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校舎見学①
しおりを挟む車で10分程で玉響高校へ着いた。
清の手を取り降りると、いくつもある小さな窓から多くの人が座ってる姿が見えた。
右側からは楽しそうに走り回る人達も。
「……っ!!」
こんなに大勢いる所に1人で通うことを想像して体が強ばる。
すると清がポンポンと肩を叩いてきた。振り返ると、いつもの悪戯な笑みじゃなく、こっちが恥ずかしくなるくらいの優しく笑っていた。
「行きましょう。大丈夫ですから」
「……っ」
目が合わせられなくて逸らしてしまう。
すると清はフッと笑い、背後から耳元に甘く囁いてきた。
『命にかえてもお守り致します』
「…っな!?」
くすぐったいのと恥ずかしいのとで清から距離をとる。でもそのおかげで緊張が解れたのか、気持ちが軽くなっていた。
「申し訳ございません。さぁ、階段ですよ。足元に気をつけて」
「……」
清はいつも余裕そう…
隣に立っていると自分がいかに子供っぽいかがよく分かる。
下駄箱を通り抜け校長室へ向かった。
教師には話を通しているらしく、なるべく静かにまわるよう言われる。
「それと今日の案内役の川内先生です」
校長先生の後ろから、30歳くらいの小太りな男性がお辞儀する。目が細くてずっと笑ってるみたいだ。
「君が日向君だね。それと東雲さんも、川内と申します。今日はよろしくお願いします~」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」
「………」
「……?」
屋敷の人間以外の……外の人
ジッ…と見つめていると、同じ目線まで腰を曲げてニコッと笑いかけてきた。
「か、わち……さん?」
「坊ちゃん、こちらの方は春から坊ちゃんの担任になられる方です。さんではなく、先生とお呼びください」
「はは、呼びやすいように良いよ~。皆、川ちゃんとかかわっちとか好きに呼んでますし~」
眉を下げ、頭を搔く川内先生。
彼のまとう柔らかい雰囲気が皆をそう呼ばせるんだろうなと思った。
僕はペコッと頭を下げて呼び直した。
「よろしく……川内せんせ」
「…!!!」
そう言うと、相当先生と呼ばれ慣れていないのか、パアッと顔が明るくなった。2人で握手を交わし、最初は1年生の授業を見学する事になった。
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