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かはそに朝
祭のあと
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祖霊祭は無事終わり、川岸の賑わいも徐々に収まった。
天音と英賀手は、鞠遊びの後、川辺の木陰に腰を下ろし、並んで笑い合っていた。
「天音……さっきの“お兄ちゃん”って、誰のことなん?」
英賀手の好奇心は止まらない。
天音はニコニコ笑いながら指差した。
「アレアレ! アレがわたしのお兄ちゃん!」
そして満面の笑みで叫ぶ。
「長上!」
英賀手は呆気に取られ、ただぽかんと口を開けるしかなかった。
✦
祭事が一段落し、宮中に戻ろうとする天媛と夜比古だが、挨拶列が引きも切らない。
その中には長上も、門客を伴って並んでいた。
「天媛、夜比古さま、ご結婚おめでとうございます」
夜比古はにっこりと微笑みながら首を横に振った。
「まだ先の話ですよ、長上。
でも、これでやっと……自分の子供を持てます」
その言葉に、天媛は思わず凍りついた。
(……はあ? いきなり子供の話やて?)
天媛の心はざわつく。
英賀手はまだ幼く、手がかかる養女やというのに。
夜比古も次期養父として、英賀手を可愛がっとったんちゃうか?
養女に来てまだ間もないんやぞ、いきなり実子誕生なんてーー英賀手戸惑うに決まってるやん。
(……ほんまにわかっとんのか? 英賀手のこと、ちゃんと考えとるんか?)
(仮に実子ができたら、もう英賀手に、見向きもせんようになるんちゃうん?)
天媛の脳裏には、母のことがちらついた。
天媛の時から既に難産で苦しみ、次子の誕生で、母子ともに亡くなった母の姿——。
その痛みと恐怖を、夜比古は想像もできへん——そんな気がした。
(あんたは何も……失わんで済むもんな)
(生まれよが生まれまいが、命まで取られるわけちゃうもん……)
さらに、心の奥で小さな怒りが芽吹く。
子供を作ることで、宗女との婚姻関係を維持したい……夜比古の、軽率で無理解な言葉の裏に、支配欲まで透けて見える気がした。
天媛はそっと、遠くで女の童とはしゃぐ英賀手の姿を見つめる。
小さな養女の無垢な笑顔が、余計に天媛の苛立ちを募らせた。
胸の底で決意が固まる。
守るべき者を抱きしめるために、少しでも強うならな、と。
すると、急に吐き気がこみ上げて来て、思わず袖で顔を覆う。
「うっ……あかん、なんやこれ……」
「天媛! いったいどうしたんです、まだお身体の具合が……?」
夜比古が心配そうに、天媛の背中をさすった。
「おやおやぁ、まさか……オメデタですか?」
長上の隣で控えていた門客が、隅に置けないなあ、という顔をしながら言った。
「無礼だぞ、門客。私はともかく、天媛まで愚弄するか!」
「夜比古さま! 申し訳ございません。
門客には、私からあとできっちり処罰を与えますので、どうかこの場はお収めください!」
長上が平伏すると、周囲の目はなんだ、なんだ?と釘付けになった。
夜比古は咳払いする。
「わかった。ーーだが、両属朝は、我々の婚儀では、席をはずしてもらう。縁起が悪いのでな」
「夜比古……勝手に決めんなや、あて通さずに……」
「天媛。お加減が悪いのですし、もう退出されてはいかがですか?
挨拶は、代わりに私が」
天音と英賀手は、鞠遊びの後、川辺の木陰に腰を下ろし、並んで笑い合っていた。
「天音……さっきの“お兄ちゃん”って、誰のことなん?」
英賀手の好奇心は止まらない。
天音はニコニコ笑いながら指差した。
「アレアレ! アレがわたしのお兄ちゃん!」
そして満面の笑みで叫ぶ。
「長上!」
英賀手は呆気に取られ、ただぽかんと口を開けるしかなかった。
✦
祭事が一段落し、宮中に戻ろうとする天媛と夜比古だが、挨拶列が引きも切らない。
その中には長上も、門客を伴って並んでいた。
「天媛、夜比古さま、ご結婚おめでとうございます」
夜比古はにっこりと微笑みながら首を横に振った。
「まだ先の話ですよ、長上。
でも、これでやっと……自分の子供を持てます」
その言葉に、天媛は思わず凍りついた。
(……はあ? いきなり子供の話やて?)
天媛の心はざわつく。
英賀手はまだ幼く、手がかかる養女やというのに。
夜比古も次期養父として、英賀手を可愛がっとったんちゃうか?
養女に来てまだ間もないんやぞ、いきなり実子誕生なんてーー英賀手戸惑うに決まってるやん。
(……ほんまにわかっとんのか? 英賀手のこと、ちゃんと考えとるんか?)
(仮に実子ができたら、もう英賀手に、見向きもせんようになるんちゃうん?)
天媛の脳裏には、母のことがちらついた。
天媛の時から既に難産で苦しみ、次子の誕生で、母子ともに亡くなった母の姿——。
その痛みと恐怖を、夜比古は想像もできへん——そんな気がした。
(あんたは何も……失わんで済むもんな)
(生まれよが生まれまいが、命まで取られるわけちゃうもん……)
さらに、心の奥で小さな怒りが芽吹く。
子供を作ることで、宗女との婚姻関係を維持したい……夜比古の、軽率で無理解な言葉の裏に、支配欲まで透けて見える気がした。
天媛はそっと、遠くで女の童とはしゃぐ英賀手の姿を見つめる。
小さな養女の無垢な笑顔が、余計に天媛の苛立ちを募らせた。
胸の底で決意が固まる。
守るべき者を抱きしめるために、少しでも強うならな、と。
すると、急に吐き気がこみ上げて来て、思わず袖で顔を覆う。
「うっ……あかん、なんやこれ……」
「天媛! いったいどうしたんです、まだお身体の具合が……?」
夜比古が心配そうに、天媛の背中をさすった。
「おやおやぁ、まさか……オメデタですか?」
長上の隣で控えていた門客が、隅に置けないなあ、という顔をしながら言った。
「無礼だぞ、門客。私はともかく、天媛まで愚弄するか!」
「夜比古さま! 申し訳ございません。
門客には、私からあとできっちり処罰を与えますので、どうかこの場はお収めください!」
長上が平伏すると、周囲の目はなんだ、なんだ?と釘付けになった。
夜比古は咳払いする。
「わかった。ーーだが、両属朝は、我々の婚儀では、席をはずしてもらう。縁起が悪いのでな」
「夜比古……勝手に決めんなや、あて通さずに……」
「天媛。お加減が悪いのですし、もう退出されてはいかがですか?
挨拶は、代わりに私が」
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