迷い道の果て

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幻の森

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(ここは…?)
 見たことがない景色のはずなのに、何故か懐かしく、切ない想いが込み上げてくる。
 景色は、ローマ時代の建物が何か大きな力で破壊された後、長い時間をかけて森になった感じなのに、その建物だけが当時の生活そのままに時を止め時代からはみ出していた。
まるで主を待っているかのように…。
「よし!」
 意を決して足を踏み出したその時。

ピ、ピ、ピ、ピピピピピピピピ…‼️

 電子音が鳴り響き、私(早姫)の意識は現実へと引き戻された。
「夢…?」
 呟きながら、見馴れた天井を見つめ、ぼやけた視界で泣いていた事実を知る。
「あれ? どうして涙が…。」
 いくら考えても、夢の内容は思い出せなかった。
 辺りを見回して時計に目が止まる。
針は8時を指そうとしていた。
一瞬で思考が現実に引き戻される。
「遅刻⁉️」
 バタバタと音をたて学校へ向かう準備を始めた。


 食パンをかじりながら通学路を走る。
「おはよう!」
 振り替えると、同じようにパンを食べながら走ってくる幼馴染みの秋斗だった。
 二人でパンを食べながら学校に急ぎ、到着する頃にはパンはどこにも見当たらなかったけど、校門に立っているもう一人の幼馴染みの櫂が、呆れ顔で
「おはよう。今日も通学途中で朝食?」
全てお見通しのようだった。
「だって、目覚まし止まってて…」
「そうそう。何でだろうな?」
「まったく、もう少し時間に余裕をもって動きなよ。困るのは自分なんだから」
呆れながらも心配してくれる幼馴染みの存在がありがたくも心強かった。
『はーい』
二人、声を揃えて返事をするとニッコリ微笑んでくれる。
「ほら、遅刻するよ。急ごう!」
櫂の掛け声で、一斉に走り出した。


 教室で授業を受けながら、今朝の夢を思い出す。
(何の夢だったんだろう?どうして泣いていたんだろう?)
 考えても答えは見つからないけれど、何故か心が締め付けられた。
意識が心と同調しはじめた時、ぼんやりと眺めていた校庭がグニャリと歪み、夢の世界へ誘うように、風景はローマ時代の森を映し出していた。
「えっ‼️」
思わずもれ出た声に驚きつつも、視線を教室へ向けると、代わり映えのない授業が続いていた。
目を擦りながら視線を戻せば、幻のようにあのローマの森は消えて無くなり、もとの校庭に戻っていた。
(今の何⁉️何処かで見たような…)
心は既に授業どころではなく、今見た幻と夢でいっぱいになっていた。


 帰り道、グラウンドを抜け別棟の武道場を目指す。
 剣道部の秋斗と櫂が稽古をしている。
武道場には人だかりが出来上がっていたけれど、
「早妃❗早く入れよ。」
二人が笑顔で招き入れてくれた。
周りの視線は痛いほどだったけれど、私も慣れたもので、
「ごめんね。」
一言告げて道場に飛び込んだ瞬間、辺りが眩しく光、呪いまじないのような言葉が球のように私達を包み込んでいた。
「な❗なんなんだよ、これ⁉️」
「落ち着け、秋斗❗
 早妃、大丈夫か⁉️」
「う、うん…。」
 突然の事に、私達は戸惑い、困惑したまま、気を失った。


 気を失ってから、どれくらいの時間が過ぎただろう?
私達が目を覚ましたとき、そこは見慣れた学校でも、道場でもなく、校庭で見た幻の森だった。
(…? ここは…。)
目が覚めて辺りを見回す。
記憶の中で、夢と目にしている光景が合致する。
思い出せなかった内容がなだれ込み、夢の続きを見ているような感覚がした。
目にしている光景の先に、あのローマ時代の様相の建物があるから、なおのこと感覚が麻痺したように、現実か夢か境目がわからなくなっていた。
「よし❗」
気合いを入れて一歩を踏み出そうとしたとき、前方に広がる森の中から、金属音と何かが激しくぶつかり合う音が聞こえてきた。
気になってそちらへ歩いていくと、激しい戦闘がくりひろげられていた。
持っている武器は、確かに西洋の剣のようなのに、闘いのスタイルは見慣れた光景と重なり、私は死闘を繰り広げている二人に向かって叫んだ。
「秋斗‼️ 櫂‼️ 何やってるの❗やめて‼️」
その声に反応して、二人の動きが止まり私を見る。
「早妃‼️危ないから下がってろ❗」
「秋斗‼️」
「早妃、こっちに来るんだ。秋斗がおかしくなってる。」
「えっ⁉️ 櫂、何、言ってるの⁉️」
(秋斗がおかしい?)
心の中で呟きながら、二人をよく見る。
確かに、二人とも鎧のようなものを身に付け互いに剣を向け闘っている。
でも、相手に剣を向け笑顔で私を見ているのは、櫂。
私の直感は、おかしくなってるのは【櫂】だと告げている。
微笑みながらこっちにおいで。って何かの怪談話みたいだよ…。
『早妃‼️』
二人同時に呼び掛けられ、瞬発的に必死な形相の秋斗へと駆け寄る。
秋斗は私を庇うように前に出ると、持っていた剣を構え直し、櫂に訴えかけた。
「櫂❗どうしたんだよ⁉️」
「どうして俺たちが闘わなきゃならないんだよ⁉️」
櫂は、秋斗の声が聞こえていないかのように、微笑みながら私に問いかける。
「早妃、そこは危ない。さぁ、こっちにおいで。」
その様子が、尚更恐怖を掻き立て、私は声を出すことも出来ずに後ずさる。
追い討ちをかけるように微笑みかけられる。
「早妃。さぁ、早くこっちに来るんだ。」
異様な光景に不快感と恐怖が混在する。
櫂から距離をとるように、秋斗からも距離をとる。
   言い様のない恐怖で足がすくみ、足下から崩れそうになったその時、

「ここは神聖な森、女神のお膝元で争い事をするとは何事だ‼️」
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