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4回目
私は目を開き、その場に突っ立ったまま絶望していた。
私がいるのは王城の煌びやかな年越しパーティー。そして目の前にいるマルセルが気持ち悪い顔で私に婚約破棄を告げた。
でも、もうどうでもいい。
だって3回も死んだのだ。時が戻って生きてはいるけれど、何度も訪れた生々しい死の記憶にドッと疲労感がのしかかる。
もう疲れてしまった。
マルセルがドMで、シャロンとはそういうプレイをしていたから彼女がお気に入りなのだということも知ったが、その情報を使ったところで何になるのだろう。だって、私はこの会場を出ようとするだけで死ぬ。
マルセルは私に向かって婚約破棄を告げ、それからいかに私がダメなのかを気持ちよさそうに語っている。
マルセルを言い負かしても蹴り飛ばしても、ほんの少しスッキリするだけでなんの解決にもならない。
私は死にたくない。
生きて、怪我もせず無事に新年を迎えたい。望みはそれだけなのに、何度も死んだせいでひどく難易度が高いように感じてしまう。
何もかもが億劫で、私は黙ったままその場に立ち尽くす。
マルセルは飽きもせずに私の悪い点をつらつらと上げ、シャロンは意地悪そうに顔を歪めてクスクスと笑っている。しかし、いつまで経っても私が無反応だと気付いたのかもしれない。
「おい、アマリリス。聞いているのか!」
「聞いていません。もうどうだっていい」
私が何もしなければ、階段から落ちなくて済む。下手に言い負かそうとしたり、さっきのようにマルセルを蹴ったりしなければシャロンに刺されることもない。
マルセルはヒートアップしたように私の肩を掴み、嫌な言葉を捲し立てる。けれど、私の目はマルセルを通り越して大時計に向かっていた。
カチリ、カチリと秒針の立てる音が聞こえる。
そしてようやく23:59になり、秒針はぐるりと回り、24時を指し示した。
途端、大時計からカラクリが飛び出し、新年の祝いを告げる賑やかなメロディを奏で始めた。
ああ、やっと、新年。
私はたった10分の死に戻りからようやく解放されたのだろうか。
心からの笑みが浮かぶ。
婚約破棄されているのに笑っているせいだろうか。マルセルの気味悪そうな視線もなんのその。ホッと息を吐いた、その瞬間。
天井でキラキラと輝く大きなシャンデリアが、ゆらりと不思議な動きをしているのが見えた。
「……え?」
突然、ドンッと激しい轟音がし、私の体は落下してきたシャンデリア押し潰されていた。
巨大なシャンデリアの重さで私は動けない。いや、もうとっくにあちこち潰れていて、骨どころかあちこちぐちゃぐちゃで動かないのかも。
何もしなくても、私は死ぬのか。
つんざくような誰かの悲鳴。そして大時計の奏でるメロディはまだ鳴り続けている。でもこの音が鳴り止むまで私は生きていられないのだけはわかった。
もう何も見えない。
マルセルやシャロンがどうなったのかもわからない。
不思議と痛みはなかった。もう痛みを感じる部分も潰れてしまっているのかもしれない。
そしてこんな何の役にも立たない思考だけが最後まで残るらしい。
死んだらまた元の時間に戻るのだろうか。
嫌だな。そう思った私の右手がポッと温かくなった。
私の体のほとんどが巨大なシャンデリアに潰されていたが、右手だけ直撃を免れたらしい。誰かが死にゆく私の手に触れてくれたのだろうか。
いや、そんな人いるはずない。きっと、私から流れ出る血が温かいから、勘違いしているのだろう。
私は婚約者に愛されなかった。
何度も繰り返したこの10分で、私を助けようとした人なんて誰もいなかった。
私は誰にも愛されず、尊重されず、孤独なんだ。
でも、右手に触れる温かさに、ほんの少しだけ救われた気がした。
私がいるのは王城の煌びやかな年越しパーティー。そして目の前にいるマルセルが気持ち悪い顔で私に婚約破棄を告げた。
でも、もうどうでもいい。
だって3回も死んだのだ。時が戻って生きてはいるけれど、何度も訪れた生々しい死の記憶にドッと疲労感がのしかかる。
もう疲れてしまった。
マルセルがドMで、シャロンとはそういうプレイをしていたから彼女がお気に入りなのだということも知ったが、その情報を使ったところで何になるのだろう。だって、私はこの会場を出ようとするだけで死ぬ。
マルセルは私に向かって婚約破棄を告げ、それからいかに私がダメなのかを気持ちよさそうに語っている。
マルセルを言い負かしても蹴り飛ばしても、ほんの少しスッキリするだけでなんの解決にもならない。
私は死にたくない。
生きて、怪我もせず無事に新年を迎えたい。望みはそれだけなのに、何度も死んだせいでひどく難易度が高いように感じてしまう。
何もかもが億劫で、私は黙ったままその場に立ち尽くす。
マルセルは飽きもせずに私の悪い点をつらつらと上げ、シャロンは意地悪そうに顔を歪めてクスクスと笑っている。しかし、いつまで経っても私が無反応だと気付いたのかもしれない。
「おい、アマリリス。聞いているのか!」
「聞いていません。もうどうだっていい」
私が何もしなければ、階段から落ちなくて済む。下手に言い負かそうとしたり、さっきのようにマルセルを蹴ったりしなければシャロンに刺されることもない。
マルセルはヒートアップしたように私の肩を掴み、嫌な言葉を捲し立てる。けれど、私の目はマルセルを通り越して大時計に向かっていた。
カチリ、カチリと秒針の立てる音が聞こえる。
そしてようやく23:59になり、秒針はぐるりと回り、24時を指し示した。
途端、大時計からカラクリが飛び出し、新年の祝いを告げる賑やかなメロディを奏で始めた。
ああ、やっと、新年。
私はたった10分の死に戻りからようやく解放されたのだろうか。
心からの笑みが浮かぶ。
婚約破棄されているのに笑っているせいだろうか。マルセルの気味悪そうな視線もなんのその。ホッと息を吐いた、その瞬間。
天井でキラキラと輝く大きなシャンデリアが、ゆらりと不思議な動きをしているのが見えた。
「……え?」
突然、ドンッと激しい轟音がし、私の体は落下してきたシャンデリア押し潰されていた。
巨大なシャンデリアの重さで私は動けない。いや、もうとっくにあちこち潰れていて、骨どころかあちこちぐちゃぐちゃで動かないのかも。
何もしなくても、私は死ぬのか。
つんざくような誰かの悲鳴。そして大時計の奏でるメロディはまだ鳴り続けている。でもこの音が鳴り止むまで私は生きていられないのだけはわかった。
もう何も見えない。
マルセルやシャロンがどうなったのかもわからない。
不思議と痛みはなかった。もう痛みを感じる部分も潰れてしまっているのかもしれない。
そしてこんな何の役にも立たない思考だけが最後まで残るらしい。
死んだらまた元の時間に戻るのだろうか。
嫌だな。そう思った私の右手がポッと温かくなった。
私の体のほとんどが巨大なシャンデリアに潰されていたが、右手だけ直撃を免れたらしい。誰かが死にゆく私の手に触れてくれたのだろうか。
いや、そんな人いるはずない。きっと、私から流れ出る血が温かいから、勘違いしているのだろう。
私は婚約者に愛されなかった。
何度も繰り返したこの10分で、私を助けようとした人なんて誰もいなかった。
私は誰にも愛されず、尊重されず、孤独なんだ。
でも、右手に触れる温かさに、ほんの少しだけ救われた気がした。
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