【全年齢版】媛彦談《ひめひこだん》〜足掻手《アガデ》〜

テジリ

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ごめんねぇぇ長上!! 昔の男なんか今すぐ始末するから……!そこをどいてぇ!!

【自作】瓜二つ

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 長上が戴冠の容貌を褒めた。
 霧彦は動揺を隠しきれない。
 自分の取り柄は、顔しかないと思っているから、なおさらだ。

「そんなののどこが可愛いんだろう。
 身内同士の間で無理矢理育まれた生命なのに」

 霧彦は、さらに内心、思わずには居られない。

(いっそ死ぬか、男に産まれて殺されていれば、 
 ――タマル冠だって、あそこまで追いつめられずに済んだだろうに)

 長上は、霧彦の猛言を鼻で笑った。
 タマル冠とレイヨ冠には一応、同意自体はある。

 ✦

 霧彦は、両手を伸ばした。

「長上、最近手がしびれて困ってるんです。
 なんだかピリピリして……握ってくれたら治るかも」

 ーーだからもう、赤ん坊をあやすのは止めて。

 しかし長上は、霧彦には見向きもしない。

「子供返りもいい加減にしろ。
 その態度も、女を知れば少しは改まるんじゃないのか?
 媛相手なら構わん。誰とでも番えばいい」

 霧彦は驚き、視界から一切の色が消えた。

 ✦

 杼媛が、クスクス嗤う。

「聞きましたよ。
 霧彦も見放されて可哀想に。
 一人ぼっちで、泣いていらっしゃるんですね?」

 霧彦は、杼媛を睨みつけた。

「私は泣いてない。勝手に決めつけないでください」

 杼媛は、急に霧彦へ抱きついた。

 ーーああ気持ち悪い。理解者面して抱き着くなよ。

 ✦

 杼媛は、急にしくしくと泣き出した。
 霧彦は、ウンザリだ。
 どいつもこいつも情緒不安定。
 媛が次々とこんなんじゃ、長上も大変だな。

「ねえね……あたくしだけ生きててごめんなさい」

「っ、まさかそれ、アメヒメの事じゃ」

「ええ。それとーー霧彦はご存じでしたか?
 あやぎり朝の、その由来」

 ✦

 ふたりは場所を移動した。
 杼媛は、霧彦に嘘八百を並べたてる。
 どうせ、このひさごは市井の出。
 英賀手宗女の真実など知りようもない。
 いっそ本当に、こうであれば……と、
 杼媛が考え続けて狂った日々に裏打ちされた、迫真の名演技。

 ――天媛処刑前夜。

「あたくしは最期まで付きっきりで、ねえねのお世話を命じられていました。
 といっても、いつも通りお喋りして甘えていただけで、
 はたから見れば、どちらが世話係なのやらという感じでしたけど」

 霧彦は、杼媛の話に呆気にとられた。

「いつまでも楽しく過ごしていたら、
 あたくしはついうっかりとーー
 海媛(うみひめ)の台所へ行くのを、忘れておりました」

 杼媛の瞳が、妖しく爛々と光り輝き出した。

「海媛は誠実なお人柄だし、当時から料理もお得意で。
 毒殺を警戒した長上によって、ねえね専属のお食事係を命じられていたのです」

 霧彦は、杼媛の話に息を呑む。

「でもあたくしが取りに行くのを忘れたせいで、
 最後なのに食事抜きになりそうでした。
 ……ねえねは笑って許してくれたけど」

 杼媛は喋り続ける。まったくのデタラメを。

「そこへ長上が、心底呆れながら夕餉を運んで来たんです。
 流石に独房の中までは入って来ませんでしたけど。
 そして去り際に、ねえねが声を掛けたんです」

 カプ厨杼媛の妄想も、いよいよクライマックス。

「ーーあれからずっと。アンタにええ名前考えとったんよ、あやぎり、って」

 ✦

 霧彦は、掛布にくるまる。

「知らないし、
 全く興味も沸かない女の処刑話を聞かされるなんて、どんな睦言だ」

 横たわる杼媛は、霧彦にトドメを刺した。

「だから、だあい好き。
 霧彦のお顔は、天媛ねえねに似てるもの」

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