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不健康な愛
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休日、吏人の作曲風景が見たくて、吏人の部屋までついてきた。吏人には恥ずかしいから見せたくないと何度も言われたけど、俺達の間に隠し事はなしだよって押し切ったら、わかったよ、ついてきて。と言われて、自宅を出た。エレベーターで下がって、止まったフロアの一室だった。
「……吏人の家って、俺と同じマンションだったんだね~!」
「キラくんを近くで感じていたくて、引っ越しちゃった。本当は隣りが良かったんだけど……」
「はあ、」
呆れて何も言えなかった。中に入ると、モデルルームみたいな生活感のない部屋だった。この偽果物、どこで買うんだよ。
「好きにくつろいでてよ」
「それで、作曲は何処でしてるの?」
「それは、本っ当にダメだから……」
「ここまできて?」
とぶりっ子ポーズをして、ふざけて可愛くアピールしたら、吏人はすごい悩み始めて、
「んーーー、今度、キスプリ撮ってくれたらいいよ」
と条件を追加して承諾してくれた。
「そんなの何枚でも撮るよ」
客と燃やすほどプリを撮ってきた俺にはノーダメだった。それよりもはやく吏人の作曲部屋が見たくてワクワクしている。
「絶対にひかないでね!!」
と強く念押しされてから、部屋の中へと招かれた。けれど、想像以上の凄さに思わず「うわ……」と感嘆の声を漏らしてしまった。壁一面にたくさんのサイズの違う額縁が飾られていて、中には俺の写真か俺と吏人達が一緒に写っている写真が入れられている。棚にもアルバムが何冊もあり、その他に煙草の空き箱やお菓子の空箱などが飾ってあって、きっと俺があげたやつを大切に保管してんだろうな、と察しがついた。
「お前、写真撮るの好きだもんね」
「ううん。キラくんだから撮りたくなるんだよ」
「あ、この制服懐かしい!まだ持ってたんだ」
「キラくんとの思い出の品だからね」
この制服を見ていると普段、過去を振り返らない俺も次々と過去のことを思い出してきて、感傷に浸ってしまう。
「着てみてよ、吏人」
「えー、あの頃みたいに若くないよ」
「それが良いじゃん。見たいんだ」
制服姿の吏人の顔からはもうあの頃のあどけなさが感じられなくて、大人になったんだと実感した。
「どお?似合ってる?」
「ふふっ、コスプレみたいだね」
と嘲笑すると、だから言ったのに、とちょっぴり拗ねられた。その姿のまま吏人はパソコンに向き合って、曲を作り始めた。これは何?それは何?見るものが全て新鮮に見えて、子供のように吏人に質問した。吏人は始めこそ、ちゃんと答えてくれていたが、あまりにも俺が聞きすぎるせいか、そのうち適当にしか教えてくれなくなった。
「キラくん、ごめんね。集中したいの」
堪忍袋の緒が切れたように吏人がうんざりとした顔で俺を見つめてきた。
「ごめん、吏人。それじゃあ、お仕事頑張って」
さすがに悪いことをしたと俺も思って、それだけ言ってそそくさと部屋から出た。モデルルームリビングでくつろぐにしたって、特に見たいテレビもないし、モデルルームすぎて誰かから買わされそうだし、そろそろ帰るかとソファから起き上がると、部屋から出てきた吏人に抱きつかれた。
「歌詞が思い付かない……」
と弱音を吐かれた。が、作曲家の悩みなんかどう対処したらいいのか、さすがのナンバーワンホストの俺も知る由がないので、
「お茶でも入れようか?」
とありきたりな返答をした。けれど、吏人はそんなの聞いてなくて、俺の匂いを嗅いで、
「キラくんの匂い……少し煙草臭くて、ツンとする……」
とぶつぶつと呟いている。そして、それをスマホに打ち込んで、あ"あ"っ!!と癇癪に任せてスマホを投げ捨てた。
「吏人、少し休んだら?」
「僕、キラくんと付き合ってから、幸せな曲しか書けなくなっちゃった……」
Amariの魅力はそのドロドロとした愛憎だと言わんばかりにメディアが報じる。それに狂わされて吏人は自分が描きたいものを見失ってるんじゃないかって俺は心配になってるよ。
「幸せな曲でいいじゃん。幸福っていうアルバムを出そうよ」
「みんながそれを許さないんだ!僕の幸福をみんなが
、許さないんだよ」
つらそうに泣き出してしまう吏人。つらい時の吏人に寄り添ってくれていた音楽が、今になって幸せな吏人の首を絞めている。
「大丈夫だよ、吏人の音楽はどれも素敵だよ」
「……キラくん、僕のことを傷付けて」
