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第一話「目覚めた女」
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大陸国家アガスティア建国。その発端は古代に遡る。地球という星は一度
文明が滅び、そして神の御業によって再度蘇った。新たなエーテルという
物質を人間たちは発見し、それを活用することによって文明が急速に発達。
更なるエネルギーを欲して、人間たちは再び国同士、人同士で奪い合いを開始。
アガスティアの建国はその醜い争いに終止符を打つという大義が始まりだった。
貪欲な国を取り込み、手中に収め、幾度となく戦争を繰り返した末にようやく
大陸全土を支配する大陸国家アガスティアが出来上がった。
アガスティアに点在する国家経営の研究所が襲撃される。研究員がいない
夜間を狙った襲撃。厳重な警備を掻い潜り、中に侵入して何かを盗む気だ。
警備員たちが一斉に研究所内を駆け巡る。
「いたぞ!解放者一味だ!」
解放者とは特定の一人ではなく、組織の名前だ。かつては筋の通った大義名分で
国家は運営されていた。誰もが誇ることが出来る国だった。だが今やアガスティアは
歪んでしまったのだ。国をあるべき姿に戻す。混乱することを覚悟し、抱えている
闇を懺悔するべきと考えた者たちによって結成されたレジスタンスだ。軍を抜け、
彼らに手を貸す人間も多く存在するという話だ。大陸を統べる国の軍組織が解放者の
殲滅に手こずる理由。解放者の構成員たる若い男。顔を全て仮面で覆い隠している。
彼の顔は非常に特徴がある。身元を可能な限り隠すために与えられたものだ。
無駄な戦闘を控えながら、研究所の最奥に辿り着いた男は大きな結晶体の前に
立った。
「これが星の根源の一つ、マイア・ハートか」
星の根源と呼ばれる七つの巨大な結晶。マイア、エレクトラ、ターユゲテー、
アルキュオネー、ケライノ、ステロペー、メロペーの七つだ。地表に出現した星の
根源そのもの。心臓とも呼べるもの。このマイア・ハートは最も新しい戦争にて
大陸国家アガスティアの軍が奪い取った代物だ。国はこれの中に人間を閉じ込めて
いるのだ。それを開放する前に一人の男が阻止するべく立ちはだかった。屈強な男は
年齢を感じさせない肉体を有する。国で開発された特注のガントレットを胸の前で
打ち鳴らす。
「仮面を取ったら、どうだ?他の奴らは知らんが、俺はもう正体を知っている。
その剣術と動き、努力だけでは到底無理な動きだ。努力に加え、それに相応しい
才能が無ければな…。そして、その天才を忘れるわけが無かろう」
フィリップ・メイスン大佐。かつての上司、教官の前で青年は仮面を取った。端正な
顔立ちには醜く焼け爛れた痕が残っている。ポーカーフェイスを崩さず彼はかつての
教官に頭を下げる。
「流石です。メイスン教官」
「フン、お前を鍛えたのは俺だぞ?エリアス」
エリアス・ハロウズ、元アガスティア軍軍人。当時の階級は中尉で、第三師団団長を
務めていた。
「国家に盾突く者への処罰。お前の首を貰い受ける」
イクシディア連合軍との戦争が最も新しい大陸の戦い。エリアスも参戦している。
あの戦争を終えてから軍部でも内部分裂が進んでいたのだ。エリアス率いる
第三師団の大半が軍を抜けて、抵抗組織である解放者一味に加わった。
フィリップの拳打を正面から受けず、エリアスは剣を使って受け流しながら後退。
何を考えているかフィリップは理解している。自分の拳でマイア・ハートのガラス
障壁を破壊させようとしているのだろうが、そんなヘマはしない。
「そうです。貴方はそのようなミスはしない―」
「貴様ッ!?」
倒れ込んだのは操作パネル。緊急用のレバーを下げた。室内で点滅する赤い警告灯。
アナウンスも流れ始め、シャッターが次々と閉じていく。エリアスはフィリップを
押しのける。二人の間を隔てたシャッターはフィリップ自慢のガントレットでも
破壊することが出来なかった。
マイア・ハートが光の粒子になり、一所に結集する。眠っている少女こそがこの
物語の主役である。エリアスは彼女を抱き上げ、非常口から避難。
取り残されたフィリップは腕の痛みを感じ、口角を上げた。
「腕を上げたようだな」
アガスティア第四研究所襲撃事件から三日後。エリアスを含めた解放者の構成員と
助け出された少女ルーチェ・ミューズは顔を合わせる。
「え、手を貸してくれるのか?」
「え、手を貸して欲しいって言ったんじゃ…?」
人手が必要、それにルーチェが望むものは解放者としても望んでいる。空白の記憶を
ルーチェは知りたいのだ。だからダメ元だった協力の依頼はすんなり受け入れられ、
話は滞り無く進んだ。
「私に指導者になって欲しいって話、引き受けるよ。でも至らない部分が沢山
あるだろうから、その時は手を貸して欲しい」
解放者創設時の写真。中央に立っているのはルーチェにそっくりな女性。
この組織の最初のリーダーは一人の女性だったのだ。イクシディア王国の王族として
生まれ、そして国の為に戦うことを決意した。国の為だけではない。敵国である
アガスティアの間違いを正そうとしていたのだ。
「拠点を見て回ると良い。ここには来ていないメンバーもいるだろうからさ」
この時を以てエリアスは指導者代理という座を降りた。そして正統な指導者として
