ヴェルディー・アントネール執事学校

アールグレイ

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事件簿1

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「おはようございます!!お嬢様」
階段上から降りてきたお嬢様に向かいご挨拶をする。一度皆で合わせて挨拶した後は、順番に挨拶をして行く。
「おはよう」
その一人一人にきちんとお返事をしてくれるお嬢様。
「おっ、おはようございます!!お嬢様っ」
「ティノ……」
「はっ、はいっ。お嬢様っ」
「お前わざとなの?」
「なっ、何がでしょうか」
   今日はきちんと間に合わせられたと思った。
「その毎度毎度私をむかつかせる遅れた挨拶の事よ」
顎を鷲掴みにされ、上を向かさせられる。
「そんなことはっ、そんなことは無いですっ」
全身から滝汗のように汗が湧いてくる。顔まで汗が来る前に放してもらわなくては。お嬢様にご迷惑が掛かってしまう。
「次したらお前は解雇よ、お前に払うお金は無いの」
   私の頬にお嬢様の綺麗な爪が食い込む。怒りに充ちたお嬢様のお顔でさえも美しい。けれど、こんな顔をさせたかったのではございません。
「申し訳ございませんっ、お嬢様」
「何度目だと思ってるの、許さないわ」
「お嬢様お言葉ですが、ティノは言葉に少々難があるもののそれ以外はここに居る執事の誰よりも完璧でございます。お嬢様がお好きなエッグタルトや、プティング。そして、お嬢様の婚約者様であるルイス王子はティノが育てた花を大層お気に召されておりました」
隣に居り、助け舟を出してくれた執事。お嬢様からもここに居る執事全てからも慕われているアルト。
「煩いっ!!」
その彼の頬を引っぱたく。
「おっ、お、お嬢様っ叩かれるのはこの私ですっ」
「黙りなさいっ!!お前のせいよ。ティノ」
「お嬢様、お嬢様の美しい手はこのように使う為のものではありません。美しい花を愛でたり、美味しい茶菓子を食べたり、ルイス王子の為のものでございます」
その手を取り、優しく微笑むアルト。
「何事だ」
「旦那様」
「恐れ入ります」
皆で深深と挨拶をする。
「お父様」
その後だった部屋に乾いた音が鳴ったのは。
「お前はどうして下のものに優しく出来ないのだ」
「おっ、お父さまっ」
お嬢様の美しい頬に少し赤みが広がる。
「皆すまないね、どうやら私の育てかたが悪かったようだ」
その場は旦那様の指示で、上手くまとまり私の事も水に流して頂けました。
    
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