水曜日のざれごと

テジリ

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そしてあなたは?【過去編】

図書室のアウトサイダー

 図書室の重い木製のドアを引くと、
 そこには「正解」のない世界が広がっていた。
 
 かつての玉理鈴にとって、
 図書室は「地味なヤツ」か「必死なガリ勉」が集う吹き溜まり。

 せっかくの休み時間に図書室に行くことは、
 社交性の欠如を意味し、仲良しグループからの脱落を意味する。

 だからこそ、彼女は喉が渇くほど本を読みたくても、
 教室でスマホを弄り、クラスメイトの話題に笑い声を響かせる、
「ノーマル中学生」を演じ続けてきた。

(……でも、今はもう、関係ないんだ☆ 👻📚✨)

 学校司書が、カウンター奥で作業しているだけ。
 誰も玉理鈴の行動をジャッジしない。

 ⦿

 これまでの玉理鈴が、
 わざわざ図書室に出向けば……

「えー何読んでるの?」
「休み時間も勉強するとか笑笑」
「委員長だからって真面目すぎーw」

 玉理鈴が行くなら私も一緒に行く~♡と、
 図書室まで着いて来た、
 仲良しクラスメイト達からの、無邪気な言葉による刃。
 そこへ更に、学校司書からの容赦ない叱責。

「静かにしなさい!! 図書室では私語禁止💢」

 玉理鈴は、内心もやあ🌀👻

(私のせいじゃないのに……😮‍💨)

 だが図書室では酷く浮いていて、目立つのも確かだ。
 仲良しグループメンバーのうち、
 玉理鈴以外は、元から図書室に用もないし。

「みんな、やっぱかえろー👻💦」

 玉理鈴は、すごすごと教室に引き返す。
 仲良しクラスメイト達は帰りの廊下で、
 学校司書への怒りを表明。

「なにアイツ? 私ら悪者にしてさ~」
「ホントそれ! 玉理鈴もそう思うよね?」
「あはは! そうそうそう☆👻📉」
「もう図書室なんか行かな~い」

 玉理鈴以外の三人は、『だよね~♪』と意気投合。
 これで益々行きづらくなってしまった。

 ⦿

 だがそれも……今は昔。
 玉理鈴は背表紙の列をなぞりながら、
 ゆっくりと書棚の間を歩いた。
 
 日本史や世界史の学習漫画、
 海外のヤングアダルト翻訳小説、
 アニメや実写映画の原作小説。
 
 今朝、父に言われた「給料回収装置」という言葉が、
 すとんと胸に落ちる。
 
(そうだ。
 出席日数を稼ぎながら、本も読める……
 これって、最高のバイトじゃない? 💸👻)

 玉理鈴は、読書机に腰を下ろした。
 
 ふと、さっき保健室で見た光景を思い出す。
 リスカ跡のあった女子。
 そして、のんきに本を抱えて現れたアイツ😆📚️。

 一般教室からの脱落者…いや、玉理鈴も含め、
 総員撤退したのだ。保健室に。

 玉理鈴は、いちばん読みやすい学習漫画を開く。
 パラパラとページを捲って、邪馬台国の卑弥呼の時代。
 漫画部分から解説部分まで読み耽る。
 邪馬台国の所在地は近畿説? 九州説?
 文字のない時代、容易に記録は失われる。
 次に飛鳥奈良、それから平安。

(はじめは……万葉仮名。
 それから女向けには、かな文字。
 漢字とカタカナは、男用の文字だった。
 だから清少納言は漢文の読み書きを勝ち誇り📝😤、
 紫式部は能ある鷹で爪を隠しつつも、
 あの人全然なってないんだから~📖✍🤬って、
 紫式部日記で、清少納言批判☆👻🧨)

 そして今の玉理鈴は、義務教育中の身。
 江戸時代の寺子屋での読み書き算盤どころか……

 国語・英語・数学・生物・化学・地理・歴史・公民
 音楽・美術・技術家庭科・保健体育・総合学習etc…

「ひぇぇ~、私って、やる事山積み……📚️👻💦」

 でも、学生の本分が勉強というならば、
 なぜ人付き合いが欠かせないのだろう?
 なぜ虐めが絶えないのだろう?

 玉理鈴は、首をひねった。

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