ルーチェが解放者を取りまとめることになる。目的はルーチェ自身の記憶を
蘇らせること、そしてアガスティアの抱える罪を公にすることだ。
文明が滅び、そして神の御業によって再度蘇った。新たなエーテルという
物質を人間たちは発見し、それを活用することによって文明が急速に発達。
更なるエネルギーを欲して、人間たちは再び国同士、人同士で奪い合いを開始。
アガスティアの建国はその醜い争いに終止符を打つという大義が始まりだった。
貪欲な国を取り込み、手中に収め、幾度となく戦争を繰り返した末にようやく
大陸全土を支配する大陸国家アガスティアが出来上がった。
アガスティアに点在する国家経営の研究所が襲撃される。研究員がいない
夜間を狙った襲撃。厳重な警備を掻い潜り、中に侵入して何かを盗む気だ。
警備員たちが一斉に研究所内を駆け巡る。
「いたぞ!解放者一味だ!」
解放者とは特定の一人ではなく、組織の名前だ。かつては筋の通った大義名分で
国家は運営されていた。誰もが誇ることが出来る国だった。だが今やアガスティアは
歪んでしまったのだ。国をあるべき姿に戻す。混乱することを覚悟し、抱えている
闇を懺悔するべきと考えた者たちによって結成されたレジスタンスだ。軍を抜け、
彼らに手を貸す人間も多く存在するという話だ。大陸を統べる国の軍組織が解放者の
殲滅に手こずる理由。解放者の構成員たる若い男。顔を全て仮面で覆い隠している。
彼の顔は非常に特徴がある。身元を可能な限り隠すために与えられたものだ。
無駄な戦闘を控えながら、研究所の最奥に辿り着いた男は大きな結晶体の前に
立った。
「これが星の根源の一つ、マイア・ハートか」
星の根源と呼ばれる七つの巨大な結晶。マイア、エレクトラ、ターユゲテー、
アルキュオネー、ケライノ、ステロペー、メロペーの七つだ。地表に出現した星の
根源そのもの。心臓とも呼べるもの。このマイア・ハートは最も新しい戦争にて
大陸国家アガスティアの軍が奪い取った代物だ。国はこれの中に人間を閉じ込めて
いるのだ。それを開放する前に一人の男が阻止するべく立ちはだかった。屈強な男は
年齢を感じさせない肉体を有する。国で開発された特注のガントレットを胸の前で
打ち鳴らす。
「仮面を取ったら、どうだ?他の奴らは知らんが、俺はもう正体を知っている。
その剣術と動き、努力だけでは到底無理な動きだ。努力に加え、それに相応しい
才能が無ければな…。そして、その天才を忘れるわけが無かろう」
フィリップ・メイスン大佐。かつての上司、教官の前で青年は仮面を取った。端正な
顔立ちには醜く焼け爛れた痕が残っている。ポーカーフェイスを崩さず彼はかつての
教官に頭を下げる。
「流石です。メイスン教官」
「フン、お前を鍛えたのは俺だぞ?エリアス」
エリアス・ハロウズ、元アガスティア軍軍人。当時の階級は中尉で、第三師団団長を
務めていた。
「国家に盾突く者への処罰。お前の首を貰い受ける」
イクシディア連合軍との戦争が最も新しい大陸の戦い。エリアスも参戦している。
あの戦争を終えてから軍部でも内部分裂が進んでいたのだ。エリアス率いる
第三師団の大半が軍を抜けて、抵抗組織である解放者一味に加わった。
フィリップの拳打を正面から受けず、エリアスは剣を使って受け流しながら後退。
何を考えているかフィリップは理解している。自分の拳でマイア・ハートのガラス
障壁を破壊させようとしているのだろうが、そんなヘマはしない。
「そうです。貴方はそのようなミスはしない―」
「貴様ッ!?」
倒れ込んだのは操作パネル。緊急用のレバーを下げた。室内で点滅する赤い警告灯。
アナウンスも流れ始め、シャッターが次々と閉じていく。エリアスはフィリップを
押しのける。二人の間を隔てたシャッターはフィリップ自慢のガントレットでも
破壊することが出来なかった。
マイア・ハートが光の粒子になり、一所に結集する。眠っている少女こそがこの
物語の主役である。エリアスは彼女を抱き上げ、非常口から避難。
取り残されたフィリップは腕の痛みを感じ、口角を上げた。
「腕を上げたようだな」
アガスティア第四研究所襲撃事件から三日後。エリアスを含めた解放者の構成員と
助け出された少女ルーチェ・ミューズは顔を合わせる。
「え、手を貸してくれるのか?」
「え、手を貸して欲しいって言ったんじゃ…?」
人手が必要、それにルーチェが望むものは解放者としても望んでいる。空白の記憶を
ルーチェは知りたいのだ。だからダメ元だった協力の依頼はすんなり受け入れられ、
話は滞り無く進んだ。
「私に指導者になって欲しいって話、引き受けるよ。でも至らない部分が沢山
あるだろうから、その時は手を貸して欲しい」
解放者創設時の写真。中央に立っているのはルーチェにそっくりな女性。
この組織の最初のリーダーは一人の女性だったのだ。イクシディア王国の王族として
生まれ、そして国の為に戦うことを決意した。国の為だけではない。敵国である
アガスティアの間違いを正そうとしていたのだ。
「拠点を見て回ると良い。ここには来ていないメンバーもいるだろうからさ」
この時を以てエリアスは指導者代理という座を降りた。そして正統な指導者として
ルーチェが解放者を取りまとめることになる。目的はルーチェ自身の記憶を
蘇らせること、そしてアガスティアの抱える罪を公にすることだ。
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