歌で小説書いてみた

Penguin

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あと,2点

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 キュッ。
 熱気を帯びた体育館にただシューズの音が響き渡る。

 バシュッ。
 ボールが打たれる音がする。

 ドンッ。
 相手に仲間が打ったアタックがとられた。
 そのまま相手が2回ボールを打ち、体勢を整えて決めようとする。

 トン。
 ネットを超えてただ落とされただけのボールが床に落ちた。



 “クソッ”



 今現在の得点は朱雀高24-24玄武高。

 玄武高にさっき点を取られてデュースとなってしまった。これが最後のセット。このセットを取ったら、勝てる。

 玄武高は全国大会のベスト8入りを当たり前とする強豪校だ。だからこの県内に玄武に勝る高校はないと言われていた。そう言わしめるのはブロック力(守備)、アタック力(攻撃)、チームワークこれらすべてにおいての能力がとてつもなく高いからだ。

 しかし、そんな強豪校に拮抗し始めているのが我が朱雀高校である。

 ここまでのし上がってくるのにどれだけ俺らが苦労したことか。

 まず、血反吐を吐きそうなくらい走り込みをした。やり始めた当初は走り終わった後、とても歩ける気はしなかったが、今では息が上がるくらいだ。ちゃんと歩ける。
 次に、ひたすらボールと触れ合った。時にボールと喧嘩することもあったが何とか技術が上達した。
 最後に、気力を保つことだ。どんなに試合で負けていても、落ち着いて冷静に対処する。これには並々ならぬ精神力が必要なためコーチが常に鬼だった。もう思い出したくもない。

 これまで散々コーチに鍛えられてきた。
 コーチの方をちらりと見る。コーチはいつも以上に熱を持った視線で俺を、否、俺たちを見ていた。そして俺と、目が合う。

 『お れ は お ま え ら を し ん じ て い る』
 『か っ て こ い』

 ああ、コーチはいつも俺が欲しい言葉をくれる。俺は仲間を見た。

 「次、取り返すぞ!!」
 「「おう!!」」


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