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プロローグ
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別の女を愛する婚約者も、主人を裏切る侍女も、もういらない。
貴方なんて、私の婿に相応しくないわ───。
「愛しているよ、アン……」
「嬉しい、私も愛しております……セレスタン様」
身を寄せあい、愛を囁く若い男女。
互いを見つめる瞳には熱が灯り、心から愛し合っていることが分かる。
まるで恋愛物語のワンシーンのよう。
美しい。実に美しい光景。
なのだが……
(婚約者の家でよくやるわね…………)
この戯れの、唯一の観客である私は頬杖をついて白けた顔をした。
これを見て呆れるなと言う方が無理だ。
いくら美しい光景だろうと、彼等がしていることは立派な不貞。
だって男の方は私の婚約者なのだから。
そして彼等が睦みあっているその場所は王宮の一室。
男にとっては婚約者が住む場所で、女にとっては自分の職場だ。
そんな場所でよく不貞を働けるものだと感心してしまう。
(それにしてもこのシーン……実際に見ると気持ち悪いのね。挿絵で見た時はそんな風に思わなかったのに……)
私ことフランチェスカの婚約者、セレスタン・ヨーク公爵令息が王宮の一室で女と逢引することは事前に知っていた。
相手は男爵家の三女、アンヌマリー。私の宮にて侍女の職に就いている。
ありがちな話だが、王宮で出会った彼等は互いに一目で恋に落ち、以降は人知れず逢瀬を繰り返し、愛を深めているらしい。
人知れず、と言う割にはどうしてこんなに詳しく知っているのか。
それは、ここがある恋愛小説の世界で、私が転生者だからだ。
とあることがキッカケで私は前世の記憶を思い出した。
私に見られていることも知らず、呑気にイチャコラしている二人に殺意が沸々と湧き出る。
(さーて、この不届き者達を、どうやって地獄に叩き落してやろうかしらね……)
せいぜい束の間の春を楽しめばいいわ。
幸せでいられるのも、今だけなのだから───。
貴方なんて、私の婿に相応しくないわ───。
「愛しているよ、アン……」
「嬉しい、私も愛しております……セレスタン様」
身を寄せあい、愛を囁く若い男女。
互いを見つめる瞳には熱が灯り、心から愛し合っていることが分かる。
まるで恋愛物語のワンシーンのよう。
美しい。実に美しい光景。
なのだが……
(婚約者の家でよくやるわね…………)
この戯れの、唯一の観客である私は頬杖をついて白けた顔をした。
これを見て呆れるなと言う方が無理だ。
いくら美しい光景だろうと、彼等がしていることは立派な不貞。
だって男の方は私の婚約者なのだから。
そして彼等が睦みあっているその場所は王宮の一室。
男にとっては婚約者が住む場所で、女にとっては自分の職場だ。
そんな場所でよく不貞を働けるものだと感心してしまう。
(それにしてもこのシーン……実際に見ると気持ち悪いのね。挿絵で見た時はそんな風に思わなかったのに……)
私ことフランチェスカの婚約者、セレスタン・ヨーク公爵令息が王宮の一室で女と逢引することは事前に知っていた。
相手は男爵家の三女、アンヌマリー。私の宮にて侍女の職に就いている。
ありがちな話だが、王宮で出会った彼等は互いに一目で恋に落ち、以降は人知れず逢瀬を繰り返し、愛を深めているらしい。
人知れず、と言う割にはどうしてこんなに詳しく知っているのか。
それは、ここがある恋愛小説の世界で、私が転生者だからだ。
とあることがキッカケで私は前世の記憶を思い出した。
私に見られていることも知らず、呑気にイチャコラしている二人に殺意が沸々と湧き出る。
(さーて、この不届き者達を、どうやって地獄に叩き落してやろうかしらね……)
せいぜい束の間の春を楽しめばいいわ。
幸せでいられるのも、今だけなのだから───。
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