【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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かはそに朝

跡目

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黒髪の重臣が扇をパタパタさせ、軽く眉を上げて言う。

「いや、婿探しなんやけど……長上、天媛とアレコレあるんやないやろな?」

黒髪の重臣は、引き続き扇を軽く揺らしつつ説明する。

「候補三人はな。

 宮中の上達部の青年……母方で微弱ながら天媛と血縁ある。

 蓮角氏の若君……先祖の姻戚関係がある。

 父方の男……天媛の父君の身内やが、血筋の権威は、ハッキリ言ってない」

白髪混じりの重臣が茶を一口含み、眉をひそめる。

「それぞれ長所短所あるが、やっぱり誰を婿にするのがええと思う?」

髭の重臣も小刻みに扇を振りつつ、やや笑いながら。

「いやほんま、ズバリ答えてくれや。
 アンタの話で決めるわけやない、ただ聞いとるだけやん」

威厳ある重臣は扇を広げ、皆を見渡して声を落ち着ける。

「せや、遠慮せんでええ。聞かせてくれや」

長上はにこやかに笑う。

「それでしたらーー英賀手(あがで)一択です」

「はああっ? おま、何言うてはりますのん」

かはそに朝の天媛と、
その外戚である、せうびん氏。

せうびん氏は代々ーーかはそに朝宗主の正妃を排出し、宗主を継がない婿を取る。

今居る壮健なせうびん氏の直系は、まだ幼いお嬢様・英賀手だけ。

天媛をねえねと呼び、大層な仲良しだ。



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