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校舎見学③ (東雲視点)
しおりを挟む授業の様子、保健室を覗いた次は図書室に行くことになった。玉響高校の図書室は広いことで有名で、読書好きな日向坊ちゃんにピッタリだなと思って選んだんだ。
喜んでくれるといいが……
廊下を移動中、すこし前を歩く坊ちゃんを見ると、優しい先生達ばかりだったからか安堵の表情が窺えた。私もホッとしていると、ふと坊ちゃんと目が合ってすぐにバッと逸らされてしまう。
15歳、難しいお年頃ですねぇ
笑顔を張りつけ、どうしたものかと考えていると川内先生が図書室のドアを開けて静かにねと人差し指を口に当てた。
「……ッ!!……わぁ…」
中に入るとそこは本の箱庭のような空間で、円を描くように本棚が設置されていた。長机もあれば個人用の机、ソファーまで完備されていた。坊ちゃんは迷惑にならないよう小声で喜んでいて、我慢できずに早速本をめくって読んでいた。
「日向君は本が好きなんですね。あんなにキラキラした目で読む子は珍しいですよ」
川内先生が隣に来て優しく微笑む。
「ええ、好き嫌いせず何でもお読みになりますよ。坊ちゃんの将来が楽しみです♪」
「ははっ」
「……?」
何か可笑しなことを言っただろうか?
疑問に思っていると川内先生は笑ったあとコホンと咳払いをした。
「いやぁすみません。何だか親みたいな事を仰るんだなぁと和んでしまって、あはは」
「親……私が。そう、ですね。親子以上に坊ちゃんの事を想っていますし大切に育てております」
自分が日向坊ちゃんの親だなんて思ったことはない。だけど坊ちゃんが私にそうあってほしいと望むなら親代わりも喜んで引き受けるつもりだ。
「東雲さんは本当に日向君を大切にされてるんですねぇ。僕も担任として日向君が困っていないか目を配るように努めます!」
「そうして頂けると私も安心です。よろしくお願い致します、川内先生」
話終わると、坊ちゃんが分厚い本を6冊持ってフラフラと歩いてきた。今にも倒れそうだったのを私が慌てて支え、5冊を代わりに持った。
「せんせ、この本借りたいです。どうしたら良いですか?」
本を顔の前に持って首を傾げる。小さい子が欲しいものをお願いするような仕草で、やはり記憶が無いのか精神年齢がやや幼いようだ。
「坊ちゃん、本日は見学で来ていますので貸出は残念ながらまだ出来ません」
「そう……」
分かりやすく落ち込むなぁ。
坊ちゃんの前に膝をつき、目を見上げる。坊ちゃんも視線に気づいて見つめ返してくれた。
「見学が終わりましたら帰りに本屋さんに寄るのはどうでしょう?」
「…っ行く!」
暗かった表情がパアッと花咲いて揺れた。
その瞬間、力一杯抱きしめたくなったが鬼の自制心で何とか耐えた。
「おや、もう機嫌は良くなったようですねぇ…坊ちゃん?」
にやっと悪戯に笑うと、またハッとなり不機嫌な顔に戻る坊ちゃん。その反応が面白くて堪らず吹き出すと、ますます不機嫌になってしまった。
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