奴隷姫

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シュト婆ちゃん

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ぐうぅぅぅ

「アン、やっぱりお腹空いた…」

お腹を擦りながらうずくまるアンにルナは困った顔をしながらアンに近づく。

「アン…気持ちは分かるがもう少し我慢しような?今日の夜ご飯分けてやるから」

「うぅ…」

アンが我慢しそうにもない様子にルナはどうしようもなく立ち尽くすとその様子をみていた一人の老婆が近寄ってきた。

「アンちゃん、これ食べるかい?」

「シュト婆ちゃん?!」

ルナは老婆の顔を除きこむと老婆の正体はルナのよく知るシュト婆ちゃんだった。

「シュト婆ちゃん?」

アンは誰か分からないと言うように聞き返すとシュト婆ちゃんはにっこりと優しい笑顔をルナとアンに向けると監視に見つからないようにポケットから今日の朝食べたパンの半分をアンに手渡す。

「パンだぁ!わーい!」

「シュト婆ちゃん、それどうしたの?そんなの監視に見つかったら…」

「大丈夫よ、ルナちゃん。今、監視は私たちの方には向いてないから今のうちにアンちゃんが食べれば大丈夫!それに、もし見つかっても私が罰を受けるから安心して?」

「でっ、でも…」

「ルナちゃん、そんな顔しないの。ルナちゃんの両親には私、返すにも返せないほどのたくさんの恩があるし、その娘であるルナちゃんを助けるには当たり前のことよ」

優しい笑顔でルナとアンを宥めるシュト婆ちゃんにルナはそれ以上何も言えなかった。

「シュト婆ちゃん!ありがとう!」

「いいのよ。それより、アンちゃんあんまりルナちゃんを困らせてはダメよ?ルナちゃんは凄くアンちゃんやみんなのこと大切に思ってるんだから」

「うん!アンもルナやみんなの事すごーく大切!」

アンのその言葉に笑顔で何度も頷くシュト婆ちゃんにルナはその顔に影を落とす。

「ルナ、なんかあったのか?」

「バル…」

作業が止まっていた私たちに監視から私たちを隠すようにバル、リオン、マリア、ベリアルは作業をしながら近づく。

「何でもないの…その、シュト婆ちゃんのおかげでアンの駄々がなくなっただけ」

「アン、またルナにお腹すいたとか言って困らせたんだろ?何回も言ったじゃねぇか、あんまルナを困らすなって…」

「まぁまぁ、落ち着けよバル。シュト婆ちゃんのおかげでアンが監視に目をつけられなかったんだから」

「リオンは甘いんだよ!そうやってアンを甘やかすからアンはまたルナを困らして…」

「バル、そんなにアンを責めるとルナに嫌われるぞ?」

「なっ…?!」

リオンの言葉に顔を赤くするバルにマリアが止めの一撃かのようにリオンの言葉に付け足す。

「ふふっ、そうよバル。そんなにアンを責めるとアン大好きのルナから嫌われて好きになんてなってもらえないわよ?」

「マリアっ!お前まで…くっ…」

バルの反応に面白そうに笑みを浮かべる二人に言い返す言葉もなく悔しそうに口ごもるバルにアンとシュト婆ちゃんに目を向けていたルナがバルの様子に不思議に思ったのか不意にバルに話かけた。

「バル?どうしたの?なんか顔赤いけど…」

「なっ、何でもねぇよ!」

「そう?」

必死に誤魔化すバルにきょとんとしながらもルナは再びシュト婆ちゃんに目を向けた。

「なぁ、ルナ。シュト婆ちゃんって誰なんだ?」

一歩下がってみんなの様子を見ていたベリアルはルナに疑問に思った事を口にする。

「シュト婆ちゃんは、この闇の世界の長なの…」

「長?」

「そう…シュト婆ちゃんは凄い人なんだ」

みんなしてその弱々しい背中のシュト婆ちゃんを見つめるとシュト婆ちゃんはいつもの優しい笑顔でみんなを見返す。

「アンは知らないけど私とバル、マリア、リオンはシュト婆ちゃんに恩がある。そして、私はシュト婆ちゃんがいなかったらここにはいなかった…」
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