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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
52にゃん
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水が、奔流となって襲い来る。
突然何者かによって突き飛ばされ、貯水池に落ちた私は溺れていた。
"丁度良いですわ、このままドラゴンのところまで行きましょう――しかし、その前に!"
ウンディーネの声。
水の流れが変化する――数秒の後、私は突然訪れた変化に戸惑っていた。
あれ…苦しく、ない?
"――水の精霊石を持っていたら、水中でも息が出来るようになるんですの"
はっとして鈴を見ると、サファイアのような美しい石が増えている。
しかし息が出来るものの喋る事は難しいようだ。
"さあ、行きますわよ!"
水が私を中心として流れだし、水中の竜巻のように激しく渦を描いた。
瞬きの後。
私は忽然と水の中に立っていた。
水は浅く広く広がり、くるぶしまで水に浸かっている。
周辺を見渡すと、そこが巨大な洞窟になっていることが分かる。
洞窟の中はぼんやりと明るい。
天井には網目のように根っこが絡まっているのが見えた。あれは恐らく世界樹の根っこだろう。
崩れかけた、人工的な建造物が少し離れた場所にあった。
"ヒカリゴケですわ――本来、ここは別の入り口がありますの。あれは、気の遠くなるような遥かな昔……ドワーフ達が築き上げた、ドラゴンが神として信仰されていた時代の神殿ですわ"
それなのに今ではドラゴンを捕える檻の役割をしているんですのよ、ウンディーネは皮肉げに言う。
目を凝らすと、虹色の光が遠くに見える――結界は地面を中心として、空と地中を抉るように球状に展開されているのだろう。
ここは、結界の中――どこかに、ドラゴンがいる。
「ウンディーネ、連れて来てくれてありがとうにゃ!」
ドキドキしながらさっき水中で言えなかったお礼を言った。
"どういたしまして。ドラゴンはこちらにいますの"
ウンディーネは空中を泳ぐように移動し、古の神殿の方向へと私を誘った。
***
神殿に近づくにつれ、規則的な音が聞こえてくる。
洞窟に響き、木霊する――コーラ瓶の口に唇を当ててボーッと吹いた感じに似ている、そんな不気味で奇妙な音だった。
"あれはドラゴンの呼吸音ですわ"
水の精霊王の説明。
私は俄かに恐ろしくなって、風・地・火の精霊王を呼んだ。
たとえ私がドラゴンに勝てる力を持っていても、外見的な怖さというものがある。
人間はゴキブリを楽勝で殺せるけど、生理的な恐ろしさはどうしようもないのと同じだ。
"へー、世界樹の畑の下ってこうなってるのね! あれってドラゴン?ちょっと見てくるわ―!"
シルフィードは興味の赴くまますっ飛んで行った。
"上に吸い上げられる魔素はかなりのものですじゃー。今はニャンコの魔力をもらっておるが、一人ではここに居たくないですじゃー"
"同感だな。ここは俺にとってアウェーだわ。火属性のドラゴンはなおさら辛いだろうな……"
ノームとサラマンダーは私にくっついている。
"ニャンコ、大丈夫ですわよ。私がいる限りドラゴンは暴れられませんもの"
ウンディーネが安心させるように言ってくれた。
精霊の皆が居てくれる――どんなにドラゴンが怖い外見だって大丈夫だろう。
私は少し心強くなった。
近づくにつれ、次第にビートを上げていく心臓、大きくなるドラゴンの呼吸音。
私はとうとうそろりと神殿へ足を踏み入れる。
"ニャンコー、こっちこっちー! だーいじょうぶ、ドラゴン寝てるわー!"
呑気なシルフィードが崩れかけた場所で手を振っているのが見えた。
ヒタヒタと冷たい石畳を歩いて近づく。
風の精霊王は崩れた場所から見える景色を指さした。
"あそこ"
神殿はその小規模の地底湖をぐるり囲むようにして建っていたようだ。
シルフィードが指さすその先――地底湖の中心にそれは翼を折り畳み、静かに水に浸かっていた。
赤い鱗の、巨大な生ける伝説――
「ドラゴンにゃ……」
体長十数メートルはあろうかというそれはそれは大きなドラゴンが、神聖な佇まいをもってそこにいた。
突然何者かによって突き飛ばされ、貯水池に落ちた私は溺れていた。
"丁度良いですわ、このままドラゴンのところまで行きましょう――しかし、その前に!"
