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1000年王国で待ち合わせ
さようなら、こんにちは。
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――会員制スポーツクラブにて
白いシャトルが軽やかに宙を舞う。
四乃のスマッシュを、Cが紙一重で受け流す。
ラリーが続くたびに、体育館の床に響くシューズ音がリズムを刻んだ。
平日の夜。外は小雨。クラブ内は湿度を帯びながらも、朗らかな笑い声で満ちている。
「四乃さん、お上手ですね」
「そちらこそ」
二人は息を弾ませながら笑い合った。
その時――背後のガラス戸が静かに開く音がした。
振り返ると、そこに立っていたのは四郎だった。
黒いジャケットの襟を正しながら、ゆっくりと室内に入ってくる。
その動作のどこをとっても、“圧”があった。
「楽しそうだなぁ、オマエたち」
穏やかな声。
だが空気が少し、沈む。
Cが思わずラケットを持つ手を緩めた。
「スポーツで身体を動かすのは、よいことだ」
四郎はコートの縁に立ち、ゆっくりと周囲を見回した。
「俺など、なかなか剣道の稽古をする時間も取れん」
その言い方には、乾いた笑みが添えられていた。
まるで“お前たちは暇でいいな”という皮肉を、柔らかく包んで放るように。
四乃は何かを言いかけて口を閉じ、Cは無言でタオルを取りに行く。四郎は腕を組んで言った。
「聞かなくていいのか? 四乃。“お兄様、いったいなにをしにいらっしゃったの?”」
「お兄様……?」
四郎はどこか様子がおかしい。喜びと哀しみが奇妙に混在している。Cはそそくさと、帰り支度を始めた。
「C、黙って帰るのは失礼じゃないのか?」
「では、挨拶して帰りますね。ごきげんよう」
「止まれ。……誰が帰っていいと、言った?」
Cは思わず立ち止まった。
声の温度は低くない。だが、その静けさの奥に、確かな“命令”がある。
四郎は一歩、Cの方へ進む。
磨かれた体育館の床が、硬質にきしんだ。
「帰る前に、ひとつだけ。――いい話を持ってきた」
そう言うと、四郎はポケットからスマートフォンを取り出した。
画面は、iOS。Rのアプリが映っている。
「なかなかよく出来た地図アプリだな。
これに目を付けた出資のセンス、悪くない。――まさか俺の目の届かぬところで、こんなことをしていたとはな」
四郎は指先で画面をなぞりながら、わずかに口角を上げた。
その笑みには、感心と侮蔑が奇妙に混ざっている。
「……今なら、許してやってもいい」
空気が変わった。
Cがわずかに顔を上げると、四郎は静かに告げた。
「オマエたちは、結婚するんだ」
一瞬、時間が止まったようだった。
四乃が息を呑み、Cが硬直する。
四郎は続けた。
「嬉しいだろう? ずっと待っていたんだから。
こんな“お遊戯”みたいな時間を過ごさずに済む。
これからは堂々と会える。家族として、な」
穏やかな声。
けれど、その穏やかさが――何よりも恐ろしい。
白いシャトルが軽やかに宙を舞う。
四乃のスマッシュを、Cが紙一重で受け流す。
ラリーが続くたびに、体育館の床に響くシューズ音がリズムを刻んだ。
平日の夜。外は小雨。クラブ内は湿度を帯びながらも、朗らかな笑い声で満ちている。
「四乃さん、お上手ですね」
「そちらこそ」
二人は息を弾ませながら笑い合った。
その時――背後のガラス戸が静かに開く音がした。
振り返ると、そこに立っていたのは四郎だった。
黒いジャケットの襟を正しながら、ゆっくりと室内に入ってくる。
その動作のどこをとっても、“圧”があった。
「楽しそうだなぁ、オマエたち」
穏やかな声。
だが空気が少し、沈む。
Cが思わずラケットを持つ手を緩めた。
「スポーツで身体を動かすのは、よいことだ」
四郎はコートの縁に立ち、ゆっくりと周囲を見回した。
「俺など、なかなか剣道の稽古をする時間も取れん」
その言い方には、乾いた笑みが添えられていた。
まるで“お前たちは暇でいいな”という皮肉を、柔らかく包んで放るように。
四乃は何かを言いかけて口を閉じ、Cは無言でタオルを取りに行く。四郎は腕を組んで言った。
「聞かなくていいのか? 四乃。“お兄様、いったいなにをしにいらっしゃったの?”」
「お兄様……?」
四郎はどこか様子がおかしい。喜びと哀しみが奇妙に混在している。Cはそそくさと、帰り支度を始めた。
「C、黙って帰るのは失礼じゃないのか?」
「では、挨拶して帰りますね。ごきげんよう」
「止まれ。……誰が帰っていいと、言った?」
Cは思わず立ち止まった。
声の温度は低くない。だが、その静けさの奥に、確かな“命令”がある。
四郎は一歩、Cの方へ進む。
磨かれた体育館の床が、硬質にきしんだ。
「帰る前に、ひとつだけ。――いい話を持ってきた」
そう言うと、四郎はポケットからスマートフォンを取り出した。
画面は、iOS。Rのアプリが映っている。
「なかなかよく出来た地図アプリだな。
これに目を付けた出資のセンス、悪くない。――まさか俺の目の届かぬところで、こんなことをしていたとはな」
四郎は指先で画面をなぞりながら、わずかに口角を上げた。
その笑みには、感心と侮蔑が奇妙に混ざっている。
「……今なら、許してやってもいい」
空気が変わった。
Cがわずかに顔を上げると、四郎は静かに告げた。
「オマエたちは、結婚するんだ」
一瞬、時間が止まったようだった。
四乃が息を呑み、Cが硬直する。
四郎は続けた。
「嬉しいだろう? ずっと待っていたんだから。
こんな“お遊戯”みたいな時間を過ごさずに済む。
これからは堂々と会える。家族として、な」
穏やかな声。
けれど、その穏やかさが――何よりも恐ろしい。
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