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ノイシュロス市
#39 アイザーの血筋
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飛行場に向かう途中、私は気になっていたアイズ教について聞いていた。
「アイズ教っていうのは要はこの國の礎だよ。」
そう答えたのはクロだった。クロは続けて説明した。
「アイズ教は約千年前にできた宗教でね。この國を治め始めるときの指針になったものからできたものなんだよ。初代のアイザー教皇は第五次人類滅亡期が終わった後、この土地で混乱に陥っていた人々を助けていたそれはそれは良い人だったらしくてね。よく分かんないけど、色んな人から感謝されていたんだって。だけど、人間はいつか死ぬだろう。初代が亡くなってから人々は初代を神として崇めたんだ。そして出来たのがアイズ教ってわけ。」
「え、でも私が習ったのに宗教なんて一ミリとも…。」
「まあ、そうなるわよね。」
割って入ってきたのは黙って話を聞いていたアリーだった。
「どうしてですか?」
「九代目までは確かに宗教を主体として治めていたけれど、それからはアイザー家内部が無理な税を取り立てたり、酒や女で遊んだり…要は人間の質が落ちていったということね。それで、宗教を重んじる人たちとの論争になって、アイザー家は國をまとめる政治機関と宗教を分離してお互いを独立した別の物として扱ったの。」
「だから、モウカさんは敵ではないんですね。」
「そういうこと。」
少し前を歩いていたルコとラコが話を聞いていたのか、こちらに振り向いてアリーの話に付け加えるように話し始めた。
「元々、ナマイトダフの復興はアイズ教のおかげだったんだよ。」
「今のアイザー教皇のママさんとお嫁さんがアイザー家から出家してシスターになられて、まだ実績の無かったポリチカを支えてくれていたの。」
「あのおばあちゃんはアイズ教のお偉いさんらしくて、ノイシュロスに連れてけって上がうるさいから仕方なく連れてきたんだけど…、もう付き合ってらんないよ…。」
そう言って、項垂れるルコは本当に疲れているようだった。
そんなことを話しているうちに私たちは広くひらけた飛行場についた。そこにはすでにモウカが立って待っていた。小型の哨戒機のような飛行機が近くに止まっている。くすんだ青色に塗られている飛行機から近づいてきた隊員三名がルコに敬礼をし、難しそうな話をし始めた。私は女性隊員に連れられ、飛行機へと案内された。アリーがついてきていないことに気がつき、後ろを振り向いたが、何やらクロと話しているようだった。きっと私抜きで話したいことがあるのだろうと私は女性隊員と先に飛行機に行った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ベリアに貸した服、ココの?」
アリーはベリアの後についていくのをやめ、後ろにいたクロに話しかけた。
「……うん、そうだよ。」
「もう二年か。」
「うん。」
クロは俯いたままアリーを見ようとしない。アリーもそれを見かねてかクロを見ようとはしなかった。しかし、クロは意を決して声を出した。
「あの時はごめん!私が間違ってた。ココが死んだのはアリーのせいじゃない。正気じゃなかった…。あんな酷いこと言ってごめん!」
深々と頭を下げたクロの肩は小刻みに揺れていた。
「人殺し…か…。」
「ほんとに…ごめん。」
アリーは目を瞑りながら昔のことを思い出していた。同じ班だった同期のことを。弱気だったが誰よりも優しかった隊員。班の花だった隊員。クロの幼馴染だった隊員。任務中に飛行型ディモンに連れ去られ、目の前で殺された隊員。ココ・ダルビのことを。
「うん。許すよ。クロが元気そうで良かった。少なくともココの私物を誰かに貸せるくらいになったてことが分かって安心した。」
「……もう、正気取り戻したからね。ココのことは忘れようとしたら元気になったよ。」
「うん。今はその方がいい。」
二人は少し黙った後、お互いを見て少し笑った。
辛い記憶が、後悔が思い出に変わる瞬間だった。
「アイズ教っていうのは要はこの國の礎だよ。」
そう答えたのはクロだった。クロは続けて説明した。
「アイズ教は約千年前にできた宗教でね。この國を治め始めるときの指針になったものからできたものなんだよ。初代のアイザー教皇は第五次人類滅亡期が終わった後、この土地で混乱に陥っていた人々を助けていたそれはそれは良い人だったらしくてね。よく分かんないけど、色んな人から感謝されていたんだって。だけど、人間はいつか死ぬだろう。初代が亡くなってから人々は初代を神として崇めたんだ。そして出来たのがアイズ教ってわけ。」
「え、でも私が習ったのに宗教なんて一ミリとも…。」
「まあ、そうなるわよね。」
割って入ってきたのは黙って話を聞いていたアリーだった。
「どうしてですか?」
「九代目までは確かに宗教を主体として治めていたけれど、それからはアイザー家内部が無理な税を取り立てたり、酒や女で遊んだり…要は人間の質が落ちていったということね。それで、宗教を重んじる人たちとの論争になって、アイザー家は國をまとめる政治機関と宗教を分離してお互いを独立した別の物として扱ったの。」
「だから、モウカさんは敵ではないんですね。」
「そういうこと。」
少し前を歩いていたルコとラコが話を聞いていたのか、こちらに振り向いてアリーの話に付け加えるように話し始めた。
「元々、ナマイトダフの復興はアイズ教のおかげだったんだよ。」
「今のアイザー教皇のママさんとお嫁さんがアイザー家から出家してシスターになられて、まだ実績の無かったポリチカを支えてくれていたの。」
「あのおばあちゃんはアイズ教のお偉いさんらしくて、ノイシュロスに連れてけって上がうるさいから仕方なく連れてきたんだけど…、もう付き合ってらんないよ…。」
そう言って、項垂れるルコは本当に疲れているようだった。
そんなことを話しているうちに私たちは広くひらけた飛行場についた。そこにはすでにモウカが立って待っていた。小型の哨戒機のような飛行機が近くに止まっている。くすんだ青色に塗られている飛行機から近づいてきた隊員三名がルコに敬礼をし、難しそうな話をし始めた。私は女性隊員に連れられ、飛行機へと案内された。アリーがついてきていないことに気がつき、後ろを振り向いたが、何やらクロと話しているようだった。きっと私抜きで話したいことがあるのだろうと私は女性隊員と先に飛行機に行った。
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「ベリアに貸した服、ココの?」
アリーはベリアの後についていくのをやめ、後ろにいたクロに話しかけた。
「……うん、そうだよ。」
「もう二年か。」
「うん。」
クロは俯いたままアリーを見ようとしない。アリーもそれを見かねてかクロを見ようとはしなかった。しかし、クロは意を決して声を出した。
「あの時はごめん!私が間違ってた。ココが死んだのはアリーのせいじゃない。正気じゃなかった…。あんな酷いこと言ってごめん!」
深々と頭を下げたクロの肩は小刻みに揺れていた。
「人殺し…か…。」
「ほんとに…ごめん。」
アリーは目を瞑りながら昔のことを思い出していた。同じ班だった同期のことを。弱気だったが誰よりも優しかった隊員。班の花だった隊員。クロの幼馴染だった隊員。任務中に飛行型ディモンに連れ去られ、目の前で殺された隊員。ココ・ダルビのことを。
「うん。許すよ。クロが元気そうで良かった。少なくともココの私物を誰かに貸せるくらいになったてことが分かって安心した。」
「……もう、正気取り戻したからね。ココのことは忘れようとしたら元気になったよ。」
「うん。今はその方がいい。」
二人は少し黙った後、お互いを見て少し笑った。
辛い記憶が、後悔が思い出に変わる瞬間だった。
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