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256.婚姻
叔父様を除いた全員で穏やかに過ごしているとシェリ様が何かを取り出してテーブルに置いた。
「はい。サインはしておいたわよ。」
「ありがとうございます。」
「私もしたわよ。うふふ。」
「…筆圧が凄いな。」
「興奮しちゃったの。今もしてるけどね。うふふふふ。」
アオちゃんを興奮させた紙をルアが見せてくれた。婚姻証明書と記されている。貴族は必ず見届け人として一人以上のサインが必要で、人数の制限はない。既に父様と母様のサインはある。シェリ様と叔父様とアオちゃんのサインも書かれている。
「後はマリアがサインすれば完成だよ。」
いつの間に。昨日のうちか…仕事が早いな。
「見届けるわマリア。」
シェリ様にギラギラ輝く羽ペンを渡されて、全員が見守る中でサインを書くと全員嬉しそうに笑った。
「うふふ。これを提出すれば二人は夫婦ね。いつ出すの?」
「早い内に。」
「あら、だったらこれから出しに行けばいいじゃないの。その後でみんなでお昼ご飯を食べに行きましょうよ。」
アオちゃんの提案でルアは私の顔をジッと見てきた。私の言葉を待っているのだろう。
「行く?」
「いいの?」
「勿論いいよ。」
ルアは幸せそうに笑って書類を持って立ち上がり、私に手を差し伸べた。手を取り全員に行って来ます。と言い、嬉しそうな両親とシェリ様とアオちゃんに行ってらっしゃいと見送られて馬車に乗る。
私の手を取ったまま馬車に揺られ、国の機関に提出すると担当がザッと確認し、大きな判子を押して手続きは終了した。ルアが旦那様になった。
ジュエルルージュに戻る馬車の中でも、幸せそうなルアとキスをしたりイチャイチャ過ごす。馬車の外まで幸せオーラが漏れているのではと思えるほどに、幸せに溢れている。
「夫婦になったね。」
「こんな気持ちで結婚できると思わなかった。幸せだよ。」
「ルアが優しすぎたせいね。愛してるよルア。」
「俺も愛してるよ。昨日の今日なのに戸惑ってはないんだな。」
「留学前から誓ってたから。こんなに早まると思わなかったけど、嬉しいよ。」
「勢いではねーけどマリアを思いすぎて、我慢できなかった。」
「ふふ。じゃあ結婚式も早めにしようね。」
「あぁ。フィンが戻り次第できるように進めるよ。そのまま新婚旅行に行こう。」
「行きたい!ルアは行きたい場所はあるの?」
「マリアは?」
「うーん…よく知らないからな。ルアと一緒ならどこでも行きたいな。」
「…シェパードに行こう。」
「シェパードか。隣の隣の隣の隣の隣の国だっけ?遠そうだね。何日で着くの?」
「隣の隣の国。二日で着く。」
「そうなんだ。うん、行く。」
シェパードか。ルアが行きたい国なら綺麗な場所なんだろうな。結婚をしたからといって、指輪の交換はない。祝儀にお金を払う風習はないし、結婚式は通常大勢は呼ばず、改めてパーティーをするか、何もしないかが多い。この辺は自由だ。
ジュエルルージュに戻ると、本当かどうかは分からないが叔父様は仕事に出掛けたらしく、両親とシェリ様とアオちゃんに祝福されて、ルアと幸せオーラを出しながらお礼を言った。
そのまま全員でセント・ブルドッグ通りのレストランを貸し切っての昼食。豪華な懐石料理だ。
「美味しいわぁ。イラ様とルア様の顔を見ながら食べる昼食最高だわぁ。」
「…アオ?食事中は食事を見ないとダメよ…うふふ。」
「はい。すいません。フローラ様の旦那様を取って食ったりしません。」
「取って食ったりできるわけはないけれどね…うふふ。」
「美味しいわね。これがマリアが留学していた先の料理なのね。留学先はどうだったの?」
「天気が良くて暖かい国でしたよ。」
「違うわよ!どんな服があったのかってことじゃない。」
「プードルはラフな服の方が多かったですね。ブルドッグは、この間アオちゃんが着て帰ったような服とか、リンやポチが着てるような服ですね。」
「そうよ!あの服良かったわ。でも少しデザインがシンプルだから、裾と襟にフリルを付けたらどうかしら。」
「フリル…。」
「マリアが着て来てくれた服も良かったけれど…どう思うフローラ?」
「マリーには色が強過ぎじゃないかしら。銀色の髪が霞んでしまいますわ。全身強い色じゃなくて、ケープだけとかどう?ね、イラ?」
「いいんじゃないかい?」
「マリーは細いからフワフワなのはいいと思うわ。ね、イラ?」
「いいんじゃないかい?」
「でもあのピンクと赤はどうかしら…もっとこう…薄い青とか銀色が目立つ色がいいわ。ね、イラ?」
「いいんじゃないかい?」
「今日の藤色も綺麗ね。藤色と薄いピンク…どっちが似合うかしらね。どう思う、イラ?」
「いいんじゃないかい?」
父様!!母様の顔が怖い!
