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昔の記憶
しおりを挟む「坊ちゃん、お箸の持ち方はこう。噛む際は音を立てないよう気をつけましょうね」
「む……」
発音の練習から1週間、その他にも色んな教育をされ頭がいっぱいいっぱいになってきた。
東雲はニコニコと笑ってはいるが、中々に厳しく扱いてきて怖い。
でも僕が上手に出来たときはとても嬉しそうに喜ぶもんだから頑張ってしまうんだ。
昼食が終わると東雲は準備があるからと頭を下げたあと消えてしまい、僕は1人で自室へ戻ることになった。
「……きれい」
赤いバラにソッと手を添える。
この前東雲にバラを頭に飾られたとき、一瞬懐かしい気持ちになった。
『きれいな色……いい匂いだ』
ズキッ…!!
「ぐッ……いた…!!」
『お前は僕だけの……』
「ッッ!!?」
頭の中で誰かの声と映像がフラッシュバックする。頭痛でついバラを握りしめていたみたいで、手のひらから血が流れていた。
「…あれは、ぼく?昔のぼく……」
昔の記憶が抜け落ちているから確証は無いが、多分自分だった。
相手はぼやけてよく見えなかったけど……
僕は不安と焦りを抱きながら、早く安心する場所に帰りたくて自室へと急いだ。
はやく、はやく、はやく…!!
使用人がいる庭や広いロビーや廊下は落ち着かない。
暗く静かな自分の部屋に、はやく……
バンッ!!!
勢いよく扉を開け、カーテンを全部閉めてまわる。暗くなったがそれでも落ち着かず、ベッドへ飛び乗り布団に包まるが心細さは残ったままだった。
「うう、う」
どうしようも無い寂しさが込み上げてきて涙があふれる。昔の自分に何があったか覚えていないのに、謎の恐怖と寂しさを感じてしまう。
1人は落ち着く、1人は好き、1人は…
『坊ちゃん!?』
!!!
「ひとりは……ひとりはいやだ」
いつの間にか目の前にいた東雲に縋るように抱きついた。
いくら抱きしめても、行かないでと言っても明日には消えてしまいそうで、不安は消えることは無い。
「ずっとお側にいますよ」
優しく耳元で囁かれくすぐったい。
東雲はクスッと笑い、泣き止まない僕をゆっくりベッドへ押し倒した。
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