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偽物の後悔①
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フランチェスカの後ろ姿に向かってセレスタンは必死に許しを請う。
だが彼女がその声に振り向くことはなく、扉を開けて出て行ってしまった。
残されたセレスタンはただ茫然と扉に向かって手を伸ばし、声にならない声をあげて泣いた。
(私が死罪だと……? どうして、どうしてそんなことになる? この世界は私とアンヌマリーが結ばれる為にあるんじゃないのか!?)
この世界は自分とアンヌマリーが結ばれる為だけに存在するのだと。
前世の記憶があるセレスタンは長年ずっとそう信じてきた。
いくら婚約者を蔑ろにしようと、それは当然なのだと思ってきた。
そしてどんな扱いをしようとも、自分とアンヌマリーが幸せになる為ならばそれは正当な行為だと。
だが、その結果がこれだ。
死罪を宣告され、生きてここから出られないと知った。
「嘘だ……そんなはずはない。そうだ、きっと助けがくるはずだ……」
軟禁中にジェーンという助けが来たように、待っていればきっと誰かが救いの手を差し伸べてくれるはず。
だってここは”セレスタン”に優しい世界だから……。
*
あれから数日経っても助けはこない。
待てども待てども誰も……。
そんな時だった。牢番の衛兵以外の訪問者がやって来たのは。
「随分と草臥れた姿をしているな、セレスタン?」
「兄上……? もしかして助けに来てくれたのか!?」
扉を開けて現れたのはセレスタンの兄、デリックだった。
片手にワインのボトルを持ち、つまらないものを見るような視線を向けてくる。
「どうして私がお前を助けねばならない? 馬鹿も休み休み言え」
「そんな! 私は兄上の弟じゃないか!? お願いだ! このままだと殺されてしまう!」
「お前みたいな屑と同じ血が流れていると考えるだけで虫唾が走る。王女殿下に何をしようとしたかを理解していないのか? その様子だと反省もしていないようだな?」
「だって別に未遂で済んだんだぞ!? なのに何故反省しなければいけないんだ!」
「未遂でなければ我が家は取り潰しをされていただろうよ。なあ、お前はどうして婚約を解消した後に王女殿下に執着するんだ? もう何の関係もないはずだろう?」
「それは……フランチェスカと結婚しなければ貴族として生活出来ないし、アンを囲う事すら出来ないからだ!」
「アン、ねえ……。要は愛しのアンと関係を続けるために王女殿下の婿の座が必要と言うわけか。他人がいないと関係が成り立たないなんて、お前とそのアンとかいう女の関係は実に薄っぺらいのだな?」
兄の辛辣な言葉にセレスタンは二の句が継げなかった。
そんなことはないと否定したい。だが心のどこかでその通りだと思う自分がいる。
「ですが……アンもそれでいいと言ってくれました。自分は妻になれずとも、私のそばにいられるだけでいいと……」
「だろうな。お前が王女の婿の座を蹴ってアンとかいう女と愛を貫いた場合、待っているのは貧困生活だと分かっているのだろう。いい根性をしているものだ。流石は王女の婚約者のみならず姉の夫を奪った阿婆擦れは強かだな?」
「は……? え、兄上……今、何と言いましたか? 姉の夫とはどういうことです!?」
「何だお前知らなかったのか? そのアンとかいう女は王宮に来る前に姉の夫を奪って捨てたんだぞ? 他人の男を欲しがるようなくだらない女に骨抜きにされて馬鹿みたいだな」
姉の夫を奪った……?
セレスタンは言葉の意味を一瞬理解できず固まった。
自分との恋は運命だから、婚約者の王女から奪う形になっても構わない。
だが、姉の夫は違う。そんなモブを好きになり奪うなんて有り得ない。
だが彼女がその声に振り向くことはなく、扉を開けて出て行ってしまった。
残されたセレスタンはただ茫然と扉に向かって手を伸ばし、声にならない声をあげて泣いた。
(私が死罪だと……? どうして、どうしてそんなことになる? この世界は私とアンヌマリーが結ばれる為にあるんじゃないのか!?)
この世界は自分とアンヌマリーが結ばれる為だけに存在するのだと。
前世の記憶があるセレスタンは長年ずっとそう信じてきた。
いくら婚約者を蔑ろにしようと、それは当然なのだと思ってきた。
そしてどんな扱いをしようとも、自分とアンヌマリーが幸せになる為ならばそれは正当な行為だと。
だが、その結果がこれだ。
死罪を宣告され、生きてここから出られないと知った。
「嘘だ……そんなはずはない。そうだ、きっと助けがくるはずだ……」
軟禁中にジェーンという助けが来たように、待っていればきっと誰かが救いの手を差し伸べてくれるはず。
だってここは”セレスタン”に優しい世界だから……。
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あれから数日経っても助けはこない。
待てども待てども誰も……。
そんな時だった。牢番の衛兵以外の訪問者がやって来たのは。
「随分と草臥れた姿をしているな、セレスタン?」
「兄上……? もしかして助けに来てくれたのか!?」
扉を開けて現れたのはセレスタンの兄、デリックだった。
片手にワインのボトルを持ち、つまらないものを見るような視線を向けてくる。
「どうして私がお前を助けねばならない? 馬鹿も休み休み言え」
「そんな! 私は兄上の弟じゃないか!? お願いだ! このままだと殺されてしまう!」
「お前みたいな屑と同じ血が流れていると考えるだけで虫唾が走る。王女殿下に何をしようとしたかを理解していないのか? その様子だと反省もしていないようだな?」
「だって別に未遂で済んだんだぞ!? なのに何故反省しなければいけないんだ!」
「未遂でなければ我が家は取り潰しをされていただろうよ。なあ、お前はどうして婚約を解消した後に王女殿下に執着するんだ? もう何の関係もないはずだろう?」
「それは……フランチェスカと結婚しなければ貴族として生活出来ないし、アンを囲う事すら出来ないからだ!」
「アン、ねえ……。要は愛しのアンと関係を続けるために王女殿下の婿の座が必要と言うわけか。他人がいないと関係が成り立たないなんて、お前とそのアンとかいう女の関係は実に薄っぺらいのだな?」
兄の辛辣な言葉にセレスタンは二の句が継げなかった。
そんなことはないと否定したい。だが心のどこかでその通りだと思う自分がいる。
「ですが……アンもそれでいいと言ってくれました。自分は妻になれずとも、私のそばにいられるだけでいいと……」
「だろうな。お前が王女の婿の座を蹴ってアンとかいう女と愛を貫いた場合、待っているのは貧困生活だと分かっているのだろう。いい根性をしているものだ。流石は王女の婚約者のみならず姉の夫を奪った阿婆擦れは強かだな?」
「は……? え、兄上……今、何と言いましたか? 姉の夫とはどういうことです!?」
「何だお前知らなかったのか? そのアンとかいう女は王宮に来る前に姉の夫を奪って捨てたんだぞ? 他人の男を欲しがるようなくだらない女に骨抜きにされて馬鹿みたいだな」
姉の夫を奪った……?
セレスタンは言葉の意味を一瞬理解できず固まった。
自分との恋は運命だから、婚約者の王女から奪う形になっても構わない。
だが、姉の夫は違う。そんなモブを好きになり奪うなんて有り得ない。
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