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出会い③
しおりを挟むあの人だ!絶対そうだ!!
間違うはずがない。あんなに背が高くて存在感がある人あんまり居ないし。
久しぶりに見たその人は、真っ黒のスーツ姿で黒光りする高そうな車の前で誰かと話をしていた。
もう一度会いたくてずっと探してた。だって命を助けてもらったのにテンパっていてまだお礼を言えてないのだ。あっちはもう僕の事なんて忘れているかもしれないけど、一言だけでも伝えたい!!
そうじゃないと一生後悔してしまう。一生、探し続けてしまうから。
信号が変わるとすぐに走ってかけよった。勢い余ってつい後ろから当たりに行く感じになってしまったけど。そしてその人も案の定とても驚いた顔をして僕を見下ろしてた。
恥ずかしーーーーー
いきなり現れた僕を凝視する男。やっぱり覚えてはいなさそうだ。少しショック……
や、そんな事どうでもいい!!早く言わないと……!!
「あ、あの……」
「相原……時間が」
口を開くと、すぐ後ろに立ってたもう1人の男がコソッと伝えてきた。
すぐにでも行ってしまいそうな雰囲気に焦り、ついグイッと男の腕を掴んでしまう。
「あ~~、じゃあ……お前も来る?」
「えっ!?」
男は後部座席のドアを開けると、僕の腰をグイッと抱き寄せて一緒に乗り込んだ。と同時に頭はパニックになり、また倒れそうになる。今日は受験日で早く会場に行かないといけないのに、でもそれを口に出したらこの人とはもう……会えないかもしれない。でも合格してないと叔父さんからまた叩かれてしまう。
頭を抱えて悩んでいると、隣に座る男が僕の顎を持ち上げてきた。
「さっき何言いかけてたんだ?」
「えっと、ま待って、近い…」
「ああ悪い。それで君は俺に何の用?」
パッと手を離され心を落ち着かせる。あの時のお礼をやっと、本人に伝えれる。
「…2ヶ月前の夕方に、ナイフを持った男から助けてもらいました。あ、ありがとうございま……」
いい終わりそうな所でポタポタと涙が落ちた。あれ?何で涙が出ているんだ!?
「……怖い思いさせて悪かった。忘れろっていっても無理か」
忘れられるはずない、あんな事。ていうかあなたの事を忘れたくない。
この涙もきっと恐怖からではなく、お礼を言い終わったら用件が済んで別れがくると思ったからだと思う。
悲しい、この人の事をもっと知りたい。
多分、守ってもらった時からこの人は僕の中の特別でヒーローで1番かっこいい人になってる。たまたま助けてくれたのがこの人ってだけかもしれないけど、僕を助けてくれたのはこの人だけだったんだ。
「忘れたく、ない、です。忘れられたくも……ない」
グスグスと泣きながらもそう呟く。
すると不器用にワシワシと頭を撫でられ、指で涙を拭われる。
「忘れるわけねーだろ、ガキ」
「……え?」
驚いて顔を上げた瞬間、車が止まりすぐに降りるよう促された。着いた所はどこかの廃屋のような、でも入り乱れててよく分からない構造だった。部屋がたくさんあり地下まであるようだった。僕達3人は足早に1番奥の鉄扉の部屋へ入った。
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