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#12〜正義の味方は僕の上司でした〜

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『カンパーイ‼︎』

 受付前で僕はRUIさん、斎藤さん、蒼さんと合流し、近くの居酒屋へ向かった。

 道中女性3名は仲良く会話が弾んでいたが、僕は後ろをついて行っただけだった。僕は本当に参加しても良かったのだろうか……疑問。何故誘われたのだろう。

 で、居酒屋に到着し、席に着いた所で飲み物が運ばれて来た。僕はお酒が苦手なのでウーロン茶。女性3名は斎藤さんが『とりあ生3で』と、注文したので、それぞれ目の前にビールが並々と入ったジョッキが置かれた。

 余程常連なのか、4人でも広い座敷に通してもらえた(6名は軽く座れそう)し、『生3』しか言っていないのにジョッキは大ジョッキだった。まるでバケツだ。

 そんな事より。1番気になるのは、6名掛けテーブルの一列を僕が占領し、女性3名が横一列に座っている事だ。何だこの圧迫面接は。訊問を受けてる気分になる。それに僕は居酒屋が苦手だ。いや、綺麗な女性3名に囲まれて、何も無い方がおかしいのか。しかしまー早すぎるだろ。

「にーちゃん、まだ明るい時間から綺麗な女性に囲まれて羨ましいねぇ」

 席に着いて10分しないうちに、酔っ払いに絡まれた。スーツを着ていたから仕事帰りの様だ。何か嫌な事でもあったのか、相当酔っ払っている。まだ6時半だぞ、2つの意味で早すぎるだろ。

「俺の若い時はなぁ、こんな時間はまだ机に向かって、汗水流して仕事をしていたもんだが。ぬるくなったよな‼︎」

 これは面倒くさいパターンだ。だから居酒屋は苦手なんだ。直ぐに『若い時は~』とか話し出す奴がいるから。

 酔っ払いは僕の横に座り、酒臭い息を吹きかけて来る。殴りたくなったが、当然出来ない。

「おっさん、あっしら楽しく飲もうとしてるんですけど?」

 縮こまっている僕に救世主が現れた。斎藤さんだ。

「あぁん? 姉ちゃん、俺がいちゃ悪いっつーのか?」

 滅茶苦茶喧嘩ムード。RUIさんと蒼さんは知らんぷりして飲んでるし。僕はどうすれば良いのだ‼︎

 RUIさんが僕の視線に気付き『大丈夫ですよ』と、目配せをした。

「おっさんが居て良い理由が無いっつーの。昔はこの時間でまだバリバリ仕事していたのに、今は酒食らってへべれけですかぁ? それ、成果出てねーし。無駄な時間ご苦労さん、マジ受けるわらー」

「な……何を‼︎ 言わせておけばこの女‼︎」

 酔っ払いが、赤い顔を更に赤くして憤ってる。斎藤さんもこの辺にしておいた方が……僕にはオロオロする事しか出来ない。

「はぁ~? タコみたいに顔を赤くしてどったの? 飲み過ぎじゃね? 酒飲んで呑まれるなんて、マジ底辺の極みだわ。嫌な事は酒で忘れるより、まず反省から入ったら? それが若い時に出来れば、今頃あんたここにいねぇし。今からでも遅かねぇから、帰って反省してな」

「う……ぐぐぐ……この女、許さん‼︎」

 フォークを握り、襲い掛かりそうな酔っ払い。止めなくて良いのか? 流石に止めるべきだろ‼︎ 僕は勇気を出して立ち上がった。そして、酔っ払いの先にいる人を見て、座った。その人は、

「スミマセン。ココ、私ノ席デスガ。youハダレデスカ?」

 ガチムチで、タンクトッパーだった。うん、社長だった。

「ドウシテコンナ危ナイモノヲ見ニツケテイルノカナ」

 社長が酔っ払いの腕を掴み、フォークを取り上げる。酔っ払いの顔が赤から青へ、みるみる変わっていく。

「な、何だお前は⁉︎ ここここ、こいつらの上司か⁉︎」

「ソノ質問ヲ……私ニ問イカケル権利ガアナタノドコニ?」

 社長が来たら刃牙ネタが多くなって解りづらい‼︎ 刃牙リスペクトは存分に伝わるけど‼︎

「サァ、行キタマエ」

 社長が入り口を指差す。酔っ払いは慌てて逃げて行った。

「master。あの方のお勘定も私が持ちますので伝票を下さい」

 社長が普通に喋った。

「サンタさん‼︎ マジ助かったし‼︎ あざーっす‼︎」

 社長にもそんな感じなんだ。斎藤さん。それより、

「あ……あの……」

「あん? どした安達」

「ありがとうございました。その……」

「あぁ、気にしないで良いよ。あっしもああいう奴が1番嫌いだし。なしよりのなしだわ。さ、気取り直して飲も飲も‼︎」

 社長が加わり、再度乾杯をした僕達。僕はその時思った。この人が上司で良かった、本当に尊敬できる先輩だ。僕も後輩からそう思ってもらえる様になりたいな。

 と、柄にも無くそう思った。
 
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