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第五章 夢を追うわたしたちと光の天使
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「君は私のことを知っているのですか?」
新井さんは悠真くんと目線を合わせると、不可解そうな眼差しを向ける。
「知っているも何も、ずっと一緒だったからな」
よく事情がのみこめない新井さんに、悠真くんはそう切り出した。
「こんな姿だけど、オレだよ、桜ノ宮悠真!」
「……悠真様?」
「ああ。信じられないかもしれないけど、ほんとにオレは桜ノ宮悠真なんだ」
悠真くんはありったけの意志を込めて宣言する。
だけど……。
「あなたが悠真様? なんの冗談でしょうか?」
「…………っ」
まるで拒むような言葉に、悠真くんは絶句する。
ぴんと張り詰めた空気。
わたしとシューちゃんとバアルちゃんがハラハラしていると、新井さんはやがて、ふっと笑った。
「……ですが、君は確かに悠真様の幼い頃に似ている気がします」
「……新井」
新井さんは穏やかな眼差しを悠真くんに向ける。
悠真くんを見つめる目はどこまでも優しい。
悠真くんと新井さんの絆はきっと、深いものなんだ。
そう思ったら、わたしは痛まれなくなって想いを口にした。
「新井さん。その男の子は、紛れもなく本物の桜ノ宮悠真くんです! 桜ノ宮悠真くんなんです!」
「君は?」
「わたしは悠真くんと同じ学校のクラスメイトの西舞花乃といいます」
戸惑う新井さんに、わたしはぺこりと頭を下げる。
そして、勇気をふりしぼって言った。
「これから悠真くんの身に起きたことを話します。新井さんはきっと、信じてくれるって思っています」
あまりに唐突で意味が分からなかったのだと思う。
その言葉に混乱しつつ、新井さんは口を開いた。
「悠真様の身に起きたこと? どういうことですか?」
「悠真くんがこの姿になってしまったのは、わたしのせいなんです。わたしがパンドラの箱を開けてしまったから……」
わたしはそう前置きして、事の次第を語る。
パンドラの箱にまつわること。
ぎまんさんの力で、悠真くんがわたしの弟になったこと。
わたしは今まで起きたことを全て、新井さんに話した。
「そんなことが……」
新井さんは終始、信じられないといった顔をしていた。
予想だにしなかった事実を耳にしたようだった。
「信じられない話かもしれないけど、全て本当のことなんです。それに……」
わたしはシューちゃんを見て、全ての感情をその一言に込める。
「シューちゃん、お願い!」
「きゅい!」
シューちゃんは任せてと空に舞い上がった。
「シューちゃん、ホリーレイン!!」
「きゅいーー!!」
空にまばゆい光が湧き上がった。
わたしの声に反応して、シューちゃんから溢れ出した白い光が地上に降り注ぐ。
それは暗闇の中でそっと照らしてくれる優しい月明かりのようだった。
新井さんは悠真くんと目線を合わせると、不可解そうな眼差しを向ける。
「知っているも何も、ずっと一緒だったからな」
よく事情がのみこめない新井さんに、悠真くんはそう切り出した。
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「……悠真様?」
「ああ。信じられないかもしれないけど、ほんとにオレは桜ノ宮悠真なんだ」
悠真くんはありったけの意志を込めて宣言する。
だけど……。
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「…………っ」
まるで拒むような言葉に、悠真くんは絶句する。
ぴんと張り詰めた空気。
わたしとシューちゃんとバアルちゃんがハラハラしていると、新井さんはやがて、ふっと笑った。
「……ですが、君は確かに悠真様の幼い頃に似ている気がします」
「……新井」
新井さんは穏やかな眼差しを悠真くんに向ける。
悠真くんを見つめる目はどこまでも優しい。
悠真くんと新井さんの絆はきっと、深いものなんだ。
そう思ったら、わたしは痛まれなくなって想いを口にした。
「新井さん。その男の子は、紛れもなく本物の桜ノ宮悠真くんです! 桜ノ宮悠真くんなんです!」
「君は?」
「わたしは悠真くんと同じ学校のクラスメイトの西舞花乃といいます」
戸惑う新井さんに、わたしはぺこりと頭を下げる。
そして、勇気をふりしぼって言った。
「これから悠真くんの身に起きたことを話します。新井さんはきっと、信じてくれるって思っています」
あまりに唐突で意味が分からなかったのだと思う。
その言葉に混乱しつつ、新井さんは口を開いた。
「悠真様の身に起きたこと? どういうことですか?」
「悠真くんがこの姿になってしまったのは、わたしのせいなんです。わたしがパンドラの箱を開けてしまったから……」
わたしはそう前置きして、事の次第を語る。
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「そんなことが……」
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「シューちゃん、お願い!」
「きゅい!」
シューちゃんは任せてと空に舞い上がった。
「シューちゃん、ホリーレイン!!」
「きゅいーー!!」
空にまばゆい光が湧き上がった。
わたしの声に反応して、シューちゃんから溢れ出した白い光が地上に降り注ぐ。
それは暗闇の中でそっと照らしてくれる優しい月明かりのようだった。
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