ウンディーネの声。
水の流れが変化する――数秒の後、私は突然訪れた変化に戸惑っていた。
あれ…苦しく、ない?
"――水の精霊石を持っていたら、水中でも息が出来るようになるんですの"
はっとして鈴を見ると、サファイアのような美しい石が増えている。
しかし息が出来るものの喋る事は難しいようだ。
"さあ、行きますわよ!"
水が私を中心として流れだし、水中の竜巻のように激しく渦を描いた。
瞬きの後。
私は忽然と水の中に立っていた。
水は浅く広く広がり、くるぶしまで水に浸かっている。
周辺を見渡すと、そこが巨大な洞窟になっていることが分かる。
洞窟の中はぼんやりと明るい。
天井には網目のように根っこが絡まっているのが見えた。あれは恐らく世界樹の根っこだろう。
崩れかけた、人工的な建造物が少し離れた場所にあった。
"ヒカリゴケですわ――本来、ここは別の入り口がありますの。あれは、気の遠くなるような遥かな昔……ドワーフ達が築き上げた、ドラゴンが神として信仰されていた時代の神殿ですわ"
それなのに今ではドラゴンを捕える檻の役割をしているんですのよ、ウンディーネは皮肉げに言う。
目を凝らすと、虹色の光が遠くに見える――結界は地面を中心として、空と地中を抉るように球状に展開されているのだろう。
ここは、結界の中――どこかに、ドラゴンがいる。
「ウンディーネ、連れて来てくれてありがとうにゃ!」
ドキドキしながらさっき水中で言えなかったお礼を言った。
"どういたしまして。ドラゴンはこちらにいますの"
ウンディーネは空中を泳ぐように移動し、古の神殿の方向へと私を誘った。
***
神殿に近づくにつれ、規則的な音が聞こえてくる。
洞窟に響き、木霊する――コーラ瓶の口に唇を当ててボーッと吹いた感じに似ている、そんな不気味で奇妙な音だった。
"あれはドラゴンの呼吸音ですわ"
水の精霊王の説明。
私は俄かに恐ろしくなって、風・地・火の精霊王を呼んだ。
たとえ私がドラゴンに勝てる力を持っていても、外見的な怖さというものがある。
人間はゴキブリを楽勝で殺せるけど、生理的な恐ろしさはどうしようもないのと同じだ。
"へー、世界樹の畑の下ってこうなってるのね! あれってドラゴン?ちょっと見てくるわ―!"
シルフィードは興味の赴くまますっ飛んで行った。
"上に吸い上げられる魔素はかなりのものですじゃー。今はニャンコの魔力をもらっておるが、一人ではここに居たくないですじゃー"
"同感だな。ここは俺にとってアウェーだわ。火属性のドラゴンはなおさら辛いだろうな……"
ノームとサラマンダーは私にくっついている。
"ニャンコ、大丈夫ですわよ。私がいる限りドラゴンは暴れられませんもの"
ウンディーネが安心させるように言ってくれた。
精霊の皆が居てくれる――どんなにドラゴンが怖い外見だって大丈夫だろう。
私は少し心強くなった。
近づくにつれ、次第にビートを上げていく心臓、大きくなるドラゴンの呼吸音。
私はとうとうそろりと神殿へ足を踏み入れる。
"ニャンコー、こっちこっちー! だーいじょうぶ、ドラゴン寝てるわー!"
呑気なシルフィードが崩れかけた場所で手を振っているのが見えた。
ヒタヒタと冷たい石畳を歩いて近づく。
風の精霊王は崩れた場所から見える景色を指さした。
"あそこ"
神殿はその小規模の地底湖をぐるり囲むようにして建っていたようだ。
シルフィードが指さすその先――地底湖の中心にそれは翼を折り畳み、静かに水に浸かっていた。
赤い鱗の、巨大な生ける伝説――
「ドラゴンにゃ……」
体長十数メートルはあろうかというそれはそれは大きなドラゴンが、神聖な佇まいをもってそこにいた。
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