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ハイヒブルック市
#1 取り残されたベリアとサンオ
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「これが最後か…」
そう言って私は二年分貯まっていた即席麺の最後の二つを取った。
これが無くなれば私たちはまともな食事が出来なくなる。
「ベリア、早くしとくれ。」
「分かったから、じいちゃんはじっとしてて。」
サンオ・ハイヒブルックこと、私の祖父は3年前から肺炎を起こし、発作が起こりながらも今はなんとか生きている。
山の水源から取れた水を沸かしお湯にする。
即席麺に注ぎニ分間待つ。
「最後の晩餐じゃな。」
「朝だけどね。」
「「いただきます。」」
これで最後。やっと最後。今日の夜、私は祖父と自害する。
「ごちそうさま。少し出てくるね。」
「おう。怪物に気をつけてな。」
「はーい」
私たちの家は元あった家の裏山にある物置だ。ハイヒブルック市。元々はありふれた街だったが、2年前に巨大生物が現れてから、人々がいなくなり、今では退廃したゴーストタウンだ。巨大生物が現れてから出現するようになった怪物が時々街を徘徊している。
ハゲ山の場所まで行き、街の奥を見渡す。大木が生えるように聳え立つ巨大生物が静かにその姿を見せている。大きな壁のようだ。大き過ぎてどんな姿をしているのかが分からない。
見下ろした街にはかつての面影は無く、廃墟ばかりが並んでいた。
私は十七歳で死ぬのか。まだ何もやっていないのに。こんなところでこんな人生で死ぬのか。生き延びる努力をしていた訳ではないが、今になって少しだけ悔しい。でも、今日で終わりだ。苦しみも、痛みも全部消えて無くなる。
「来世はもうちょっとだけ幸せになりたいな。」
そう呟いた自分に少し驚いたが、希望を持っていくのは悪くないのかもしれない。
乗っていた岩から降りると何処からか声がした。祖父の声ではない。
私は一目散に声のする方へ行った。
山を少し降りることになったが関係なかった。鼻をつくような匂いに耐えながら走った。酸欠になりそうだ。林を抜けた先にいたのは怪物だった。
「伏せて!!」
その声と同時に現れたガスマスクをつけ、隊服のようなものを着た男性が怪物に勢いよく斬りかかる。
すると、男性の剣は怪物の胸を真っ二つにした。怪物は気味の悪い叫び声を発しながら砂のように風化していき消えていった。
「大丈夫ですか!?
要救助者、発見!!至急ガスマスクを持ってきてください!!」
突然のことに私の体のありとあらゆる細胞が止まった気がした。
五〇二八年九月四日。
私が十八になった日のことだった。
白い点:主人公のいる場所
虹色の部分:巨大生物が占める面積
オレンジ色の部分:胞子が蔓延している面積
そう言って私は二年分貯まっていた即席麺の最後の二つを取った。
これが無くなれば私たちはまともな食事が出来なくなる。
「ベリア、早くしとくれ。」
「分かったから、じいちゃんはじっとしてて。」
サンオ・ハイヒブルックこと、私の祖父は3年前から肺炎を起こし、発作が起こりながらも今はなんとか生きている。
山の水源から取れた水を沸かしお湯にする。
即席麺に注ぎニ分間待つ。
「最後の晩餐じゃな。」
「朝だけどね。」
「「いただきます。」」
これで最後。やっと最後。今日の夜、私は祖父と自害する。
「ごちそうさま。少し出てくるね。」
「おう。怪物に気をつけてな。」
「はーい」
私たちの家は元あった家の裏山にある物置だ。ハイヒブルック市。元々はありふれた街だったが、2年前に巨大生物が現れてから、人々がいなくなり、今では退廃したゴーストタウンだ。巨大生物が現れてから出現するようになった怪物が時々街を徘徊している。
ハゲ山の場所まで行き、街の奥を見渡す。大木が生えるように聳え立つ巨大生物が静かにその姿を見せている。大きな壁のようだ。大き過ぎてどんな姿をしているのかが分からない。
見下ろした街にはかつての面影は無く、廃墟ばかりが並んでいた。
私は十七歳で死ぬのか。まだ何もやっていないのに。こんなところでこんな人生で死ぬのか。生き延びる努力をしていた訳ではないが、今になって少しだけ悔しい。でも、今日で終わりだ。苦しみも、痛みも全部消えて無くなる。
「来世はもうちょっとだけ幸せになりたいな。」
そう呟いた自分に少し驚いたが、希望を持っていくのは悪くないのかもしれない。
乗っていた岩から降りると何処からか声がした。祖父の声ではない。
私は一目散に声のする方へ行った。
山を少し降りることになったが関係なかった。鼻をつくような匂いに耐えながら走った。酸欠になりそうだ。林を抜けた先にいたのは怪物だった。
「伏せて!!」
その声と同時に現れたガスマスクをつけ、隊服のようなものを着た男性が怪物に勢いよく斬りかかる。
すると、男性の剣は怪物の胸を真っ二つにした。怪物は気味の悪い叫び声を発しながら砂のように風化していき消えていった。
「大丈夫ですか!?
要救助者、発見!!至急ガスマスクを持ってきてください!!」
突然のことに私の体のありとあらゆる細胞が止まった気がした。
五〇二八年九月四日。
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虹色の部分:巨大生物が占める面積
オレンジ色の部分:胞子が蔓延している面積
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