「貴方…私の話を聞いていたの?」
「あ…ごめんよ。隣の女神の美しさに見惚れてしまっていたよ。」
「まぁ!うふふ。仕方ないわね。」
「ほっ…。」
「そうね…確かに銀色の髪が霞んでしまうのはよくないわね。色の濃いのはやめましょう。やっぱりピンクかしらね。」
Tシャツと短パンとパーカーがいい。
服の話に大盛り上がりになったダブル母様。その隙にルアと父様をガン見するアオちゃん。
ルアは父様と話し込んでいる。私は海老が美味しい。
食事が終わり解散の流れになると、父様は一人で違う馬車の前に立った。
「じゃあ父様はこれから白の騎士団のフィンの元へ行ってくるよ。そのまま連れ帰ることもできるけど、三日後という話になったからね。マリーは結婚式までルア君の別宅で過ごすことになるから、次は結婚式だね。」
「そうなの。分かりました。お願いします父様。」
「……グスッ。」
泣いた。父様はそのまま馬車に乗って去っていった。
ルアはシェリ様と何かを話していて、私の元へ母様が小さい声で話す。
「レオンとカイルのことは母様に任せてね。」
「二人はもう知ってるの?」
「知ってるわ。ルアさんが二人に話していたから。二人共、暴れたりしてないから安心して。」
「ルアが…。」
「頼もしい旦那様ね。うふふ。」
「はい。」
母様は優しく頭を撫でてくれる。
昨日は色々あったんだな…ルアが全部やってくれたのか。
「俺はこれからアルニムの家に行ってくるから、その間マリアはジュエルルージュで留守番してて。」
「うん。私は何かしなくていいの?」
「急いでドレスを作ってくれるみたいだから試着したり忙しいだろ。後で迎えに行くから。」
「分かった。行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
「羨ましいわ!!」
ジュエルルージュ家へ着くなり、本当に忙しくなった。シェリ様と母様が張り切り、お抱えの服屋が次々と訪れては、着せられたり付けられたり。
今はルアの髪と同じ色のドレスを試着している。ウエディングドレスは白ではない。相手の髪やら目やらの色を何でもいいから身に付けるのが一般的だ。それ以外は自由。
「深紅色のドレスはやっぱりキツイわねぇ…ルアさんの紫も濃い色だし…うーん。どう思う?フローラ。」
いいんじゃないかい?
「そうねぇ…いっそ二人共で揃いのコサージュで色を合わせたらどうかしら。ルアさんも金や銀の衣装はどうかと思うのよね。」
「いいじゃない!深紅色だから薔薇のコサージュにしましょう。深い色の薔薇と、ルアさんは銀に染めた薔薇を胸に挿すのがいいわね。」
いいんじゃないかい?
「あら、生花を使うの?それは花弁が散ったら縁起が良くないわ。ルアさんの薔薇を染めるならマリーの薔薇も紫に染めてもいいわよね…どう思う、お母様?」
いいんじゃないかい?
「それもそうね。だったら今から作らせれば一日でできるわね。ドレスはマリーが着て来た色がいいわ。薄紫でしたっけ?」
「藤色ですわお母様。そうね…足元をフワリとさせて、胸元はいっそ大胆に開けて…問題は…」
「髪よね!」
察しの通り、ジュエルルージュ家は銀髪が好きらしい。私はマネキン。マネキンに口無しである。
夕方まで休まず続いた衣装の打ち合わせは終了し、ジュエルルージュお抱えの服屋も急いでドレスを作らなければならないため、半分は波が引くように帰って行った。
丁度入れ替わりでルアが来たが、直ぐに母様とシェリ様に捕縛されて、もう半分の服屋も交えた打ち合わせ。
やっと解放された私はアオちゃんと共にまったり。アオちゃんは帰宅してから着物を着ている。私があげた着物ではないが、もっと濃い青だ。
「アオちゃんは髪を伸ばさないの?」
「青の騎士団は長髪が禁止だったのよ。だから今から伸ばしてるの。ルイード様はどんな髪型が好きなのかしら。」
「ルイの好みは知らないな。レディーの話をしてるのも聞いたことないし。」
「あら、そうなの?今度がっつり聞いてみましょ。高等部で同じクラスになれるだろうし。」
「高等部は四クラスあるのにもう分かるの?」
「あら、医療クラスと後継者クラスと一般クラスと淑女クラスでしょ?私は後継者クラスだから、ルア様がシーク家を出てるならルイード様も長男なわけだし、後継者クラスに行くでしょ。」
「そうなんだ。知らなかった。じゃあなれるね。席は早い者勝ちは変わらないのかな。」
「いち早くレオン様とルイード様を確保するわ!」
「勝ちそうだね。レオンをよろしくねアオちゃん。」
「任せなさい!うふふふ。」
「適度にね。私のだから。」
「まぁ!羨ましいわ!!」
アオちゃんは大体いつも声が大きいので慣れなければ。
夜までかかって疲れ顔のルアが解放されると、一緒にルアの別宅へ戻った。
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