ロウの人 〜 What you see 〜

ハイヒブルック市

#5 巨大生物、ワイル

「行っちゃった。」
「大丈夫。おじいさんにはすぐに会えるよ。」
「アリーさんは優しいですね。」
「さん付けなんてやめてよ！二個しか変わらないのに！」
「え！？二十歳！？」
「そうよ。クックも二十歳よ。」

ものすごくびっくりした。前線に立って怪物を倒し、救助を行う人達が二十歳と私と二つしか変わらないなんて。

「いや、でもさん付けでお願いします。そうじゃないと落ち着かないので。」
「かわいいなぁ。ベリアは。うふふ」

「おーい！二人とも喋ってないでご飯食べて、早く寝るよ！！明日の出発午前四時だって！！」
「分かったー！今行く！…………
少し予定より早いわね。何かあったのかしら。」

祖父が行ってしまった方角の空は他の空よりかは明るかった。だが、空の全体は暗く寂しい色をしていた。
基地は新ハイヒブルック駅よりも南に位置するハイヒブルック駅を拠点としていた。だいぶ廃れてしまっていて気づかなかったが、中はそこまで変わっていなかった。
隊員たちは元あった定食屋の中で食事をしているらしい。私たちも今日はそこで晩御飯を食べた。

「あの、そのシュ…シュ…」
「シュタンツファーよ。」
「あ！そのシュタンツファー市にはどうやっていくんですか？」
「馬車だよ。……モグモグ」
「馬車！？」
「地震やワイルのせいで地形変動がすごくてね。…ゴクッ……電車の線路がボロボロなんだよ。それに環境破壊だって自動車も廃棄。水素自動車が開発中だったけど資産がなくてパー。今は馬車が手っ取り早いんだよ。」
「クック。食べながら話すのやめて。」

クックが言うには巨大生物、通称ワイルはハイヒブルック市の隣町、ハイヒフロウス市とミアンガ市の二つの街を潰すほど大きく、ワイルに近ければ近いほど被害は大きく、遠ければ遠いほど被害は小さいそうだ。確かに、考えれば分かることだ。木が生える時と同じ原理だ。樹木に近ければ近いほど地面は盛り上がる。これもちょっとした地形変動だ。
ワイルの出現時には一時間以上の地震が続いた。一時間だけであれほどの大きさになった。きっとあの場所に住んでいた人々は息をする間もなく粉々になったのだろう。

巨大生物ワイル。この人達がどれほどの事を知っているのか分からないが、私の知っている事は一つ。
この世界の形を大きく変えてしまったモノということだ。