茶番には付き合っていられません

わらびもち

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不安がよぎる

「そうか、ならば早々に婚約破棄を進めてもらおう。確か私が帰国した後、正式に婚約破棄をするという約束なのだろう?」

「はい、勿論です。帰国後と言わずすぐにでも進めましょう。これ以上エルリアン嬢を王家に縛り付けておくのは申し訳ない」

 大公殿下がそう言ってくれたのは嬉しいが、それより私は皇太子殿下の発言が気になった。確かに婚約破棄を予定しているが、細かい時期……皇太子殿下の帰国後と話した覚えはない。

 多分王宮のどこかに帝国の間者が潜んでいるのだろう。
 この国警備も緩いし……そういう他国の間者とかいても気がつかなそう。
 むしろ「この国潜入も諜報も楽勝だわ」とか思われてそうで恥ずかしいな……。

「それは頼もしい。ならば……婚約破棄後、レディ・エルリアンを二度と王家に縁付かせないようにもしてもらおうか」

「はい……? えっと、それはどういうことでしょうか?」

「アレクセイ王子との婚約を破棄しても、まだ王族の男は残っているだろう? 再び王族と婚約されては困るからな」

「え? いえ、王位継承権のある男で未婚の者はアレクセイ以外おりませんよ?」

「未婚ではないが……近々伴侶がいなくなる者はいるのではないか?」

「え……? それは……まさか、兄の事を言っているのでしょうか……?」

 その問いかけに皇太子殿下は無言のまま大公殿下を見据えた。
 圧を感じさせるその視線に大公殿下は顔を青褪めさせる。

「いや、そんなまさか……だってエルリアン嬢とは親子ほど年が離れているのに……」

 大公殿下の頭にも嫌な考えが浮かんだのだろう。
 毒で弱った現王妃が亡くなった後、私がその後釜につくという考えが。

「………………いや、私の思い込みだけで決めつけるべきではないな。その可能性もあると考えるべきだ。もうこれ以上エルリアン嬢に王家が迷惑をかけることはあってはならない」

 自分の血を分けた兄を疑うのは大公殿下にとって心に負担のかかる行為だろう。
 それでも私にこれ以上の迷惑をかけまいと考えてくれるのだから、この方は本当に性根が清い。

 それを嬉しく思う反面、これだけ清い方がこの王宮で上手く立ち回れるか心配になってくる。

(この真面目で誠実な大公殿下があの頭が完全にイッちゃってる王子や、何を考えているかいまいち分からない国王に太刀打ちできるかしら……)

 この国の未来の為には国王を廃して大公殿下を即位させるべきだと傍で見て確信した。
 もう王家には関わらないからどうだっていいとは思っていたが、帝国の皇太子に見せた国王の態度はいただけない。大公殿下が危惧するように最悪戦争になったらどうするつもりだったのだろう。

 しかも謝罪に大公殿下のみが訪れて国王が来ないのもいただけない。
 こういう小さなきっかけが開戦の原因になることがあるので、王とはもっと言動に気をつけて然るべきなのに……あの国王はそれを理解していない。

 ちょっと、いやかなり鈍いだけでそういう外交に関しての態度はまともだと思っていた。
 だがそれは完全に読み違いで、あの王子の父親らしく感情的で沸点が低い。

(お父様にそれも含めて相談しないと……。ああ、なんだか大変な事になりそう)

 皇太子殿下の来訪が終われば解放されるはずだった。
 勿論殿下に求婚されたことはとても嬉しいが、出来ればその余韻に浸り続けていたかった。

 でも、あの王子とヘレンは相変わらず意味不明な行動をとるし、国王も何を企んでいるのか分からなくて気持ち悪い。それにこのまま彼等を放っておけば何かとんでもない事態になりそうな気がする。

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