と俺の首筋を噛んだ。俺のことを怒らせたいから。傷付けられたがっている吏人を見ると、とっても虚しくなってくる。トラウマ級の記憶で俺を感じていたいだなんて、それは何とも不健康な愛だよ。
「……吏人の家って、俺と同じマンションだったんだね~!」
「キラくんを近くで感じていたくて、引っ越しちゃった。本当は隣りが良かったんだけど……」
「はあ、」
呆れて何も言えなかった。中に入ると、モデルルームみたいな生活感のない部屋だった。この偽果物、どこで買うんだよ。
「好きにくつろいでてよ」
「それで、作曲は何処でしてるの?」
「それは、本っ当にダメだから……」
「ここまできて?」
とぶりっ子ポーズをして、ふざけて可愛くアピールしたら、吏人はすごい悩み始めて、
「んーーー、今度、キスプリ撮ってくれたらいいよ」
と条件を追加して承諾してくれた。
「そんなの何枚でも撮るよ」
客と燃やすほどプリを撮ってきた俺にはノーダメだった。それよりもはやく吏人の作曲部屋が見たくてワクワクしている。
「絶対にひかないでね!!」
と強く念押しされてから、部屋の中へと招かれた。けれど、想像以上の凄さに思わず「うわ……」と感嘆の声を漏らしてしまった。壁一面にたくさんのサイズの違う額縁が飾られていて、中には俺の写真か俺と吏人達が一緒に写っている写真が入れられている。棚にもアルバムが何冊もあり、その他に煙草の空き箱やお菓子の空箱などが飾ってあって、きっと俺があげたやつを大切に保管してんだろうな、と察しがついた。
「お前、写真撮るの好きだもんね」
「ううん。キラくんだから撮りたくなるんだよ」
「あ、この制服懐かしい!まだ持ってたんだ」
「キラくんとの思い出の品だからね」
この制服を見ていると普段、過去を振り返らない俺も次々と過去のことを思い出してきて、感傷に浸ってしまう。
「着てみてよ、吏人」
「えー、あの頃みたいに若くないよ」
「それが良いじゃん。見たいんだ」
制服姿の吏人の顔からはもうあの頃のあどけなさが感じられなくて、大人になったんだと実感した。
「どお?似合ってる?」
「ふふっ、コスプレみたいだね」
と嘲笑すると、だから言ったのに、とちょっぴり拗ねられた。その姿のまま吏人はパソコンに向き合って、曲を作り始めた。これは何?それは何?見るものが全て新鮮に見えて、子供のように吏人に質問した。吏人は始めこそ、ちゃんと答えてくれていたが、あまりにも俺が聞きすぎるせいか、そのうち適当にしか教えてくれなくなった。
「キラくん、ごめんね。集中したいの」
堪忍袋の緒が切れたように吏人がうんざりとした顔で俺を見つめてきた。
「ごめん、吏人。それじゃあ、お仕事頑張って」
さすがに悪いことをしたと俺も思って、それだけ言ってそそくさと部屋から出た。モデルルームリビングでくつろぐにしたって、特に見たいテレビもないし、モデルルームすぎて誰かから買わされそうだし、そろそろ帰るかとソファから起き上がると、部屋から出てきた吏人に抱きつかれた。
「歌詞が思い付かない……」
と弱音を吐かれた。が、作曲家の悩みなんかどう対処したらいいのか、さすがのナンバーワンホストの俺も知る由がないので、
「お茶でも入れようか?」
とありきたりな返答をした。けれど、吏人はそんなの聞いてなくて、俺の匂いを嗅いで、
「キラくんの匂い……少し煙草臭くて、ツンとする……」
とぶつぶつと呟いている。そして、それをスマホに打ち込んで、あ"あ"っ!!と癇癪に任せてスマホを投げ捨てた。
「吏人、少し休んだら?」
「僕、キラくんと付き合ってから、幸せな曲しか書けなくなっちゃった……」
Amariの魅力はそのドロドロとした愛憎だと言わんばかりにメディアが報じる。それに狂わされて吏人は自分が描きたいものを見失ってるんじゃないかって俺は心配になってるよ。
「幸せな曲でいいじゃん。幸福っていうアルバムを出そうよ」
「みんながそれを許さないんだ!僕の幸福をみんなが
、許さないんだよ」
つらそうに泣き出してしまう吏人。つらい時の吏人に寄り添ってくれていた音楽が、今になって幸せな吏人の首を絞めている。
「大丈夫だよ、吏人の音楽はどれも素敵だよ」
「……キラくん、僕のことを傷付けて」
と俺の首筋を噛んだ。俺のことを怒らせたいから。傷付けられたがっている吏人を見ると、とっても虚しくなってくる。トラウマ級の記憶で俺を感じていたいだなんて、それは何とも不健康な愛だよ。
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