離れた姉がいた。

 頭の出来が良く、礼儀作法も完璧な姉。 

 両親も親戚も出来のいい姉をもてはやし、出来の良くない僕には努力ばかりを求める。

 そんな姉と比べられるのが嫌だった。

 
 両親は姉が男であったなら跡を継がせたのにと嘆いていたのを知っている。
 だけど姉上は所詮女だ。
 どうせ他家に嫁ぐしか能がない。伯爵家を継ぐ僕の方が上なんだよ!

 そう思っていたのに……!
 まさかその姉上の子が伯爵家を継ぐことになるなんて……!

 なんで……なんでこんなことになったんだよ……!



 姉と比べられる環境が嫌になって、姉を彷彿させるような貴族令嬢も大嫌いになって、僕は逃げた。
 厳しい当主教育からも逃げ、婚約者選びからも逃げ、街で運命的な出会いをした平民の娘、ジェシーと遊び歩く。

「ねえ~、ラウロ、この指輪可愛い~欲しいなぁ~」

「うん、ジェシーによく似合いそうだね。もちろん買ってあげるよ?」

「きゃあ~! ラウロ素敵ぃ~!」

 ジェシーは素直で可愛く共にいると癒される。
 僕の母や姉のように賢しらで傲慢なところもなく、男を立ててくれる。一緒にいると楽なのだ。
 
 当主教育もサボり、ジェシーに夢中になっていることは父上に注意されている。
 だが跡継ぎとなる息子は僕一人しかいない。
 つまりはどんなに好き勝手しても父上は僕を跡継ぎから外すことはできないということだ。

 ははっ、なんだ。男に産まれたというだけで何の努力もしなくとも跡継ぎになれるのか。
 

 ならジェシーを妻に迎えてもいいんじゃないか?
 伯爵家を継ぐのは僕しかいないのだし、僕はジェシー以外子作りしたくもない。

 傲慢で可愛げのない貴族令嬢を妻になぞ、考えただけでもゾッとする。


 そう思っていたのだが、やはり貴族当主の妻には貴族令嬢しかなれないようだ。
 
 父上は嫌がる僕を無視し、勝手に侯爵家の令嬢と婚約を結ばせようとする。

「嫌です父上! 僕は傲慢で可愛げのない貴族の女を妻にしたくはありません!」

「はぁーーー……、まだそんなことを言っているのか。別にいいではないか、なのだから。交流する必要もないのだから、相手の性格などどうでもいいではないか」

 書類上だけの妻? 
 
 それは……お飾りの妻ということか?

 その後も父上が難しい話を色々言ってくるが、つまりは形だけ妻を娶ればいいということだな? 
 
 形式上の妻は貴族令嬢でも、真実愛するのも世継ぎを産むのもジェシーだと。そういうことだろう。

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